9月3日(土)【16:43】

 

 

JIMIN >

 

 

「もうすぐ着くわ」

 

「ん」

 

 

・・・・・。

 

 

「ヌナ」

 

「何?」

 

「・・何も聞かないの?」

 

「何って?」

 

「その・・なんで、急に、ここに

連れて行ってほしいって

言ったかって・・理由」

 

迷ったけど・・・

 

困った時に

1番に浮かんだのはヌナだった。

 

「理由・・そうね。昔は、

それを把握しとくのが仕事だったけど

今は、違うから。それでも、

頼ってくれた事自体が嬉しいし、

んー、聞かなくてもいいかな。

ジミナが話したいなら聞くけど」

 

「・・俺も、はっきりわからないんだ」

 

なんで、ジウが、この場所を

待ち合わせにしてきたのか

 

とりあえず、カトク・・

 

『もうすぐ着くよ』

 

♪♪♪

 

『はい。気を付けてくださいね』

 

・・・何に?

 

 

 

 

 

 ~・~・~・~

 

 

 

「こっちに回るんでしょ」

 

「あ、うん・・そう・・なんだけど」

 

建物の裏手に回ったヌナの車は、

ゆっくりとスピードを落としながら

進み続ける。

 

 

ジウ、どこかにいるのかな

 

 

 

窓から見える景色に、

彼女の姿は見えない、

 

 

「ヌナっっ、ここでいい」

 

「え?」

 

「ここで。俺、行ってくる」

 

「行ってくるって、こっちは

“職員用”じゃないの?」

 

見えたのは、彼女じゃなかった。

 

「大丈夫。知り合いがいたから」

 

「わかった。じゃあ、

端に停めて待ってるから」

 

「ん。また連絡する」

 

 

 

 

 

 

後部座席の扉を閉めて

足を進めた先にいたのは・・

 

 

 

 

 

 

「どうも」

 

「こんばんは」

 

 

 

 

 

スホ君だった。

 

黒のシャツに羽織った白衣。

 

ちゃんと“イケメン”のお医者さん。

 

「え・・と、」

「とりあえず、これ、着て

ついて来てください」

 

 

「え?これ?」

 

手渡されたのは

明らかに大きい白衣。

 

「・・・サイズは・・とりあえず

・・バレなきゃいいだけの話なんで」

 

・・・。

 

とりあえず、

着ないと始まらないんだよな

 

息をついて白衣に腕を通す。

 

 

 

・・・袖、余ってんだけど

 

 

 

 

「手、出してください」

 

言われるまま伸ばした腕の上、

くるくると袖口を折り返された。

 

・・・・。

 

「ありがとう」

 

「いえ・・髪、黒でよかったです」

 

「あ、うん」

 

「金髪とかピンクとかだったら

ここまででした」

 

・・・よかった。

 

「じゃ、行きます。

できるだけ下向いてください」

 

「わ、わかった」

 

 

スホ君の後について

“職員用”の通路を進む。

 

色々、聞きたい事はあるけど

とりあえず、医者の恰好をして

誰にもバレないように“病院”に

入る事になってるようだったから

黙ってついて行くしかなかった。

 

 

 

 

「こっちです」

 

 

通路を右に曲がって、

すぐにあったエレベーターの扉は

タイミングよく開いた。

 

「乗ってください」

 

「う、うん」