7月24日(水)【14:30】

 

Jiu 〉

 

 

「・・ヤ、ジウヤ」

 

・・・

 

身体が勝手に横に揺れた。

 

・・ん・・

 

・・・ん?

 

 

ここ・・

 

「まったく」

 

タメ息まじりの声は・・

 

「オンニ・・」

 

 

 

あ・・・・。

 

「頬っぺた、真っ赤じゃない。

どれだけ寝てたの?」

 

思わず右頬に手を当てた。

 

 

 

「だって・・」

 

自慢じゃないけど、私は、

ゲームの時以外は、

どこでも、すぐに眠れる。

 

もう、自慢しようかな。

みんな、すごいって

言ってくれるし・・。

 

寝ようと思わなくても眠れるのに

目の前に並ぶ数式は、

一瞬で、瞼を閉じさせたから

 

手元の問題集は・・

 

最初のページのままだった。

 

 

「珍しく、図書館に行くって

言ったから来たのに」

 

「・・だって」

 

オンニと一緒に来たけど、

隣同士の席は空いてなくて、

離れて座っていた。

 

「寝る人の為に、ここは

使えないから、帰るわよ」

 

「オンニは、いいの?勉強」

 

「別に私は、家でもできるから」

 

・・・・そだね。

 

家じゃ、ゲームや、マンガで

気が散るから、図書館に来たけど

 

・・図書館では寝てしまう。

 

 

 

どこで、勉強したらいいんだろう

 

「ジウヤ、帰り、新しいカフェで

お茶しない?おごってあげる」

 

ホント!?

 

静かな館内では、よく響いた。

 

 

 

一瞬で集めた視線を連れて

急いで図書室を出ると

後ろからオンニが楽しそうに

笑いながらついてきた。

 

 

もぅ、

 

「・・オンニ、笑いすぎだよ」

 

「だって・・ジウヤの片付ける

スピードが・・あ~、おなか痛い。

・・ごめんって。もう笑わないから」

 

そう言いながら、

私の肩に手をかけて

 

「よしっ、行こう」

 

太陽みたいに笑うオンニに

つられるように

突き出ていた口元は緩んで

 

「うんっっ」

 

いつのまにか

2人で駆け出していた。

 

 

~・~・~・~

 

 

「おいしい?」

 

「うんっっ、すっごく

おいしい。しあわせ」

 

 

フワフワのワッフルに

たっぷりのクリームと

フルーツにシロップ。

 

幸せにならない方がおかしい。

 

私の言葉に、オンニが

また嬉しそうに笑う。

 

「オンニのいつもと一緒?」

 

「うん、キャラメルマキアート」

 

「私も今度、それにしよう」

 

「ジウヤはコーヒー牛乳の方が

似合ってる」

 

むぅ

 

「うそうそ、いちいち、

可愛いなぁ」

 

軽く私の右頬を

つねるような仕草をする。

 

可愛くはない・・

 

可愛いのは、オンニの方

 

・・・ホントに

 

なんで、こんなに姉妹で

違うんだろう。

 

「何?」

 

「んーー、なんで、私は、オンニに

似てないんだろうなぁって思って」

 

「え?」

 

 

 

 

思ったより、驚いた表情に見えたけど、

すぐにいつもの笑顔に戻った。

 

「私は、ジウヤの方が

うらやましいけど」

 

・・・

 

「すごい顔になってるわよ」

 

「だって」

 

オンニに羨ましがられる所が

1つも思い浮かばない。

 

「ジウヤは、素直でまっすぐで、

嘘をつかない。そんな

ジウヤの言葉は、すごく力を持つの。

ジウヤが頑張れって言ってくれたら、

頑張れる。大好きだよって

言ってくれたらすごく嬉しい。

だって、ホントに、そう思って

くれてるんだろうから」

 

・・・・。

 

「ん~・・あんまり、

よくわかんない」

 

言葉も何も。

私は、自分の気持ちですら

上手に話せないのに。

 

「ジウヤのいいとこは、私だけが

知ってればいいの。あ~、

そう考えたら、いつかジウヤが

彼氏とか連れてきたら・・もう、

私、ずっと、質問してそう。

見極める為に」

 

!?

 

「か、彼氏とか・・」

 

そんな、マンガやドラマの世界、

 

「あっ、今日、水曜だった」

 

先月から始まったドラマ

 

「あ~、イ・ジョンソクの?」

 

「うんうん、今日と明日」

 

「私、相手がイ・ボヨンって

言うのがいまいち

ピンとこないのよね~」

 

「え~、おもしろいよ。

ってゆーか、イ・ジョンソク

すっごくかっこいいし、

あんなすごい能力持ってるし」

 

「あれは、ドラマの話」

 

「でもさ、もし、あんな能力が

あったら、便利だろうなぁ」

 

目を見ただけで、

相手の考えがわかるなんて。

 

そしたら、言葉、考えて話す事も

ないだろうし、

・・おかしな事、言わなくてすむし。

 

私が話すと、

なぜか、みんなが笑った。

 

別におかしい事、言ってる

つもりはないんだけど・・

 

まぁ、

おかしい事、言ってるから

みんな笑うんだろうけど・・。

 

 

「でも、それだったら、

ジウヤは、相手の目を

見る練習しなくちゃね」

 

・・・あ

 

「ジウヤは今のままでいいよ。

そんな能力持ったら、逆に

誰とも話せなくなるよ」

 

ん~・・そうかなぁ・・

 

まあ、オンニがそう言うなら、

 

そっか。