FRI(END)S 

 

2024年

 

3月15日(金) 【9:03】

 

『僕達、ずっと“友達”だから』

 

『・・うん、私達、ずっと“友達”ね』

 

 

 

 

 

 

・・・・・。

 

 

 

ふ、と意識が戻ったのは

頭側の窓、

カーテンの隙間から刺した光が

アイマスクを忘れていた

顔の上を縦断していたから。

 

カーテン・・

ちゃんと閉めたはずなのに

 

思わず、こぼれたタメ息の原因は

それだけじゃなかったけど。

 

遮光カーテンは、ちゃんと閉めなきゃ、

意味な、

 

“友達”

 

 

 

・・・・

 

寝ようと思えば寝れたけど

夢の中で、また同じ言葉を

繰り返すのも嫌で

 

息をついて、ベッドから足を降ろした。

 

 

 

「そ~なの~。うん、うん、また、

詳しく決まったら、連絡するから。ん?

うん、あ、そうね。はい、はい、

じゃあね~」

 

えらく上機嫌な母さんの声

 

 

 

 

 

リビングに続く階段を降りる。

 

「あら、まだ朝よ」

 

「おはよ」

 

「今から、寝るの?」

 

「今、起きたの」

 

「・・仕事は?」

 

「“めずらしく”終わった」

 

ダイニングテーブルの椅子を

引いて腰かけた僕の前に

 

「あら、めずらしい」

 

そう、言いながら

ドリップコーヒーの道具を置いていく。

 

上機嫌な

「電話、なんだったの?」

 

 

「ん?あぁ~、あ、豆、挽きすぎないでね」

 

コーヒーミルを指差した母さんに

 

じゃ、自分でやればいいじゃん

 

という言葉は、飲み込んだ。

 

 

「気になる?電話」

 

・・・

 

「聞いてほしいんでしょ。

たまには、親孝行しなきゃ」

 

「ん~・・私は幸せモノね。

パパに似て、こんなイケメンの息子に

親孝行してもらえるなんて」

 

「早く、家、出ていけって思ってるでしょ」

 

「やだ、なんで、バレたの」

 

「・・・父さんの海外赴任が終わるまで

一緒に暮らしてって言ったの誰」

 

「あと半年したら、戻ってくるから、

準備しててね」

 

「・・すごいよね、世の中、

熟年離婚が増えてるのに」

 

「だってパパ、かっこいいんだもん。

はい、」

 

細い注ぎ口から湯気が立ち上る。

受け取った白いケトルを待ちなおして、

ドリップ用の紙フィルターに

お湯を回しいれる。

 

たまったお湯を空いたカップに注いで

フィルターに挽いたばかりの粉をいれた。

 

「2分よ」

 

「わかってるよ」

 

お湯を2分間で注ぎ切るのは母親の好み

湯気と一緒に立ち上る香りを

胸いっぱい吸い込む。

 

 

「ここのってやっぱり、香りが違うでしょ」

 

「・・違い、わかるの?」

 

「失礼ね」

 

ガラスのサーバーにおちる琥珀色の雫

 

「で?」

「何が?」

 

「電話」

 

「あぁ、それがね」

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・。