Jiu >

 

・・・・・。

 

 

 

いた

 

 

 

 

 

5階建ての建物の屋上。

きしむ扉を開けた先

 

 

 

 

白いシャツに黒いパンツ

 

きれいに染められた金色の長い髪が

風になびく。

 

 

「Lさん」

 

 

できるだけ、いつもどうりに

声をかけた。

 

 

 

「・・ジウヤ」

 

 

やっぱり

驚いたような表情をしたLさんは

 

 

 

柵の向こうにいた。

 

 

・・・・。

 

 

「・・コートも着ないで

寒くないですか」

 

柵の手前に落ちていた

コートを拾い上げる。

その時、見えた柵越しの

Lさんの足は、半分宙に浮いていた。

 

「・・なんで、ここに」

 

コートの下に隠した手を

強く握りしめる。

 

「Lさんに伝えたい事があって」

 

「何?」

 

・・・・。

 

 

「・・そっちはダメですよ」

 

 

 

「そっちって・・何?」

 

 

「話を聞く時は、ちゃんと

こっちを向いてください」

 

私の言葉に、まるで

そっちにも地面があるかのように

躊躇なく片足を宙に浮かして、

ふわっと向きを変えた。

 

・・・・。

 

「話って?」

 

 

「私、・・Lさんの事がホントに

大好きです。だけど、この柵は

越えられない。隣に立って

あげる事はできません・・

大切な人と約束したので」

 

「約束?」

 

「もし、Lさんが、今、その場所から、

私の目の前から違う場所に行ったら、

そこは、何もない世界です。きっと

つまらないですよ。だから、こっちに

戻ってください。辛い事もあるけど、

楽しいですよ。食べ物もおいしいし、

キレイな景色も見放題だし。だから、

私の隣に来てください。ね?」

 

「ジウヤ、約束って?」

 

「・・約束は、約束ですよ。

私は、その日がくるまで

頑張らないといけないんです。

だから、ここは越えられないんです」

 

「あいかわらず・・

よくわかんない子ね」

 

やさしく笑った

Lさんの唇が震えている。

 

・・・・。

 

「Lさん」

 

コートもスマホも地面に置いて

両手を広げた。

 

「やっぱり、寒いんでしょ。

そういう時はこうするのが一番です」

 

Lさんが、いつも

手を広げてくれたように

肩を抱いてくれたように

 

視線を上げてくれたように

 

下を向かないで

 

私を見て

 

私の声を聴いて。

 

「ジウ・・ヤ」

 

震える声で呼ばれた名前を

耳元で聞けた事に息をついた。

 

Lさんの背中に回した手に力を入れる。

 

「Lさん、いつものように

私を抱きしめてください」

 

私の言葉に

Lさんの腕が素直に動く。

 

まったく・・

 

“したくない事はしなくていい。

心にできるだけ正直でいるのよ”

 

私には偉そうに言ったくせに

 

 

 

どうして・・笑ったの?

 

どうして、慣れたなんて嘘をつくの?

 

もう、

 

自分は、全然できてないじゃん。

 

ホントは、怒りたかったけど

 

初めて、Lさんが

涙を見せてくれたから

 

「今回は、許します」

 

 

私の言葉に、

ズっと鼻をすする音が聞こえた。

 

「・・変な子・・ほんと・・に」

 

 

 

「Lさん?」

 

次の瞬間、

抱きしめていたLさんの身体が崩れた。

 

!?

 

 

 

「Lさんっっ、Lさんっ」

 

意識が・・

 

柵越しに意識を失ったLさんの身体は

私の両手だけで支えていた。

 

「Lさん、起きて、しっかりしてっっ」

 

胸が柵にギリギリと押し当てられる。

 

腕が・・

 

 

「Lさんっっ、お願い、目を覚まして、

戻ろう。そばにいるから、Lさんっっ、

お願い、もう嫌なの

ここにいてっ、Lさんっ」

 

身体に力が入らない。

 

柵で圧迫されてるのもあって

腕がしびれ始めた。

 

 

嫌、

 

 

嫌だ、

 

こんなの

 

こんな別れ方

 

 

 

 

 

 

誰か、

 

 

誰か

 

 

 

 

 

 

 

 

ジウ様っっ

 

 

!?

 

 

 

誰が来たのか確認する前に

私の両サイドから

伸びた手がLさんの身体をつかんだ。