4月3日(土)【20:35】

 

Jiu >

 

“浮かび上がる君は、あまりに鮮やかで

まるでそこにいるかと手を伸ばすところで

ふっと消えてしまう”

 

“淡々と降り積もった記憶の中で

君だけを拾い集めて繋げて

部屋中に映して眺めながら

こみ上げる痛みで 君を確かめてる”

 

昨日、0時に全世界一斉配信されたMV

イヤホンをつけて、もう1度再生する。

 

日本語の歌だったけど

韓国語訳もすぐにupされた。

 

浮かび上がる君・・か

 

 

 

 

スマホの画面から流した視線は、

バスの窓の向こうの景色の中

歩く人々をおいかけた。

 

あ、そうだ

 

スマホのアプリを開く。

 

1日から開始した配信。

Lさんにも伝えていた。

 

あ、やっぱり

 

ほぼ、身内票から始まった

フォロワーの中

 

“uji”

 

を見つけた。

 

コメント、入ってる。

 

“これからの配信、

すっっっごく楽しみにしてまーす”

 

・・・。

 

 

圧・・。

 

 

 

 

 

“Candy”

 

新しいアカウント

“身内”以外で初めてだ。

 

う、嬉しいっっ

 

コメントも入ってる。

 

“プチプラコスメの使い方とか

とても興味があります。

楽しみにしてます”

 

わぁぁぁぁぁぁぁ

 

どうしよう、

嬉しいっっ、嬉しい

 

 

コメント返して、・・あ

 

指を動かそうとして、

聞こえてきた次のバス停の名前に

慌ててスマホを閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

スホと別れて、Lさんと離れて

グループでの活動がなくなって

 

正直、寂しくて、いつも帰り道は

足取りが重くなっていた。

 

でも、今日は・・

 

いつもより足が軽くて、

なんなら鼻歌まで

ついてきていた。

 

 

スホが見たら、

なんて言うかな・・

 

・・・・。

 

 

また・・。

 

その時、

見えたコンビニの前で足が止まる。

 

 

どーしようかな・・。

 

明日は、久しぶりに夜通し

ゲームをしようと決めていて

途中で食料とかがなくならないように

念入りに準備していたけど

明日は、19時開始目標だから

仕事終わったら、

どこによる事もできないし・・

 

念のため、買って帰ろうかな。

 

 

コンビニのドアを押して中に入った。

 

でも、楽しみを作るって

やっぱり大事だ。

 

おかげで、今日も頑張れたし。

 

 

うん、うん

 

!?

 

ふと上げた視線の先

並ぶ陳列棚の向こうに見えた背中に

思わず心臓が強く打った。

 

え・・

 

 

 

 

スホ?

 

え?なんで、ここ

 

ま、まって

ど、どうしよう

 

思わず、周りを見てしまった。

 

とりあえず、目の前の棚の陰に

隠れるように背中を丸める。

 

スホ、なんで・・

 

でも、別れた夜、

もし、どっかで会っても

知らないフリしなくていいって言ったし、

なんなら、お互い、

別の相手といたとしても

 

・・とか

 

なんで、そんな事、言ったんだろう

 

今更、思ったところで・・なんだけど

 

でも、なんて声かけるの

 

“スホヤ、久しぶり~、元気だった?”

 

 

 

・・どこまでテンション上げていいの?

 

“ここのコンビニ来るんだ”

 

 

 

・・なんか、嫌みっぽくない?

 

“何してるの?”

 

 

 

 

 

・・買い物

 

・・・どうしよう

 

とにかく・・

 

もう1度、向こうを見る為に

首を伸ばす

 

あれ?

 

 

さっきまで見えていた背中が・・

 

!?

 

いなくなったと思っていた姿が

すぐ近くのレジに見えて

 

急いで、頭を低くした。

 

いや、だから・・別に隠れなくても

 

その時、

 

キッと、出入り口のドアが

開けられる音がして

 

あ、

 

足は、無意識に動いていた。

 

 

 

 

「す、スホヤ」

 

 

 

 

 

 

道路を渡ろうと左右を見ていた

その背中に声をかけた。

 

何を話すつもりもなかったけど

 

声が聞きたかっ、

 

・・・・。

 

「ご、ごめんなさい。人違いでした。

・・ごめんなさい」

 

振り向いた人は、スホとは

全然似てなくて、なんで、

間違えたのかもわからないぐらい

 

恥ずかしすぎて、

お辞儀だけして、

すぐにその場を離れた。

 

 

・・・・。

 

 

息が・・

 

途切れる息を少しずつ戻すうちに

ちゃんと、アパートについた。

 

・・・・。

 

また、

 

私の弱いとこがでた。

 

寂しくなると、“都合よく”スホを

求めてしまう。

 

・・・・。

 

 

もうっっ

 

しっかりしてっっ

 

スホだって、きっと

頑張ってる。

 

番号もIDも消してない。

 

だから、いつか会える。

 

でも、その時は、

心から笑って、

楽しく話したい。

 

もし、万が一

スホが落ち込んでたら、

慰めてあげられるように。

 

 

・・・。

 

 

それでも、ため息は

止められなかった。