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イチカさんを囲むように座った

私達に、順に視線を合わせながら

 

「テヒョンイには、まだ、伝えたくない」

 

どうして・・

 

「どうして?テヒョン君、きっと」

「テヒョンイはステージに立つのが、

すごく幸せだって、いつも話すの。

だから、今、心から幸せな時間を

過ごしてくれてると思う。だから、

・・不安にさせたくない」

 

「不安って・・」

 

ユジョンさんが聞き返すと

寂しそうに笑ったイチカさん。

 

「彼も傷を負ってる。私があの日、

彼の頬を撫でたから、同じ事をするだけで

・・その時の事がよぎってるみたい。

だから、妊娠がわかれば・・もっと」

 

・・・。

 

そうだよね。

テヒョンさんが平気な訳ない。

 

 

「もし、ホントに妊娠していたとしても

せめてツアーが終わって

安定期に入るまでは秘密にしたい」

 

「で、でも、ツアー中だって、

帰国はするよ。オンニ、つわりとかで、

バレちゃうんじゃ、」

「つわりがひどい間は・・

どうにかして会わないようにする。

日本に帰る手もあるし」

 

「日本にですか?」

 

思わず、声を出してしまった。

だって、家族はいないって

 

「ん。私の従兄がフクオカにいるの。

お医者さんだから、色々と

手伝ってくれると思う」

 

「そう・・なんですか」

 

「わかった。そういう事なら

私達も、秘密にする。それぞれの

パートナーには言わない」

 

パートナーには・・じゃあ、

ジミンさんには・・秘密。

 

秘密が増えてしまった・・。

 

 

「でも、ナムジュン君には

いいんじゃない?ほら、万が一の時

テヒョン君を引き留めてもらったり

する事もできるし」

 

「あ~、そうか、そうだね。

だったら、ユンギさんとジミン君は?」

 

 

「ジミンさんは・・難しいかもです」

 

いつか言っていた。

私と付き合う前の話だったけど

自分に隠し事されたって

テヒョンさんが拗ねたから

もう、嘘はつけないって

 

「テヒョンさんには、嘘がつけないと

思います」

 

「クオズ・・か」


スズさんが目を細めて

つぶやいた。


 

「じゃあ、オッパとユンギさんには

話していい?あとは彼女組で共有して」

 

 

「・・まだ、確定してないのに」

 

困ったように笑うイチカさん。

 

 

「・・そっか、受診よね。病院・・」

 

「オンニ、前、受診した産婦人科は?」

 


少し考えた一花さんが答える。

 

「そう・・だね。カルテも残ってるし・・

先生も、とても優しかったから」

 

「でも、結構、遠かったって

言ってなかった?私もついて

行くけど、一花さんバス乗れる?

タクシーで行く?」

 

「あ、私が、車で明日連れて行くよ」

 

ユジョンさんがまっすぐ

右手を挙げる。

 

「でも、木曜日は、たぶん、

開いてなかったと思う」

 

「嘘!?マジで?」

 

「じゃ、あさっては?」

 

スズさんの声に挙がった右手が

ゆっくりと降りてきた。

 

「あさってから、私、連勤・・」

 

「そっかぁ・・」

 

オンニ達が・・困ってる

 

こういう時は、

 

「はい、わたし、金曜日、お休みです。

運転もできます。車があれば

ちゃんとできます」

 

右手を上げた私に、

オンニ達の視線が集まる。

 

末っ子が頑張んなきゃ。

 

☆☆☆☆☆☆☆