♪♪♪

 

 

オープン前のレストラン

 

店のスタッフ全員で

まかないを食べてる時だった。

 

・・・・。

 

 

 

『イチカオンニ、今日、伝えるよ』

 

この国に来てからユジョンちゃんからの

カトクは初めてだった。

 

イチカが妊娠した。

こんなに幸せな事はない。

 

ほんとは、

電話したいぐらいだったけど

 

『ほんとは、こういうの

止めた方がいいんだろうけど

でも、幸せな事だから。

これだけは伝えたかったんだ。

ごめんね。オンニの邪魔しちゃ

いけないってわかってるんだけど』

 

邪魔とか・・、

 

『オンニに新しい彼氏さんが

出来てても、それは、それで、

これはこれだから』

 

思わず口元が緩む。

 

 

『こっち、帰ってくる時があったら、

連絡とか、してくれたら嬉しい』

 

・・・・。

 

そっちに帰るのは・・

 

「Rian」

 

 

料理長の声に振り返ると、

その右手には

 

 

 

「(きたぞ)」

 

!?

 

 

「(結果か!?)」

 

隣にいたスタッフの声に

まわりのみんなも集まった。

 

「(大丈夫だ、リアンなら。

俺がついてる)」

「(なんの保障にもならないでしょ)」

「(なんだと!?いいか、俺には、

生まれつき神のご加護が)」

「(静かにっ・・)Rian、

prova ad aprirlo(開けてみて)」

 

頷いて

封筒とペーパーナイフを受け取る。

 

 

手が・・

 

大丈夫。

 

応募審査も通ったんだから。

後は、実力の勝負。

 

 

息をついて

封を切った。

 

 

・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「り、Rian?」

 

 

「Stai bene?(大丈夫か?)」

 

手紙を見たまま動かなくなった私に

スタッフ達の声がかかる。

 

 

「・・った」

 

声が

 

「通っ・・」

 

「Cosa succede?(どうした?)」

 

韓国語じゃわからないし、

頬を伝う感覚が正しければ

久しぶりに泣いてるんだろうし

 

息をついて

 

「Io ・・ha superato(合格した)」

 

私の言葉に、

 

一瞬の間の後、

空中に白いナフキンが飛び交った。

 

 

 

「(今日はお祝いだ)」

 

「(今日のお客はラッキーだ。

祝いのワインをつけよう)」

 

「(デザートの方が喜ぶんじゃない?)」

 

私の事で、こんなに喜んでくれる

スタッフと働けている幸せを

かみしめてしまった。

 

「(まだ、予選通っただけよ)」

 

応募していたのは、国際コンクール

 

「(何、言ってるんだ。

予選を1発で通過したんだぞ)」

 

「(もう、優勝は決まったようなもんだ)」

 

「(俺達の誇りだ)」

 

・・・。

 

「・・(ありがとう、がんばる)」

 

 

 

「(本選の時は、みんなで行くか)」

 

 

「(いいわねっ、私、ソウル初めてよ)」

 

「(まだ、時間はあるし、よし、

貯金始めるぞ)」

 

「(それが終わったら、

ソウルの案内頼むな)」

 

「(韓国語も覚えなきゃな)」

 

「(俺、話せるぞ。たしか・・)

アー・・アニョン」

 

「(どーゆー意味?)」

 

「(“こんにちは”だろ?リアン)」

 

「・・ん」

 

 

本選は1年後。

 

カトクの画面に目を落とす

 

韓国に帰る日・・決まったけど

 

・・・まだ、

 

 

「(こっからがホントの勝負だ)」

 

料理長の声に頷いた。

 

私は、夢の途中。

 

「・・・(負けません)」

 

 

いつか、また、あなたと出会えたら

堂々と立ちたい。

 

あなたが私と出会った事を

誇れるように

 

 

頑張るよ、ジョングガ

 

 

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