あなたがいることで

 

6月21日(水)【20:02】

 

あーーーー

 

ないわぁぁぁ

 

マジで

 

あのクソばばぁ・・・

 

いや~

 

びっくり、

 

なんで、あんな奴が“社会人”なの?

 

小学生か・・

 

ババぁのランドセル・・

 

きっしょっっ

 

あ~

 

マジでない・・

 

しんど。

 

・・明日、休みでよかった。

 

 

~・~・~・~

 

ん?

 

 

なんで?

 

カギ開いて・・

 

!?っっっっ

 

わ、忘れてた・・・。

 

今日、帰って来るんだった・・

 

怒りからの諦めからの

安堵からの

 

・・・冷や汗

 

見えた靴は、

きちんと揃えられていた。

 

なんなら、その辺に

履き散らかしていた靴達も

おりこうさんに並んでいた。

 

「おかえり」

 

!!

 

やば

 

目、

 

「あっ、た、ただいまぁ、

早かったね」

 

早かったも何も

 

「みすず“さん”」

 

“さん”

 

「ん?」

 

「“とりあえず”シャワー

あびておいで」

 

“とりあえず”

 

 

「はぁ・・い」

 

 

ヤバい、完全に忘れてた。

あのクソババぁのせいで

この数カ月、過剰なストレスが

かかっていた頭は、あろう事か

愛しの旦那様が帰って来る日を

忘れてしまっていた。

 

いや、忘れるだけならまだいい。

 

うちは、旦那様あっての家。

彼が長期出張で家を空けると、

途端に家が崩壊する。

 

1度、出張が予定より早いタイミングで

終わって帰宅した旦那様と・・

悲惨な家の状態の中、大ゲンカした。

 

・・・

 

あの時、

なんて言い返したんだっけ?

 

あ、そうだ、

 

干物女だけど、それでもいいかって

ちゃんと聞いたのに

それでもいいって言ったのは、

あっちだったから

・・とかなんとか。

 

まあ、でも、それからは、

彼が帰宅する前日には

掃除するようにした。

 

 

有休使って。

 

なのに・・

 

カレンダーに〇してたのに

〇どころか♡も

いっぱい書いてたのに

 

冷蔵庫にも書いて

貼ってたのに・・

 

あーーー、

怒ってんだろーな。

 

彼が“さん”付けで私を呼ぶ時は、

何かしら引っかかってる時。

 

・・・・やだー、せっかくの

ラブラブデイだったのに

 

・・・・・

 

って、ずっとシャワー

浴びてる訳にもいかないし

 

 

 

 

そういえば・・・

 

また、タメ息が出た。

 

 

 

 

 

パジャマに着替えて

ダイニングに行くと

 

「ゴハンできてるよ」

 

・・・・。

 

「あ・・りがと。ごめんね。

帰ってきたばっかりなのに

疲れたでしょ」

 

・・・目

 

いや、好きだよ。

どんな顔でも好き。

こんなハンサム、

どこ探してもいないし

なぜ私の旦那様なのか、

 

未だに詐欺なんじゃないか

って思うぐらい。

 

どんな顔も、すっごくキレイで

大好きなんだけど・・

 

・・・こわ

 

「ビールは?」

 

「・・も、もらおっかな。

ジンも一緒に飲む?」

 

「話が終わったら」

 

わーーーーーーーーーーーーー

 

こわい、こわい、こわい

 

 

・・・しょーがない。

今回は、完全に私が悪かった。

 

平謝りだ。

 

「OK、わかった。先に話そう」

 

綺麗に片付いたリビング。

これまた、久しぶりに

洗濯物が乗ってない

ソファに彼と座った。

 

「ごめんなさい」

 

身体毎、彼に向き直って

頭を下げた。

 

 

「・・・何が?」

 

何が・・って

 

「その、・・ジンが帰って来る前に

家、キレイに出来てなくて・・

嫌な気持ちにさせて」

 

「あぁ・・・そうだな。

疲れが倍増した」

 

・・・・・。

 

「ごめん」

 

 

 

 

「・・言っとくけど、俺が

怒ってるのそこじゃないから」

 

「・・え?」

 

手元からの視線を上げると

こっちは見てなかったけど

聞こえた声は、優しかった。

 

「俺が帰って来る日に印は

ついてたし、冷蔵庫にも大きく書いて

・・大事にしてる酒の瓶にも

棚にもホコリはなかった。

毎日、拭いてくれてたんだろ。

昔、ケンカした時は、それも

なかったから、すぐわかったよ。

毎日、俺の事考えて、帰りを

楽しみに待っていてくれた事は

・・ちゃんと、わかってる」

 

・・・・・。

 

「でも、それ以外はめちゃくちゃで」

 

いや・・それは、

いつもの事・・だけど。

 

「自分を大事に出来ないほど、

嫌な事があったんじゃないか?

