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「私がホソクさんと結婚しなかったら

もう、ここには来れないんだよね」

 

ソヒョンさんが、ソファに持たれて

天井を見たまま、零した言葉に

みんながフリーズした。

 

それって・・

 

「どーゆー意味?」

 

ユジョンさんの言葉に

 

んーーー

 

っと同じ姿勢のまま、声を出す。

 

「私・・ホソクさんと出会う前、

結婚を約束した人がいたの」

 

 

初めて聞いた。

 

「その人・・もう、この世界には

いないんだけど・・」

 

「いないって」

 

「病気で死んじゃった」

 

そう・・だったんだ。

 

「その時から、私は“約束”が

できなくなったの。

私が“約束”をしたから・・

こうなったんじゃないかって」

 

「そんな事、ある訳ないよ」

 

スズさんの言葉に

 

「それが、初めてじゃなかったから。

“約束”をした人が私の目の前から

いなくなるのは・・だから、余計に」

 

「ホビとは、いつ入籍する予定なの?」

 

ヨンヒさんの質問にも

まだ、天井を見たまま

 

「私の誕生日。1月23日」

 

来年・・

 

「すごく・・怖いんだ。これがさ、

いわゆるマリッジブルーってモノなら

いいんだけど。もしかしたら・・

ほんとに、逃げちゃうかも」

 

ソヒョンさんは、

いつも楽しそうに笑う人で。

花束を作る時の表情は、

とても優しくて。

 

“逃げる”という言葉が、

とても不自然に聞こえるほど・・

 

「オンニの気持ち、ホビさんは?」

 

ユジョンさんの言葉に

やっと、身体を起こして

座りなおした。

 

「ちゃんと話した訳じゃないけど・・

わかってるような気はする。

彼は、私の過去も全部、知った上で

気持ちを伝えてくれたから。

私・・次第。私だけ・・動けない」

 

・・・・。

 

こんな時、言葉が出ない。

 

 

 

「何もない人なんていないし。

みんな不安はあると思うよ。ついでに

言うけど、私の目の病気・・

昔より進行してる」

 

!?

 

「ホントなの?すずちゃん」

 

イチカさんの声が緊張してる。

 

「ん。でも、それでわかった事が

あったの。私、見たいモノがあったって」

 

「見たいモノって?」

 

「赤ちゃんと・・その子を見るユンギの顔。

見えなくなる前に・・って言ったら、

ユンギから決まってないって言われたけど」

 

赤ちゃん・・。

 

「私の病気は、遺伝性だから。

もし、子供に遺伝したら、この決断を

後悔する時がくるかもしれないし、

ユンギは、ずっと不安だと思う。

それでも、進んでみないとわからない。

そう、思えるようになった事が

すごい事だと思ってる」

 

 

「不安なのは私もだよ」

 

ユジョンさん・・

 

「私も不安はある。幸せを感じたら、

その分、悲しい事が

起きるんじゃないかって」

 

イチカさん・・。

 

「不安に打ち勝つ方法なんて、

独りで考えたって浮かばないわよ」

 

ヨンヒさん・・。

 

「きっと・・リアンオンニも

不安はあるけど頑張ってるよ」

 

・・・・。

 

 

 

 

 

「私・・」

 

みんな、一緒なんだ。

 

「私も、昔は、思ってました。

今日、感じた幸せは2度

感じる事はできない。

明日が当たり前のようにくるって

そう思う方が怖いって・・でも、

負けるのは嫌だったんです。

不安に負けて、動かないまま

時間が過ぎてしまうのが嫌だったんです。

たくさん、やりたい事があっても

・・できない人もいます。

私は、話せるし、食べれるし、

自分の意志で動けます。だから

負けちゃダメだって思って。

そんな贅沢な事はできないって。

その気持ちだけで頑張ってきました。

でも、そのおかげで、たくさんの人と

出会えて、今、すごく幸せです。

誰かと約束ができるのも幸せです。

楽しみになりました。今・・

ソヒョンオンニの周りには、

みんながいます。オンニが

傍にいてくれたから頑張れた人も

たくさんいます。不安にならない人は

いないけど、独りじゃないなら、

怖がる必要はないです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・って

 

 

 

私・・また・・

 

「ご、ごめんなさい、

私、その無責任に」

 

オンニは生きてる。私は、まだ

目の前で命が消えた経験を

した訳でもないのに

 

「ジウちゃんの言うとおりね。

独りじゃないから。

独りにならなかったら・・大丈夫よね」

 

イチカさんの優しい声が落ちる中

 

両手で顔を覆ったソヒョンさんを

スズさんが抱き寄せた。

 

 

 

みんな・・不安だよね

 

 

イチカさんの言葉は

とても小さかったから

独り言だとは思ったけど

 

「よしっ、飲もう。ほら、

ソヒョンオンニ、飲むよ。

あ、そだ、ドラマ観よう。

この間の観てないって

言ってたでしょ」

 

ユジョンさんが、張った声に

目元を拭いながら、

ソヒョンさんがうなずいた。

 

 

「ドラマ、何、見るの?」

 

「〇〇〇〇」

 

!?

 

「私も、それ、見れてないんです。

配信されてましたか?」

 

大好きな俳優さんの新作ドラマ。

 

「うんうん、ジウちゃんも見てたんだ」

 

「はいっ」

 

 

始まったドラマを

みんなで見て・・

 

ヨンヒさんの言葉で、また

にぎやかになった。

 

 

 

 

「それぞれがドラマに出るってなったら

なんの役が合うと思う?」

 

 

 



 

☆☆☆☆☆☆☆