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「んーーーー」

 

アミボムを持ったまま声を出した

ユジョンさんは、諦めたように、

ソファに身体を倒した。

 

んーー・・・

 

 

「そうなる気はしてたのよ」

 

・・・・。

 

ため息をつきながらの

ヨンヒさんの声が・・強い

 

お仕事モードだ・・。

 

今夜のコンサートは

無料で配信される。

 

アミは、世界中にいて。

みんな、見る。

 

結果、

 

このクルクルは・・

 

サーバーがダウンしたんだ。

 

「でも、2曲目までは見れたし」

 

イチカさんがニコニコしながら

お腹に手を当てる。

 

「新曲、かっこよかったね~」

 

ソヒョンさんの言葉に

激しく、共感した。

 

ほんとに、めちゃくちゃ

かっこよかった。

かっこよかったって言う感想しか

出てこない自分が嫌いになるぐらい

かっこよかった。

 

 

「それもだけど、最初のマイドロ」

 

スズさんが頷きながら嬉しそう。

 

あ、たしかに

 

大きなテレビの前、コの字型のソファに

座った私達は、アミボム持って

声をそろえた。

 

 

ユンギさんが言葉を止めた先の

 

「“ミアネ、オンマぁ”、ね」

 

笑いながら言葉を続けた

ソヒョンさんにも激しく共感した。

 

ほんとに・・ほんとに、かっこ、

「ディレイ、見れないんだよなぁ・・」

 

ユジョンさんの言葉にも頷く。

私も仕事だったから。

 

「ヨンヒオンニ、これ円盤になる?」

 

「ん~・・まあ、なにかしらの

コンテンツにはなると思うけど」

 

まだ、納得していない

ヨンヒさんが答える。

 

「じゃあ、ごはん食べよ」

 

「手伝います」

 

あっさり、ソファを立った

スズさんについて

キッチンに向かった。

 

 

 

~・~・~・~

 

 

「そういえば・・イチカオンニ」

 

「何?」

 

「オッパから聞いたよ、赤ちゃんの名前」

 

ユジョンさんの言葉に

ジミンさんの笑顔が一瞬で浮かんだ。

 

そうだ、たしか

「いちごちゃん・・ですよね」

 

ジミンさんが嬉しそうに教えてくれた。

 

「テヒョンイがつけたの?」

 

私とヨンヒさんに挟まれる形で

座るイチカさんが

 

「うん。色々呼んでたら、

その名前に反応したの」

 

「他の名前ってなんだったの?」

 

楽しそうに聞いてきた

ソヒョンさんのグラスは、

さっきから、ずっと

焼酎が入ったままだけど

それは、ずっと、無くなっては

注がれてるからそう見えてるだけ。

 

「キムチちゃん」

 

き・・・キムチ・・

 

「なんか昔、そんな事、言ってたね。

なんだったっけ、たしか」

 

 

「“キムチがおいしい”です。

息子さんにつけたいって」

 

いつか、テヒョンさんが言っていた。

 

「そうだったね。さすが、アミだぁ」

 

ユジョンさんが手を叩いて笑った事に

すごく・・ホッとした。

 

うん・・大丈夫。

 

「でも、ほんと、楽しみだね~」

 

そう言ったソヒョンさんの

グラスの中身が、するっと

なくなって、すぐに満たされた。

 

・・大丈夫かな

 

 

少し、ペースが速い気がしたけど



あ、


嬉しそうなジミンさんの言葉が

もう1つ聞こえた。

 

 

「テヒョンさんと同じ誕生日に

なるかもしれないって聞きました」

 

私の言葉に、頷くイチカさん。

 

「テヒョンイは、もう、

そのつもりで準備してる」

 

「よかったね。バンタン、

休暇になるし、心強いよね」

 

スズさんの言葉に

 

「・・うん」

 

・・・・

 

なんだろ

 

イチカさんが少し、寂しそうに見えた。

 

やっぱり、不安なのかな。

 

 

そうだよね。

 

こーゆー時は・・

 

「どうしたの?ジウちゃん、

手、挙げて」

 

右手をまっすぐ挙げた私に

スズさんが、ちゃんと質問してくれた。

 

みんな、喜ぶって言ってくれたし

 

「あ、あの、私、今日は、目標を

作ってきました」

 

不安は・・消してあげたい。

 

なにか別の話を

 

「どんな目標?」

 

 

イチカさんの顔が柔らかくなった。

 

「今日は」

 

みんなの目が私に向いてるのがわかって

 

視線が泳ぐのを止めたくて、

両目を閉じた。

 

「今日は、みなさんの事を、

お、オンニって呼びますっ」

 

 

「今日の目標?」

 

ユジョンさんの声に大きく頷いた。

 

「はいっ」

 

 

 

その時、肩に手が触れた。

 

「すごく、嬉しい」

 

イチカさんが、

花が開いたように笑って

 

みんなも笑った。

 

・・よかった。