10月22日(木)
【17:45】
♡
1度、時計を見て息をついた。
よかった。間に合いそう
連絡がきたのは昨日の夜。
“明日、一花と話してくる。
その後、あっちに帰るから。
会えればうれしいけど、
忙しいなら無理しなくていいからな
18時半には駅を出るよ”
いつもどうりなら
時間ギリギリ
駅に行けるかどうかだったけど
ちゃんと話したかったから
イェウォンに事情を説明すると
レジ締めまでするからと
早めに送り出してくれた。
“間に合ったよ。ありがとう”
簡単にカトクを入れる。
ほんと、イェウォンがいてくれて
よかった。仕事が決まらないのは
心配だけど・・。
レジ・・
今日は合うかな
お金が合わなくなるのは
少し前からだった。
イェウォンがハルモニがレジから
お金を取っているとこを見たと・・
私は見てないけど、実際
私の配達がある日に
お金は合わないし、
それに、イェウォンにも
見つけても止めないで
とは伝えていた。
ハルモニの世界では、きっと、
理由があってやってる事だから。
でも、
・・最近、額が大きいんだよなぁ
ハルモニが1人で買い物に行く事はない。
かと言って、
どこかに隠してる様子も・・
とか、思ってるうちに
あ、
電光掲示版には
ソウル駅の文字が浮かんだ。
「ソヒョナ」
あ、いた
「オッパ」
少し先のベンチから
手を振っていたオッパに走り寄る。
「そんなに急がなくても
よかったのに」
「で、でも、ちゃんと
話したかったから」
実際、地下道はダッシュだった。
「ソヒョナ」
私を見る目は
「イチカさんと・・話せた?」
「あぁ、話せたよ」
いつものオッパで
「やっと、俺も前に進める」
それって・・
ふわりと乗せられた手は
軽く髪を滑った。
「諦めがついた。俺が入る場所なんて
もう、どこにもなかったよ」
・・・・。
オッパ、私は、
「ソヒョナ、ごめんな、
ずっときつかったろ」
・・・違うよ
「・・ごめん、は私の方だよ」
“約束”やぶったのは、私なのに
“イチカさんを見つけたら、
すぐオッパに教える”
唇が震える。
「知ってたなら・・教えろって、
言って、お、怒ってもいい」
「怒る訳ないだろ、大切な妹だぞ」
頬を伝うモノを手の甲で拭う。
「でも・・」
「ソヒョナ、ほら、顔あげろ」
いつのまにか、
足元を見ていた視線をあげると
私の頬を親指の腹で
もう1度、優しく拭ってくれた。
「会えたのは、お前が、あの
庭園を教えてくれたからだ。
会えたから、ちゃんと話せた
・・お前は、また俺を助けて
くれたんだ。ん~・・
しょーがないな」
優しいオッパは
涙が止まらなくなった私を
その腕の中にいれて背中を叩いた。
「これ、写真撮られたら、
言われるぞ」
写真?
「な・、なにが?」
鼻をすすりながら聞き返す
「“Shin 熱愛発覚。お相手は
年下有名フラワーアーティスト”」
まだ涙は止まらなかったのに
「なに・・それ」
ベタな見出しに笑ってしまった。
「彼に誤解されたらいけないから
ちゃんと、“妹”って訂正するよ」
そう言って身体を離した
オッパの笑顔に
わざとらしさは見えない。
「そうしてください」
もう1度、鼻をすすって
息を吐いた。
「ソヒョナ」
「ん?」
「・・お前が見つけたみたいに、
俺は、また誰かを愛せる時が
くると思うか」
初めて、オッパの視線が落ちた。
・・・そんなの
「愚問だよ。絶対、くるよ。
オッパは、絶対、幸せになる」
言い切った私に
少し驚いたような顔の後
「愚問・・か、そうか。
まぁ、そうだよな。
なんてたって、俺は
世界のShinだからな」
大げさに返ってきたけど
「・・もし、オッパが、また
違う誰かを愛せる時がきたら」
イチカさんとの別れが、
今のオッパの世界を創った。
時計が動き始めたオッパの目には
この世界はどんな風に映るんだろう。
「・・きっと、違う世界が
写るようになるんだろうね」
私の言葉に
「・・・新しい世界か。
そう考えると、楽しみだな」
さっきとは違う。
ちゃんと腑に落ちた声だった。
「オッパ」
「ん?」
泣いたり、笑ったり、
抱き合ったり
周りからは、
どんな2人に見えてるのか
一瞬、考えてしまったけど
「また、同じ事言ってるかも
しれないけどさ、私も頑張るから。
実績積んで、またオッパに
呼んでもらえるように
正真正銘、有名な
フラワーアーティストになる」
「あぁ、また仕事しよう」
最後は“約束”の握手をして別れた。
☆☆☆☆☆☆☆
