【17:15】

 

JIMIN >

 

「お、ジミナ~」

 

・・・・。

 

 

「どうしたの?」

 

 

昼間、事務所で作業をしていた時

カトクが入った。

 

暇ならでいいって書いてたけど

少し早めに切り上げて

訪ねたのはホビヒョンの家だった。

 

 

俺を迎えてくれたホビヒョンは

真っ赤になって、目が・・

 

「飲んでたの?」

 

「ん~・・あぁ~・・うん」

 

・・・・・。

 

 

「ソヒョンさんと、なんかあった?」

 

「・・なんでわかった?」

 

ヒョンを、そんな風にするのは

それしか思いつかない

 

「ケンカしたの?」

「お前、飲むか?」

 

 

「・・いや、やめとく」

 

「つきあえよぉ」

 

「水なら付き合う」

 

「水ぅぅ?」

 

「はい、とりあえず、

ソファに座って」

 

冷蔵庫の前にいるヒョンの身体を

反転させて、軽く背中を押した。

 

「家主は俺なのに」

 

ぶつぶつ言いながらソファに向かう

ヒョンを確認して冷蔵庫から

ペットボトルを2本取った。

 

 

 

「で?」

 

「んーーーー?」

 

「何が原因なの?」

 

「んーーーーーー」

 

 

「俺、呼び出した理由は何?」

 

「んーーーーーー」

 

・・・・。

 

 

「もう、寝る?」

 

「寝ない」

 

やっと、言葉が出た。

 

「じゃ、話して」

 

「んーーーーーー」

 

戻った。

 

 

 

 

 

 

~・~・~・~ 

 

 

 

 

 

 








「なんで、喋んないの?」

 

30分黙ってた。


 

「ヒョンが喋りたくないのかと思って」

 

「あーーー、なるほど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソヒョニがさ、」

  

「うん」

 

「入籍、考え直したいって」

 

 

・・・・・。

 

 

「なんで!?」

 

入籍はソヒョンさんの誕生日にするって

言ってたから

 

たしか、来月だったはず

 

「・・やっぱり、あの時、

すぐ入籍しとけばよかった」

 

真っ赤な顔のまま、

目を閉じたヒョンが

ズルズルと

ソファに身体を倒した。

 

「理由は?」

 

「俺がいなくなるって」

 

いなくなる?

 

「“約束”をしたら、きっと、

俺はいなくなるって」

 

・・ちょっと

 

「・・なまじ、“魔法”が使えるからなぁ」

 

何、言ってるのかわからない

 

「ヒョンは、なんて答えたの?」

 

「そりゃ、説得したよ。でも・・

今はダメみたいだ」

 

 

「ダメって・・」

 

「ソヒョニに、そういう傷があるのは、

わかってた。でも・・約束をしても、

手が震えなくなったし、プロポーズの時も

“嬉しい”って言ってくれた・・だから

・・・あーーーー、ホント

かっこ悪いよなぁ」

 

「・・もしかして、ヒョン、

あきらめるの?」

 

「・・そっちが、いいのかなって。

ソヒョニが楽になれるのは」

「そんなはずないでしょ」

 

 

「・・・言い切ったな」

 

「話、変わるけど」

 

「え!?ここで変えるの?」

 

 

「ヒョンは、どうして

プロポーズしたの?」

 

「・・そりゃ、これから、ずっと

一緒にいたいって思ったから」

 

「それは、俺も思ってるけど。

なんで、決められたの?」

 

「プロポーズを?」

 

「うん・・そーゆーのって

何がきっかけなんだろうって」

 

「んーーーーーー・・」

 

 

「いつ、決めたの?」

 

 

「いつ・・いつ・・ねえ・・

プロポーズを決めたのは、去年

ジョングギの話聞いた時だったかな・・」

 

「ジョングギ?」

 

「ほら、リアンさんと別れたって

聞いた日。その夜、ソヒョニが

言いきったんだ。“大丈夫。2人は、

もう1度出会う、私の魔法は

強力なんだからって”

・・魔法使いの彼女だぞ。

こわいものなしだろ・・

実際、何も、怖くなかった。

彼女は俺に必要な人なんだって。

改めて、そう思ったんだ。

いつか、彼女もそう言ってくれた。

俺が・・欠けた部分にピッタリ

はまった気がするって・・

だから、“約束”をしたかったんだ。

口約束じゃない。“夫”になれば

“家族”になれば、これから

彼女の身に起こる事は全部、

1番に知る事ができる。堂々と

守る事も、喜ぶ事も、悲しむ事もできる

・・それに、彼女の中でも

俺を1番にしてほしかった」

 

・・・・・。

 

「ヒョンは、怖くないの?」

 

「何が?」

 

「それだけ大切な人が、次の日、

急に目の前からいくなって

しまうかもしれないって。

怖くならない?毎日、誰かがいなくなる

ニュースが流れてるんだよ」

 

「・・・もし、彼女を失ったら

・・そうだな、俺は・・壊れるかもな。

いつもどおりの朝を迎えて

次に時間が重なる時は、

何をするか話して・・

もし、その後、彼女が・・

いなくなったら・・うん、怖いな」

 




「それでも、離れたくないって

思ったら言っていいのかな」

 

「だからこそ、離れたくないって

思ったら言っていい・・・うん。

そうだな、それでいい」

 

 

答えは、出たみたいだった。

ヒョンの目に、少しずつ

力が戻ってきたのがわかった。

 

「ヒョン、水、もらってくね」

 

「ジミナ」

 

「ん?」

 

「サンキュ」

 

「・・・ヒョンの諦めるとこなんて

みたくないし、物分かりいいフリなんて

しなくていいって、ジョングギに

言ったのはヒョンでしょ」

 

「・・・俺、いい事言ってたな」

 

「ん、じゃあね」

 

 

 





ヒョンのマンションを出る頃には

線状に細いオレンジが走る程度の

明るさだった。

 

♪♪♪

 

 

『ケーキが食べたいです』

 

・・・・。

 

 

よし・・決めた。

 

 スターJ-HOPE(2021年)