【10:07】

 

JIMIN >

 

 

めずらしく

彼女より早く、目が覚めた。

 

少し待つと、

 

向き合っていた彼女の

閉じた瞼が、ピクッと動いて

ゆっくり開く。

 

 

「・・おはよう」

 

「・・おはよう・・ございます。

今・・何時ですか?」

 

「10時すぎたとこ・・

目、腫れてる」


いっぱい、泣いたから

 

その言葉に、モゾモゾと動き出した

彼女が腕の中に入ってきた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

少し、くぐもった声で

 

「ブサイクなので、

・・見られたくないです」

 

 

「可愛いよ」

 

「可愛くないです」

 

「俺しか見れないモノは

全部可愛い」

 

「よくわかりません」

 

彼女の長い髪を撫でる。

 

「・・ユイさんと会えた?」

 

「いえ・・気づいたら朝でした」

 

「俺は会えたよ」

 

「え!?」

 

一瞬、顔を上げたけど

 

「顔は、はっきり見えなかったけど

声が聞こえた」

 

俺が下を向こうとしたら、

また顔を隠した。

 

「そうですか・・私の方が

会いたかったのに

“そっち”に行ったんですね」

 

 

「BTSの勝ち」

 

「確かに・・オンニなら

考えられます。・・オンニの声って

何か言ったんですか?」

 

「んーーーー、秘密」

 

「なんでですか?」

 

「なんとなく」

 

教えようかとも思ったけど

“代わりに守って”なんて

もう目を覚まさないって

言ってる気がして

 

「・・・変な事、言わなかったですか?」

 

「変な事って、例えば?」

 

「・・私のダメなとこ・・とか」

 

「ダメなとこ・・」

 

「日付間違えるとか・・

準備していた荷物、玄関に

置いて出ちゃうとか・・

間違い電話って気づかずに

ずっと、話しちゃうとか・・

お金払って、買ったモノ

置いてくるとか」

 

 

面白すぎる

 

「いや、ジウがどれだけ

可愛いかって話してた」

 

「・・絶対、違います」

 

全否定

 

でも、

 

「今日は、ここから出る?」

 

言葉のリズムが出てきた。

 

「・・はい」

 

「何したい?」

 

「ジミンさん、今日予定は?」

 

「俺は少し、人と会ってくるけど

大丈夫?」

 

「はい・・あの、ごめんなさい」

 

「何が?」

 

「一緒に過ごすの断ったくせに、結局」

「ストップ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゃんと止まった。

 

 

 

「言っとくけど、断られた時から、

考えてた事だから。どうやったら、

ジウヤの考えを変えられるか。

だから、俺は、ここにいてくれる事が

嬉しいんだよ。でも、一緒にいても

俺の時間が流れてて気が楽になったって

言われて、なんとなく、

わかった気がしたんだ。

ずっと、隣にいなくても、

お互いが戻ってくる場所が同じなら・・

そこに帰りたいって思えたら

それでいいって」

 

「・・・はい」

 

「俺の隣に帰ってきたいって、

そう想ってくれるなら

それだけ、俺は幸せになる」

 

「“おそろい”です」

 

「よかった・・

よし、じゃあ、起きよう」

 

「はい・・」

 

 

~・~・~・~

 



「夕方には帰ってくるよ。

何か必要なモノがあったら

カトク入れて帰りに買ってくるから」

 

「はい」

 

「ゲームしたかったら

していいからね」

 

「・・はい」

 

「でも、俺が帰ってきたら

ハグはしてね」

 

「ゲームしてても、ジミンさんが

帰ってきたら終わります」

 

「半分聞いとく」

 

「ホントですよ。私の中で1番は、

ジミンさんです」

 

んーーーー

 

「・・約束、明日に伸ばそうかな」

 

「ダメです。行ってらっしゃい」

 

「んーーー」

 

 

 

 

 

ハグしたまま、話してたけど

最後に少しだけ力を入れて

 

 

手を離した。

 

 

 

 

 

 

 

エレベーターに向かう途中、

ドアが閉まった音に振り向いた。

 

そのドアの向こうには、

ジウがいる。

 

誰にもなりたくない時に

使う場所だった部屋にいる彼女は、

 

ちゃんと

『俺』を取り戻してくれる。

 

彼女がいれば、きっと

部屋は必要ないと思った。

 

 



ふと浮かんだ2文字に

 

心臓が強く打つ。

 

 

・・・こーゆーのって、

 

いつ決めればいいんだろう

 




※画像お借りしました。