5月24日(日)【22:46】

 

 

 

「はーい、はいはいはいはいはい」

 

鳴ったインターホンに

上機嫌に返事をしながら

玄関に向かった。

 

 

開けた先には

 

「こんばんは。ギプソフィラです」

 

そう言って、




手に持っていたバスケットを

胸の高さまで持ち上げる。

 

赤を基調にまとめられたアレンジ。

その奥には

可愛い“おはなやさん”が立っていた。

 

 

 

「この時間に花持ってくる方が

目立つんじゃない?」

 

「そう?大丈夫でしょ。あがって。

わぁ、これ、かっこいいね」

 

彼女の手からをバスケットを

受け取って先に向きを変えた。

 

「気に入ってくれた?」

 

「もちろん」

 

背中から聞こえる声に答えながら

足を進める。

 

「ごめんね、時間、取ってもらって」

 

「それ“彼氏”に言うセリフ?」

 

無事にテーブルの上に

花を着地させて

 

「だって、ホソクさんは、わっ」

 

すぐ後ろにいるのはわかってたから

振り向きざまに言葉途中の

彼女を抱きしめた。

 

早く、こうしたかった。

 

「・・びっくりした」

 

そう言いながらも、

すぐに力が抜けた彼女の身体は

心地よく腕の中におさまる。

 

「玄関までは、“おはなやさん”

だったから我慢した」

 

「我慢してたんだ」


俺の言葉に、

楽しそうに笑うその声に

 

あーーー・・癒される。

 

「んーーーー」

 

彼女の手も、

俺の首に回ったから

少しの隙間もなくなった。

 

・・・・一応、確認しとこ。

 

「今日、泊るよね」

 

「・・この時間は、

さすがに泊まりたいかな」

 

・・・。



「そこは、俺と

離れたくないからって言ってよ」

 

「ホソクさんと離れたくないから」

 

「・・言わされた感がハンパない」

 

「なんでよ」

 

ぴったりくっついた身体と

耳元で跳ねる楽しそうな音。


「今日は、もう緊張してないの?」

 

それだけでも

すごく幸せだった。


「ん?あぁ、うん。してない。

楽しみだったからかな。

もっと、会えないだろうって

思ってたから」

 

「そっか、うん、俺も会えてうれしい」

 

ソヒョンのお店は月・火が休み。

でも雇ってるスタッフは

1人しかいないから、

水~日までお店が開く日は

夜遅くまで仕事してるし

そんな中でも、

水・金は仕入れにも行くから

その前日は、すぐ寝ちゃうし


そんな彼女のリズムに

俺が合わせられるかって

 

そんなはずもなくて

 

最近は、カトクも

まとまった電話すらできてなかった。

 

 

 

 

 

「そういえば、話って?」

 

そう、今日会う事になったのは

3日前に入ったカトクからだった。

 

“相談したい事がある。ホソクさんに

合わせるから時間とってほしい”

 

ソヒョンにしては珍しい文章に

変な胸騒ぎがしたから、

時間がない中でも、

悪い話じゃない事だけは

すぐに確認した。

 

その時、

“相談できるのホソクさんしか

いなくて”

 

とか言われたら

 

張り切るしかないでしょ。


時間が合わない事を

無理やり“しょうがない”と

受け入れようと思ってたから

余計に嬉しくて

 

 

頑張った結果、

 

最高の形で

時間を確保できた。

 

今日はお泊り・・

 

抱きしめてるから

顔は見えないけど

一応、緩む口元を

どうにか、結んで耐えてみた。

 

それにしても


「・・ソヒョナ?」

 

テンポよく返ってこない。

 

「あー、うん・・それが」

 

言いよどむような答え方。

 

一旦、落ち着いて

聞いた方がいいか

 

「ソヒョナ、なんか飲む?」

 

離した身体を

少しかがめて

彼女の視界に入る。

 

「んー・・」


全部、可愛い。

 

「冷たいの?あったかいの?」

 

「冷たいのがいい」

 

OK

 

彼女の手を引いてキッチンに向かった。

 

 

 

「じゃあん」

 

冷蔵庫の中には

どんなリクエストにも応えられるように

ホテル並みに取り揃えていた。

 

「わぁぁぁぁ、すごい」

 

予想どおりの声に

何度か頷いてしまった。

 

「ソヒョナの為に準備しましたよ。

どれがいい?」

 

「んー・・、あ、焼酎」

 

すぐ、そっちに

 

「これはダメ」

 

用意しといてなんだけど

 

「なんで?」

 

「ちゃんと話聞きたいから」

 

「ちゃんと話せるよ」

 

「ダメ。聞けなくなる」

 

「話せる」

「お酒入ったソヒョナを前に

俺が我慢できる自信がないの」

 

冷気に当てられてるはずの

彼女の頬がじんわり

赤くなったのがわかって

思わず笑ってしまった。

 

「また、からかって」

 

「ほんとだよ。とりあえず、

話終わったら、飲んでいいから」

 

「・・わかった。じゃ、コレにする」

 

目の前のサイダーの缶に

手を伸ばしたから

 

「じゃ、俺もそれにする。

グラスいる?」

 

「ううん、いらない」

 

2つ取って、ソファに向かった。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

※画像、お借りしました