10月9日(金)【15:30】

 

Jiu >

 

 

初めての長期での海外同行。

時差で、確かに、いつもより

眠くなった気はしたけど、

 

イェリン先輩よりは大丈夫だった。

 

最初はホテルが同室ってだけで

気が重かったけど、渡米後の

イェリン先輩は、体調を戻す事に

精いっぱいで、私をいじめる

余裕はなかったらしく、

その分、初めて見るたくさんの

景色に素直に感動できた。

 

でも、ホントにすごいな。

 

バンタンの現場は

今までも見てきたけど、こんなに

間近で見続ける事はなかったから。


尊敬しかない。


どの時間でも、仕事に対する姿勢が

変わらない。表では疲れ1つ見せずに

スケジュールをこなす。

 

プロってホントにすごい。


その中に自分がいる事に

まだ足元がフワフワしていた。

 



後ろから聞こえた笑い声に

思わず振り向いてしまった。

 

テヒョンさんだ。

 

隣に座ったナムジュンさんと

何かを話しながら笑っていた。

 

大丈夫なのかな・・


ここでの仕事が始まってから

なんとなく、テヒョンさんが

元気がないように見えたけど、

気づけば、いつも、

メンバーの誰かが隣にいて

テヒョンさんも笑っていた。

 

「ここ、いい?」

 

 

「は、はい、すみません」


しまった。

ボーっとしてた。


鏡の前に座ったのはホビさんだった。

 

今まであまり、

携わってなかったのもあって

力が入ったのか声が上手く出なかった。

 

「し、失礼します」

 

アルコールをふきつけた手を

もみこみながら

パッティングの準備に入る。

 

「・・ね、ちょっと、聞いていい?」

 

「・・はい?」

 

コットンを肌にのせようとした時だった。

 

ニコっと笑ったホビさんが

 

「誕生日、いつ?」

 

・・・・。

 

「誕生日・・ですか?」

 

「うん」

 

聞かれたから

 

「10月11日です」

 

私の答えに、

おっと驚いたような声をあげた。

 

「2日後じゃん、ん?あっちではズレるか。

まあ、いいや、2回お祝いできるしね。

おめでとう」

 

ここでもらえる言葉だと

思ってなかったから

すぐに返事ができなかった。

 

 

「あ、・・え、と・・

ありがとうございます」

 

私の言葉に、またニコッと笑って、

 

「ジミニと近いんだね」

 

あ、

 

ジミンさんの名前が出ただけなのに

なぜか、力が抜けた。

 

「はい、同じてんびん座になります」

 

「あぁ、そうか、そうだね。

星座は、そうなるもんね」

 

星座は?

 

「花言葉って、それぞれの

誕生日にあるって知ってる?」

 

今度は、急に花言葉・・

 

「誕生花の事ですか?」

 

「うん、自分の誕生花って知ってる?」

 

「・・誕生花までは」

 

オンニも言ってなかったしな

 

「10月11日はね・・えーっと・・

ちょっと、待ってよ。んーとね」

 

パッティング中だったから

顔を下げないように

自分の手を目の高さまで上げてくれた

ホビさんの細くてキレイな指が順に曲がる。



何、数えてるんだろ。

 

「あ、思い出した。“ミソハギ”だ」

 

「ミソハギ・・」

 

全然、画が思い浮かばない。


・・あとで調べよう

 

「花言葉はね・・んーーーーー、

あ~、・・ジミニのユキヤナギが

・・」

 

なぜか、笑いをこらえるように

手で口を押えた。

 

 

 

 

「あ、思い出した」

 

今度は、口の端を上げて笑った。

 

「なんですか?」

 

「“純愛・愛の悲しみ”だよ」

 

・・愛の悲しみ

 

 

「お互い、頑張ろうね」

 

・・

 

励まされたから

 

「はい」

 

とりあえず返事をした。

 

笑顔でうなずいたホビさんは

 

また

 

「ユキヤナギ・・」

 

と言って、次は我慢できなかったのか

身体を倒して笑いだした。

 

 

 

・・・・どうしよ

 

肌を離れたコットンを持ったまま

とりあえず待つ事にした。



 

でも、あと2日か・・。

 

未来のスホから電話がかかってくる。

 

“誕生日、1番最初に話そう”

 

渡米の日、

スホから送られたカトクを思い出す。

 

1番最初に。

 

話せたら・・きっと・・。

 

 

 

無意識に笑ってしまっていたのか

 

「え?もしかして、君もユキヤナギ

・・わかる?」

 

楽しそうにホビさんが聞いてきた。

 

 

 

・・・なんのことだろ?