JIMIN >

 

「ヒョン、ソヒョンさん、ありがとう」

 

「いいから、急げ」

「ジウちゃんにちゃんと伝えてね」

 

「うん、2人とも帰り、気を付けてね」

 

「お~」「じゃあね~」

 

 

 

車が角を曲がるまでは待てなかった。

 

 

 

 

遅くないか?

 

 

エレベーターが、いつもより

遅いような気までしてきた。

 

 

もう1度、スマホを開く。

 

『今から、俺も行くから。帰らないで。

そこにいて』

 

送ったカトクが既読にならない。

 

電話もしたけど出ないし・・

 

手紙って・・

胸がザワザワする。

 

別れるとか、そんな事、書いてないよな。

 

 

 

 

 

・・遅い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玄関を開けると

きちんと並んでいた見覚えのある靴。

 

 

ジウヤ、

 

ジウヤ、ジウヤっ」

 

思わず声が大きくなってしまった。

 

 

「・・ジミンさん」

 

久しぶりに見た彼女は、

 

・・・なんで、そんなに

 

もう泣きじゃくっていた。

 

っっ、

 

「ごめん、ほんとにごめん。

俺が間違ってた」

 

 

ポロポロと涙を流す彼女を

抱きしめると、

 

「わ、私・・も・・

ご・・めんな、さい。嘘ついて・・」

 

しゃっくりまで出ていて

 

俺がそんな風にしたのかと思ったら

胸が苦しくなった。

 

「もう、いいんだ。ホントに

もう、いい。それより、ジウヤの

話、ちゃんと聞けてなかった。ごめんね。

俺に話そうってしてくれたのに」

 

「・・また、聞いて・・ください」

 

 涙声のまま返事をするからかも

しれないけど

 

「ジウヤ・・そんなに泣かないで。

って、ごめん、俺のせいなのに」

 

でも、なんとなく、

泣きすぎてるような気がした。

 

「ち、ちが・ます・・嬉し・くって」

 

嬉しい?

 

「私、ぜ、全部・・話します。だから、

か・・彼女で、い、させてください」

 

・・・・。

 

「それは・・俺のセリフだよ」

 

緩んだ腕の中で俺を見上げた

彼女の頬を伝う涙の後を親指で拭う。

 

「正直、俺の方が・・余裕ないんだ。

すぐ会いに行けないし、他の人みたいに

デートもできないし・・たくさん

我慢させる。だから、・・その、いつか

ジウヤの気持ちが俺から離れるんじゃ

ないかって・・」

 

 

 

「私には、ジミンさんだけです」

 

・・・。

 

 

 

柔らかい肌。

口角がくっと上にあがる。

 

「ほんと?」

 

「はい」

 

ずっと、見たかった大好きな笑顔。

 

「言っとくけど・・

俺、だいぶ、面倒くさいよ」

 

「私は・・頑固です」

 

たしかに

 

「束縛・・する方かも」

 

「されたら、し返すので大丈夫です」

 

・・し返す・・

 

「気持ち切り替えるの・・下手だし」

 

「BTSのJIMINさんは、完璧です。

それ以外の時は、ぼんやりしてても

大丈夫です」

 

スイッチ・・どこにあったんだろう。

 

いつのまにか、

涙もしゃっくりも止まってる

 

「ジウヤと会ってる時も、

ブツブツ言ってるかもよ」

 

「私にですか?」

 

「・・いや、独り言とか」

 

「独り言なら、返事しないだけなので

好きなだけ呟いてもらって大丈夫です」

 

・・それは、それで寂しい

 

「すぐ、顔、むくむし」

 

「あ、いいパックがあります。私が

むくみとりのマッサージしてもいいですし」

 

「・・・キス魔かも」

 

「え?」

 

普通に話してるけど

こうやって体温を感じるのは

2か月ぶりだった。

 

「と、ゆーわけで」