6月26日(日)【22:34】

 

JIMIN 

 

 

 

「帰ったよ~、ソヒョナ~」

 

今までも

おしゃれな部屋だったけど

 

「おかえり~」

 

玄関入ってすぐ

置かれていた無機質な白い花瓶に

生けられた花は、静かに、

その空気を柔らかくしていた。

 

「お邪魔しまぁす」


奥から聞こえたソヒョンさんの声に

返事をする。

 


 

 

 

リビングのテーブルの上には、

色とりどりのかすみ草と

赤いバラが広げられていた。

 

「いらっしゃい」

 

いくつか持った花越しに笑う

ソヒョンさんにつられた。

 

この2人の笑顔には、つられるな・・。

 

「これって」

 

「ジウちゃんとケンカしたんだって?」

 

・・・・。

 

「ケンカって言うか・・」

 

「ジミナ、飲むか?」

 

キッチンから聞こえた

ホビヒョンの声に


 

「いや、やめとく」

 

迷ったけど・・

 

 

「で?ケンカの原因は?」

 

話しながら、

手に取った花を合わせては

持ち替えたりと手を止めない


 

「まぁ、座れ」

 

ホビヒョンの声に

傍の椅子に腰かけた。

 

「・・ジウが、“元彼”と会ってて」

 

「ジウさんが?」

 

すぐ横のソファに座ったホビヒョンが

少し驚いような声を出した。

 

「・・その前に電話してたんだ。

その時は“会ってない”って・・それが」

 

「なんで、わかったんだ?」

 

「・・ヒョンは、イ・スホ君ってわかる?」

 

「イ・スホ・・」

 

「ユジョンちゃんの弟君?」

 

「あ~、イ・スホ君」

 

「ソヒョンさんも知ってたの?」

 

「んー、うん。会った事はないけど

名前だけは聞いてた。ユジョンちゃんの

自慢の弟君なの。たしか、もう

お医者さんになったんじゃなかった?」

 

「その子が?」

 

「・・その子が・・ジウの“元彼”」

 

 

「え」「え!?」

 

ソヒョンさんも驚いてる。

 

「そんなとこで繋がるとは・・」

 

「ジミナは、スホ君と面識あったのか?」

 

「ん、昔、ナムジュニヒョンを訪ねて

事務所に来てた事があって、俺が、ヒョンを

呼んだんだ。その時は、ヒョンも昔からの

知り合いってしか言わなかったから。

ユジョンさんとは繋がらなくて。

その後、ジウの彼氏として紹介されたんだ。

ほら、ちょうど、病院の結婚式の後」

 

「あぁ~、たしか、スホ君の

担当の患者さんだったもんな」

 

「スホ君との事、相談を

受けたりしてた時もあったけど

その後、別れて・・で、その、

今なんだけど。ジウと付き合うようになって

ずっと、聞こうとは思ってたんだ。

ナムジュニヒョンとスホ君の関係。

そしたら、ユジョンさんの弟だって・・」

 

「話、戻るけど2人が

会ってたのがわかったのは?」

 

「あ~、ジョングギとテヒョンイと

ナムジュニヒョンの4人で

宿舎に帰った日があって。あ、ほら12日。

テヒョンイが結婚記念日なのに

1人でいたくないって言って。

その時に、ジウの口からスホ君の名前が

出たって話をしたんだけど。

まあ、テヒョンイは、意識飛んでたから、

そこでは反応しなかったけど、

ジョングギは、ちゃんと聞いてきた

スホ君って誰?って。で、

ヒョンがユジョンさんの弟だって。

で、その後に俺が、

ジウの元カレって言ったら、

ジョングギとテヒョンイは、

“ちゃんと”驚いたんだ。今の

ヒョン達みたいに。でも」

 

「ナムジュニだけは驚かなかったんだな」

 

「うん」

 

「あいつもなぁ~」

 

なぜかホビヒョンがため息ついたから

つられて、俺も長く息をついた。

 

「で、ヒョンに聞いたんだ。

いつから知ってたの?って。

俺との時間に誓って

嘘はつかないって約束して。

そしたら、知ったのは、ほんと、最近で。

もちろん、ユジョンさんも

知らなかったって。たまたま、・・」

 

「ユジョンちゃんが見かけたのね。

2人がいるとこ」

 

次はソヒョンさんが言葉を続けた。

 

 

 

「・・ん」

 

「そっか、で・・ジウさん、責めたのか?」

 

「責めるつもりなんてなかったんだ。

ただ、なんで嘘ついたのかなって思って・・」


 

「ジミン君が、嫌な気持ちになるって

思ったんじゃない?」

 

「ジウも、そう言った・・」

 

「2人が会ってた理由は聞いたのか?」

 

「・・いや、別に、それは・・いいかなって。

会う事自体は・・ジウの考えだし」

 

「わぁぁ、ジミン君は、

誰かさんより大人ね~」

 

「・・誰かさんって誰の事かな?」

 

「ん~、世界的スターなのに、

虫が苦手な人」

 

「虫は・・俺だけじゃないし」

 

「冗談よ、まあ、理由を知ったところでね。

隠された事自体がひっかかってるなら、

何を聞いても一緒だろうし。で、そこから?」

 

「・・隠さなくていいから、全部話してって

言ったら・・全部は、話せませんって」

 

ジウの声・・

 

「ジミンさんは、話してくれてるんですか

って言われた」

 

「“全部”・・ねぇ。確かに全部は難しいよな」

 

・・・・。

 

「俺は、会った事を隠さないで

ほしかっただけなんだ」

 

「なんか・・変な壁ね」

 

変?

 

「ジウちゃん、急にそんな事言ったの?」

 

・・・・

 

「いや、その前に、お客さんが自分を

訪ねてきてくれたって、なんか、初めて

メイクを担当した人だったらしくて」

 

すごく、嬉しそうに。

 

「わぁぁ、すごく嬉しかったでしょうね」

 

・・・・。

 

「嬉しかった事、ジミン君に

話したかったのね」

 

“テレパシーが通じました”

 

・・・・。

 

話したかった・・

ずっと、そう思って・・

 

「正直でいる、隠し事をしない、

辛い事や苦しい事を話せる。

たしかに大事。でも、嬉しかったり、

楽しかった事を話したいって思えるのも、

すごく大切な事だと思うわよ。

ジウちゃん、現場をみてる分、私達より

連絡するタイミングを考えるだろうから。

その話をできるの、すごく、

嬉しかったんじゃない?

自分が見つけた居場所で

他人から認めてもらえるって

その嬉しさは、よくわかるでしょ」

 

・・・・。

 

それなのに・・俺は

 

“他には?”って・・