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「すみません、送って

もらっちゃって」

 

 

帰りを心配したオンニが

車で送るって言ってくれたけど

なぜか、ドギョムさんの方が、

僕が送るって譲らなくて

 

「いいよ、彼女の心配事が

減るなら。全然」

 

わぁぁ、愛されてる。

 

それにしても・・不思議だ。

 

初対面の男の人と車で2人きりなのに

 

全然、力は入らなくて・・

 

これ、あれかな。

 

セギョンオッパの時もだったけど

 

「大切な人」の大切な人だったら

・・大丈夫なのかな

 

 

 

「それに、ジウさんと話したかったし」

 

「・・私と・・ですか?」

 

「ん・・僕と彼女の年、聞いた?」

 

「あ・・はい。12歳・・違うって」

 

「うん。・・ジウさん、引いた?」

 

「ひ、引くとか・・そんな事、全然」

 

「よかった・・彼女は、ずっと

それ気にしてたけどね。僕が

諦められなかったんだ。

生まれて初めての一目惚れ

だったから」

 

一目惚れ・・

 

「僕さ、昔、アイドルの

練習生だった時があったんだ。

あ、でも全然ダメで、高校進学前に

辞めたんだけど」

 

!?

 

どうりで、かっこいいと思った。

 

「その練習生の時にテレビ局を

見に行く時があって。その時、

初めて彼女を見たんだ。

魔法みたいな仕事だなって思った。

彼女の手が動いた後、

みんな笑顔になって。でも

その時、彼女も笑顔になって」

 

「その時、一目惚れしたんですか?」

 

「ん?いや、その時は、それで終わった。

大学卒業して、運よく正社員に

なれたんだけど。あ、僕ね。

美容室で使うようなヘアケア用品の

卸業者なんだ。それで、彼女の

美容院に、たまたま営業に

行く時があって。彼女を見た瞬間、

思い出したんだ。それまで、

思い出す事なかったのに。

仕事だってわかってるのに

彼女が笑ってくれて・・

気づけば好きになってた。

僕的には、“運命の再会”だったんだ」

 

・・・運命

 

「ドギョムさんって・・

ロマンチストですね」

 

「そう?でも、思った事は伝えないと、

いつ別れがくるかなんてわからないし。

あ~でも、父親がアメリカ人なのも

関係するかな。小さな頃から、

どストレートな愛情表現を

見てきたから」

 

あぁ~、なるほど

 

「でも、韓国だって、スキンシップは

多い方だよね。彼女の方が珍しいのかも。

僕は、もっとイチャイチャしたいんだけど

・・ダメって言われるんだよなぁ。

まぁ、だから、プロポーズしたんだけど。

夫婦になれば、誰からも文句言われないと

思ったし・・でも、結婚した事すら

彼女、言ってないみたいだし。

まだ・・気にしてんのかな」

 

 

・・・・。

 

 

 

「・・逆ですよ。オンニ・・

ドギョムさんが恥ずかしい想いを

するんじゃないかって。

いつか・・後悔するんじゃ

ないかって。それが、心配なんです」

 

「・・彼女が言ったの?」

 

「はい。さっき、聞きました」

 

「・・まったく」

 

 

「私、オンニと暮らしたのは

3年間だけだったんですけど

優しくて努力家で明るくて、

すごく大好きでした。

私、高校進学せずに、この世界に

入ったんですけど

そんな私の事、ちゃんと

受け止めてくれた事も

感謝しかないし。あ、もちろん、

メイクアップアーティストとして

すごく尊敬してます」

 

「そっか・・うん、僕も大好きだよ。

不器用な所も、本当は泣き虫な所も」

 

・・・。

 

 

 

 

 

 

「泣けるって大事ですよね・・私は

・・私も、いつか・・そういう人が

できたらいいな」

 

スホの前で初めて泣いたのは

別れの夜だった。

 

スホは、

 

 

 

私の前では泣かなかった。

 

思わずつぶやいた言葉を

 

「大丈夫だよ。運命って、

もう始まってるから。

いつか、それを感じた時、

ずっと前から

繋がっていた事がわかるよ」

 

もう始まってる・・

 

一瞬、こっちを見て

にこっと笑ったドギョムさんは

 

やっぱり、イケメンだった。

 

 

・・・

 

 

 

 

 

~・~・~・~

 

 

 

「ありがとうございました」

 

「うん。また、遊びにおいで。今度は

僕がちゃんとゴハン準備しとくから」

 

 

「はいっっ」

 

 

 

車から降りて

運転席側へ回ると、窓が下りる。

 

「ドギョムさん」

 

「ん?」

 

「職場で、もし、オンニに

言い寄るような人がいたら、

私が、ちゃんと追い払いますから。

安心してください。オンニが

ドギョムさんの事をみんなに

伝えるまでは、いや、伝えても

寄ってくるような人がいたら、

私が退治します」

 

「ジウさん」

 

 

差し出された手。

 

なんのためらいもなく握って

 

「ありがとう」

 

「まかせてください。その代わり

浮気は・・しないでくださいね」

 

「彼女以外は欲しくないよ」

 

 

 

握った手に力をこめて

同じタイミングで

大きくうなずいた。