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「そろそろ、コーヒーにしようか」

 

「あ、手伝います」

 

立ち上がったイチカさんについて

キッチンに向かった。

 

カウンター越しに見える

ユジョンオンニとスズオンニは

顔を真っ赤にして笑いあってる。

 

 

「ジウちゃんは、お酒

飲まなくてよかったの?」

 

コーヒー豆が入った

ガラスジャーを出しながら

こっちを向いたイチカさん

 

「私、飲んだら寝ちゃうんです。

せっかくオンニ達と集まれるのに

寝るとか、そんなもったいない事

できない・・・」

 

イチカさんが、

すごく嬉しそうに笑ったから

言葉が止まってしまった。

 

頑張ってない笑顔だったから余計・・

 

「今、“オンニ”って言ってくれた」

 

 

「ご、ごめんなさい、私」

 

まだ、知り合って

時間経ってないのに

 

「どうして謝るの?嬉しいよ。

すごく、嬉しい」

 

「・・・ほんとですか?」

 

「うん、2人だって、すごく喜ぶと思う」

 

・・・そう・・なのかな

 

「ジウちゃん」

 

「はい?」

 

「ユジョンちゃんは、

あんな風に言ったけど、

私はね。この世に、

永遠はないって思ってる」

 

・・・。

 

 

なんで、急に

 

「私とテヒョンイだって結婚したけど、

これから、何があるかはわからない。

もしかしたら、別れる時がくるかもしれない」

 

「そ、そんな事」

 

「未来はわからない」

 

・・・・それは、私も同じだったけど

「でも・・」

 

「ユジョンちゃんの事、誤解しないでね」

 

「誤解・・ですか?」

 

「うん。ユジョンちゃんが、あんな風に

ジウちゃんに話したのは理由があるの」

 

理由・・

 

「彼女ね、もう、弟君と叔母さんしか

家族がいないの」

 

「え?」

 

「みんな亡くなってしまったんだけど

・・そのお母さんから、小さな頃ね

・・虐待を受けていたの。彼女だけ」

 

・・虐・・待

 

ユジョンさんが?

 

「すごく、辛い経験をして、

彼女自身、傷を持ってる。

頑張ってここまで歩いてきたけど、

根底にある気持ちは変わらないんだと思う。

独りになりたくない。自分の周りから

誰もいなくならないでほしい。だから、

リアニがいなくなった事も

ジミニと別れないでって言った事も

・・きっと、怖いんだと思うの。

自分が大好きになった人達が

離れていってしまう事が」

 

・・・・。

 

「本当は、ここまで私が話す必要ないって

思うんだけど、ジウちゃんは、ちゃんと

聞いてくれそうな気がしたから」

 

「・・・何もない人なんて

いないんですね」

 

あんなに明るく笑うユジョンさんの傷

 

「そうだね。だから、他人が

必要なんだろうね。私、

みんながいてくれてよかった。

じゃないと・・今日を

乗り越えるのは・・きっと、」

 

 

!?っ

 

オンニっっ

 

 

急に、膝が折れたイチカさんに、

慌てて伸ばした手が

ガラスジャーに当たって

コーヒー豆が散らばったけど

どうにか抱きとめた。

 

 

 

 

~・~・~・~

 

「あ、オンニ、大丈夫?」

 

ベッドに移した

イチカさんの瞼がゆっくり開いた。

 

「私・・」

 

「急に、倒れたんです」

 

「ジウちゃんが、

ナイスキャッチしたんだよ」

 

ユジョンさんと私の声を探すように、

ゆっくりと視線を動かした。

 

「・・ごめんね。びっくりしたでしょ」

 

「いえ、ケガなくてよかったです」

 

「オンニ、ゆっくり寝てて。

片付け、私達がするし、

それに、今夜はずっと、傍にいるから」

 

ユジョンさんの言葉に、

笑ったような表情で頷いたイチカさん。

 

やっぱり、キツイんだろうな。

 

笑って過ごす・・無理してたのかな。

 

そういえば、お酒も飲んでないし、

食事も入ってないみたいだったし・・

 

 

 

 

「イチカさん・・」

 

私とユジョンさんの後ろから

聞こえたのはスズさんの声。

 

 

 

 

「最後の生理・・いつ?」

 

 

・・・え?