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カタン

 

 

 

 

1階に降りると

リビングの電気はついてるのに、

オンマ達がいる気配がなかった。

 

どこ、行ったんだろ

 

 

そう思いながら、

キッチンで水を飲んでいた時だった。

 

お店の方から聞こえた音に

足は自然と動いた。

 

お店と家を隔てるドアは

たてつけが悪くなってきていたから

その隙間から明かりと、

 

「もう少し、頑張るか?」

 

「・・・もう、決めましょう」

 

オンマと・・アッパ?

 

2人の声をこぼしていた。

 

 

「ジウが帰ったら、行くか」

 

「・・そうね。あの子には、まだ

しばらく黙っておきましょう。

心配かけたくないわ。どうせ、

次のソルラルまでは帰ってこないから。

伝えるのは、その時でもいいと思うの」

 

「・・そうだな。ジウは・・

ここが大好きだったからな」

 

「えぇ・・ずっと、

ここで過ごしてたものね」

 

ここ・・

 

「覚えてるか?あの子がこの椅子の上に

乗って落ちた時の事」

 

「あぁ、あったわね。ちょっと目を

話した隙に。もう、びっくりしたわ。

頭、打ったんじゃないかって」

 

「俺も、あやうく切る場所

間違えるとこだった。

本人はケロっとしてたけどな。

お前の仕事が見たかったって」

 

「勝手に道具使って、

持っていた人形にメイクしたり」

 

「あの時から、ジウはお前と一緒に」

 

「一緒に“遊ぶ”でしょ?」

 

「あぁ、そうだ、一緒に“遊ぶ”って

言ってたな・・それが、

今では、立派に働いてる。

時間は、ちゃんと過ぎてる」

 

なんの・・話

 

「そうね・・これも、

時間が過ぎた証拠よね」

 

「とにかく、あの子が帰るまでは、

気づかせないようにしよう。おい、

泣くな、もし、ジウが

起きてきたらどうする?」

 

「・・ドラマ見たって言うわ」

 

「そんな事言ったら、何のドラマだ、

って聞いてくるぞ」

 

「・・あ~・・それもそうね。

あの子の前でドラマはダメね」

 

「俺が言った冗談が面白すぎたって

言うのは?笑いすぎて涙が出たんだって」

 

「それこそ、通じないわ」

 

「・・・俺もそう、思う」

 

アッパの言葉にオンマが

笑ったのがわかったけど・・

 

「よし、じゃあ、戻るか」

 

!?

 

 

アッパの言葉に

できるだけ音を立てないように

その場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

心臓がドクドクする。

 

オンマが言ったわけじゃない。

アッパだって、一言も言ってない。

 

でも・・

 

帰ってきて、久しぶりに見た

お店の中が、なんとなく・・

 

時間が止まったように見えた。

 

・・・違うよね。

 

 

お店・・やめたりしないよね

 

 

ベッドに乗って

かかっていたネックレスをつける。

 

月の光を集めたばかりの

胸元の小さな石を両手で握りしめた。

 

 

 

 

お願い。

 

ここは、オンマとアッパの

 

私達家族の宝物なの。

 

神様、お願いします。

 


これ以上

 

宝物・・奪わないで。