3月14日(木)【21:00】

 

Jiu 〉

 

・・・・。

 

「連絡、ありがとう」

 

「ううん、こっちこそ、

遅い時間に、ごめんね」

 

「そんな事、気にしなくていいよ」

 

・・・・。

 

オッパって呼ぶようになって

もう、4年が経った。

 

いつか、ヒョンブ*って

呼びたいと言ったのに。

 

 

「ジウヤ」

 

顔を見れないまま

 

握りこんでシワが寄った

スカートを見てた。

 




「・・オンニとは、もう、終わり?」

 

もう、オンニの傍にはいないの?

 

 

「・・ごめん」

 

「あの・・女の人は?」

 

「・・苦しかった時に

傍にいてくれた人で」

 

オンニもだよ

ずっと、オッパの傍にいたよ

 

「オンニには・・?」

 

「あの日、ジウヤと会って・・

伝えた。僕は・・もう、

ユイの隣には帰ってこれないって」

 

・・・。


私と会わなかったら、

ずっと、黙ったままだったの?

 

オンニは・・何も教えてくれない。

 

私には、なんでも話してって

言ったくせに。

 

次から次に湧きだす言葉が

早すぎて口に出せない。


「2人の事だから・・私が

何か言える事じゃないけど

・・言える事じゃないんだけど、

すごく・・」

 

ずっと、傍にいてくれると思ってた。

 

オッパは、離れないって。

 

「すごく・・淋しい・・よ」

 

泣かないように

頑張ろうって思ったのに

 

「ごめん、ジウヤ、ホントにごめん」

 

・・・・。

 

『ごめん』は、

もう、絶対、戻らないという事。


泣きたいのは、オンニだ。


私が泣いたって。


手の甲で頬をこすって

 

「オッパ、」

 

頭を下げていたオッパが

ゆっくり顔を上げた。

 

いつものように渡そうと思って

前から準備していた。

 

「今年は、1カ月も遅れたけど・・

バレンタインの」

 

テーブルの上に置いた青い紙袋の横に

 

「僕も」

 

並べられた赤い紙袋。

 

毎年、コスメを1つ買ってくれた。

 

『1つに詰め込みすぎた?』

 

そう言って笑いながら。

 

今年は・・2つ入ってた。

 

「・・ありがと、オッパ」

 

 

「ジウヤ」

 



「何?」

 

 

テーブルの上、手を組んだオッパが

大きく息をついた。



「きっと、このままユイは

黙ったままかもしれないから」

 

 

「僕が傍にいるからって・・

そう言ったから。ジウヤの

前でも笑っていられたんだと思う。

でも・・僕もいなくなるから・・

勝手な事言ってるとは思うけど

ジウヤには・・知っててほしい」

 

 

「・・何?」

 

 




「ユイが・・僕の前でだけ

泣いた理由を」

 

 

・・・・。

 

オンニが“泣き虫”だと言ったオッパ。

 

ずっと一緒だった私が知らない

オンニを知っていた。

 

理由・・

 

 

 

~・~・~・~

 

 

 

RRRRRRR

 

 

『なんだよ』

 

 

「何、してんのかなって思って」

 

『・・勉強。土曜日がテストだから』

 

「・・そっか」

 

 

 

『・・なんかあったのか?』

 

「あのね、初めてメイクした

お客さんが、わざわざお礼に来てくれて、

院長にも褒められたんだ。でも、誰にも

自慢できないから。スホヤに電話した」

 

『・・よかったな』

 

「うん、よかった」

 

『それだけ?』

 

「それだけ、おやすみ~」

 

『・・あぁ』

 

 

 

スホとも話したし・・

帰ろう。

 

帰ろう・・

 

 

イヤホンを耳に当てる。

 

 

耳元で聞こえたバンタンの声に

深呼吸する。

 

見上げた空は

 

キレイな三日月・・。

 

 

オンニなんて









大嫌いだ。

 

みんな、みんな

 

 

 

大嫌い。