7月1日(水)【17:25】

 

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「・・こんにちは」

 

 

「いらっしゃいませ」

 

実家の美容室の扉は開くと

鈴が鳴る。

 

その鈴の音と一緒に

入ってきた女性は

 

グレーのタンクトップにジーンズ。

その上から、オーバーサイズの

白のシアーシャツにスニーカーを

合わせていた。

 

見えたアクセサリーは

小さなピアスぐらい。

 

 

この人が・・

 

「パク・リアン様」

 

ジョングクさんの好きな人。

 

年上の女性だとは聞いていたけど

 

ジョングクさんから預かった

 

白いジャケットと

優しいラベンダー色の

Vネックのドレスに

 

白い靴

 

写真はなかったから、

イメージ図までは

準備できなかったけど

 

きっと、

この色に似あう人が来ると思っていた。

 

でも、

 

胸元まである黒い髪。

二重の瞳は強い意思を感じるほど。

目鼻立ちはスッキリして

 

 

どちらかと言えば

“赤”が似合いそうな感じがした。

 

「え・・と、」

 

戸惑ったような声に

 

「あ、すみません、こちらにどうぞ」

 

あわてて奥に進んでもらった。

 

~・~・~・~

 

バックヤードから

ドレスに着替えた彼女が出てきた。

 

やっぱり、まだドレスとの

イメージが離れていたけど

 

「ドレス、すごく素敵です」

 

「あ、ありがとう」

 

真っ赤になったリアンさんは、

急に雰囲気が柔らかくなった。

 

ん~・・

 

「失礼します」

 

鏡の前に座った彼女に

ケープをつけながら

顔にかかる髪をクリップで留める。

 

「今日は、ドレスのイメージに

合わせてメイクをして

いきたいと思いますが、

ご希望はありますか?」

 

「私、メイクとか全然、

わからないので、おまかせします」

 

「いつも、あまりメイクはしないって

聞きましたけど」

 

「厨房に立つから、ホントに、

簡単に。ファンデとリップぐらい」

 

「スキンケアは」

 

「ん~、特には。

安い化粧水と乳液かな」

 

「それにしては肌がキレイです」

 

「ほんと?親友には、あまりに何も

しないから怒られるんだけど」

 

困ったように笑うリアンさん、

雰囲気が少しずつ変わってきた。

もう少し、様子を見てから

イメージを造った方が

いいかもしれない。

 

「私、ジョングクさんから、

お仕事がイタリアンのシェフだと

聞いてすごくうらやましかったです」

 

「どうして?」

 

「だって、ご自分で作れば

毎日、レストランの食事が

食べられるってことですよね」

 

私の言葉に、少し間が空いて

楽しそうに笑った。

 

「私、誰かの為には作るけど、

自分の為には作らないから」

 

「えっ、そんな、もったいないです」

 

「そう?」

 

「はい、だって、お客様の頭の中には

美味しいモノが、すぐ作れる

レシピがあって、後は、手を

動かすだけでしょう。

私なんて、頭の中にあるのは

ラーメンの作り方ぐらいですもん」

 

一瞬視線を落としたように見えたけど

また、楽しそうに笑った。

 

「私はラーメンが作れないの」

 

え?

 

「驚いた顔、彼、そっくりね」

 

 

 

 

やっぱり、似てるのかな・・