JIMIN >

 

 

不意打ちできた言葉の破壊力に

軽く眩暈がした。

 

もう

「・・ほんとにやめて」

 

『え?』

 

「今、必死で止めてるんだから。

ジウヤの家に行くの」

 

『あ、ごめんなさい。つい、その・・』

 

“つい”

 

・・・・。

 

こんな事、思うって、

俺、どんだけガキなんだよ。

 

でも、さっき聞いた

元カレの名前に、昔のジウを

思い出してしまった。

 

“愛してる”

 

この言葉が、“元カレ”には言えないって

悩んでいた。心が動かないって。

 

その言葉が・・“つい”、出たんだ

 

「嘘だよ。嬉しい。すごく、嬉しい」

 

苦しくなるぐらい

 

『よかったです』

 

「俺も愛してるよ」

 

『んーーー・・たしかに』

 

 

『ブレーキが外れてしまいそうです』

 

思わず笑ってしまった。

 

ふと見えた時計・・

もう、眠いかな・・。

 

でも

 

「ジウヤ、わがまま言っていい?」

 

『わ、わがまま・・とは』

 

「会いに行かないから、

もう少し声聞きたい」

 

『あ、そっちのですね・・私もです』

 

そっちがどっちなのか

わからなかったけど

 

「眠くないの?」

 

『大丈夫です。月光浴してるので』

 

「月光浴?」

 

『はい、今夜は、月がキレイですよ』

 

そうなんだ、

「待ってて、俺もベランダ行くから」

 

『はい』

 

 

 

「ホントだ」

 




暗闇の中、浮かぶ雲は、

優しく光る月を避けるように流れていた。

 

満月には、あと少し届かないけど

 

『きっと、そっちの方が

キレイに見えるんでしょうけど。

でも、同じ月見ながら

お話できるのは嬉しいです』

 

「そうだね・・次は、一緒に見たい」

 

『はい』

 

あれは・・

別に今はいいかな。

 

13日に放送されるけど

なにか聞かれたら後で

答えればいいし。

 

 

 

 

“月の力”なのか

 

まだ眠くないと言う

彼女との電話は

それから1時間続いた。