Jiu >

 

 

うわぁぁぁぁ

 

 

扉を開けた先は、

 




広いリビングになっていて、

奥の窓は天井まで

枠を広げていたから

その先に広がる景色も全部

自分達のモノのような気がした。

 

 

しかも

 

「あれ、ホンモノですか?」

 

「そうだよ、段があるから気を付けて」

 

もう手を取ってはくれてたけど

 

2段ある段差を降りると、

つい、近寄ってしまった。

 

ホンモノの暖炉だぁ・・。

 

ゆらゆらと揺れるオレンジの周りを

小さな火花がパチパチとはじける。

 

伸びる炎の先から

高い天井を伝って降ろした

視線の先に向かって、身体は動いた。

 

「ふかふかだ」

 

大きなソファ。

 

「そんなに弾まなくてよくない?」

 

さっきの車の中と

同じふわふわなのに、

ジミンさんといるだけで、

すごく楽しくなった。

 

「部屋、気に入った?」

 

「はい、もちろんです。こんな素敵な

場所があったなんて知りませんでした」

 

「ごめんね、ほんとは、

一緒に来たかったんだけど」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「疲れてない?」

 

「はい」

 

「よし、じゃあ、探検しよう」

 

探検!?

 

 

柱はあるけど

ほぼワンフロアだから

だいたいの位置はわかるけど

 

私の手を取ったジミンさんが

足を進めたから、

ついて行く事にした。

 

段を上がった先には

6人がけのダイニングテーブル。

その隣には

 




アイランドキッチン・・。

 

これ・・大理石かな?

 

思わずカウンターを撫でてしまった。

 

 

「ジウヤ」

 

 

私の手を離したジミンさんが

開いたのは冷蔵庫の扉。

 

わぁ・・

 

中は、飲み物と

お肉やお魚や、卵、野菜も、

ぎっしり並べられていた。

 

あ、キムチもある。

 

「食事なんだけど、ここで

頼んでもよかったけど

夜はジウヤと一緒に作りたくて。

材料を頼んだんだ。

勝手に決めたけど、よかった?」

 

「はいっ、もちろんです。

嬉しいです」

 

「よかった。あ、でも、

食べたいのがあったら

頼んでいいからね」

 

「はい・・これは?」

 

 

中央にあったのは

 

「これは、俺が買ってきた」

 

 

見覚えがある箱。

もしかして・・

 

「ケーキですか?」

 

「うん。前、食べた時、

おいしいって言ってたから」

 

やった


「ありがとうございます」

 

「嬉しい?」

 

「はい、もちろ・・ん」

 

まだ、ちゃんと

顔見れてないとは思ったけど

鼻先がつくぐらい近づいた

ジミンさんの顔は、

やっぱり、ちゃんと見れなかった。

 

私の身体の横に伸ばされた手は

ちゃんと冷蔵庫の扉を閉めて

私の動きも止めた。

 

「ジウヤ」

 

「・・は・・い」

 

もぅ、1年経ったのに

 

「キスしていい?」

 

・・・・心臓が

 

 

 

「探検・・終わってからです」

 

痛い・・

 

「キスしたら探検しよう」

 

「・・キスだけで・・

終わりますか?」

 

「・・・難しい事聞いてくるね」

 

ジミンさんの心臓は、

普通なんだろうな。

 

すごく、楽しそうに話す。

 

「じ、じゃあ、先に探検しましょう」

 

ジミンさんの腕の下を抜けて

リビングに戻って・・

 

ようやく息がつけた。

 

これ・・

いつになったら、

落ち着くんだろう・・。

 

やっぱり、暮らすとか

無理・・。

 

 



「こっちが先」

 

 

リビングの奥に行こうと思ったら、

手を取られて

 

玄関の方へ向かった。

 

「こっちが・・」

 

横に伸びた通路を

奥に進むとあった扉

 

ここは・・

 

無駄に広い




「お風呂」

 

ですね。

 

 

振り向いたジミンさんは

にこっと笑って、

 

何も言ってないのに

なぜか、満足気に頷いた。

 

「よし、次」

 

次・・

 

「・・ここがトイレでしょう

・・ここがクローゼットで・・何?」

 

1つ1つの扉を開けるジミンさんの

後をついて歩いていると、

 

ふと、

 

「みんなで行った旅行を

思いだしちゃって」

 

笑ってしまっていた。

 

あの時は、ニセモノだった。

 

別々で寝ると思ってたのに、

それぞれでロッジに泊まる事になって

寝室が1つしかなくて・・

どっちがソファで寝るかって・・

 

「あぁ~・・でも、あの時は、

こうして、手は握ってなかったでしょ」

 

 

「ニセモノでしたから」

 

「ホンモノになれてよかった」

 

「・・・はい」

 

「じゃあ、あの時には

できなかった事、もう1つ」

 

 

 

 

「開けて」

 

また、リビングに戻って、

その奥にあった扉の前で足を止めた。

 

「なんですか?」

 

「いいから、開けて」

 

・・なんだろ

 

 

ゆっくりと

ノブを持つ手に力を入れた。