それを・・聞けなかったのが

嫌だったんだ。あれだけ、電話

してたのに、“大丈夫”って・・

あれ、いつから嘘だったんだ?」

 

・・・・・。

 

 

 

 

「・・・職場のクソばばぁが」

 

「言い方」

 

・・・・。

 

「職場の・・ランドセル背負ったら、

気持ち悪いおばあ様が」

 

「・・が?」

 

「全然、仕事・・しないのに、

変な噂流し出して。私の悪口とか

しかも、社内メール使ったり、

・・バッカじゃないって、いい歳して、

そんな暇あるなら、1個でも仕事終わらせ

ればいいじゃん。お金もらえるのは、

やるべき事をちゃんとするからでしょ。

なのに・・でも、あの人がしない分

こっちに回って来て。あっちは定時で

帰えるのに私は残業で。なんで、私が

フォローしないといけないの・・・もう

・・マジで・・死んでしまえ」

 

「言い方」

 

「お亡くなりになる事を希望します」

 

「なんだ、それ」

 

「・・こんなのジンに言っても、

疲れてるのに愚痴とか・・それに

・・会える訳じゃないし」

 

彼が怒っていない事は、

よくわかった。

 

ゆっくり抱きしめてくれたから。

 

「じゃあ、これから会えるなら

言ってくれるのか」

 

「・・言わない」

 

「なんでだよ」

 

「私、愚痴ったら口が悪くなるから」

 

なぜか、楽しそうに笑った。

 

「その時は、俺が訂正する」

 

・・・・。

 

「でも、悪口って聞いたら

しんどくなるんだよ。言う方は

楽になるけど」

 

「お前を楽にするのが俺の仕事だ」

 

ほんとに

 

 

 

 

「・・・なんで私なの?」

 

「何が?」

 

「ジンに優しくされる度、

不思議になる。なんで、

こんな完璧な人が、

私と結婚したんだろうって」

 

「あ~・・」

 

 

身体を離した彼は

 

「みすずの前では、頑張って

“完璧”を目指す必要がなかったから。

俺だって、ダメなとこはあるし、

それを見せたくなくて今まで

無理してたとこもある。でも、

お前は、いつも褒めてくれた。

俺が、ダメだと思ってたとこも、

すごい笑顔で褒めてくれた。

だから・・離れたくないって

思ったんだ。まあ、付き合うように

なって、みすずのズボラさに多少、

驚いたとこはあったけど、

俺は、別に家事をする事は

苦にならないし、そんな事より

キツイ事も教えてもらえないとか・・

ちょっと、凹んだ」

 

・・・・・。

 

耳・・真っ赤だ。

 

けど

 

それもぼやけてきた・・。

 

スッピンで泣くとか、

たぶん

そーとーブサイクだから、

抱き着いた。

 

「今度からは、ちゃんと教えて。

みすずの声が聞きたいだけなんだから」

 

頷く事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・ところで」

 

鼻をすすって、返事をしたら

 

「今、パンツ穿いてる?」

 

 

・・・・あ

 

「な、なんで?」

 

「とりあえず、洗濯したけど、

ソファ下に6枚ぐらいあったぞ」

 

 

 

 

「ソファ下!?」

 

そう、昨日からパンツが

全部行方不明という

難事件が発生していた。

 

しょうがないから、

今日はガードル穿いて出勤して

 

帰りにパンツ買って帰って来たけど・・

 

バッグ置いてシャワーに行ったから

パンツ持って行ってなかったし、

まさか、見つかっていたとは

思わないから脱衣室のチェストも

見なかった。

 

とゆーわけで

 

必然的に

 

 

 

ノーパン

 

「で・・穿いてるの?」

 

・・・・おっと・・

 

「えーっ・・と」

 

旦那様にスイッチが入ったのが

わかった。

 

目、・・・見れない

 

 

「別にいいよ。見ればわかるから」

 

のわっっ

 

 

彼の手がパジャマのズボンにかかって

 

「・・・なんで?」

 

がっつり、つかんでしまった。

 

「い、いやぁ~・・なんか、ちょっと

久しぶりすぎて・・心の準備が・・

うわっ」

 

ソファの上に押し倒した私の上で

自分のTシャツに手をかける。

 

「会える日、数えてたの

みすずだけじゃないからね」

 

ぬ、脱ぐの・・

 

旦那様とは言え、

目のやり場に困る程

綺麗な身体をしている。

 

ストレスで暴飲暴食した日々を

激しく後悔した。

 

「あ~・・ジン、先に

ゴハン食べよう。せっかく

作ってくれたんでしょ」

 

「嫌だ」

 

いや・・って

 

「じ、じゃあ、寝室で」

 

「無理」

 

む、無理とは・・

 

 

 

「・・みすず、手、どけて」

 

・・・・。

 

「無理、恥ずかしすぎる」

 

とりあえず、これ以上、

赤くなった顔は見られたくなくて

両手で覆った。

 

「・・いいよ、じゃあ、

ずっと、そうしてて。

あ~・・みすずと

キスしたかったけど」

 

・・・・くっ

 

それは、私もしたい・・・。

 

 

 

 

 

 

~・~・~・~

 

いや~・・

 

マジで

 

 

どんだけ完璧なんだ

 

 

 

開始早々3分で私のスイッチを

入れた旦那様は、これ以上ない

くらいニコニコしていた。

 

・・可愛いなぁ

 

思わず、頭を撫でると

目を閉じて、微笑む。

 

・・・めちゃくちゃ、可愛い。

 

もう、詐欺でもいいや。

 

「次の出張はいつ?」

 

今までの間隔でいったら

もう来月には・・

 

 

 

 

 

「あ~・・ない」

 

 

 

 

 

 

「ない!?」

 

 

 

「ない。本社の管理部に

配属が決まった」

 

「昇進・・って事?」

 

「そう、給料も上がった上

毎日、家に帰って来る」

 

毎日・・

 

「や、休みとか合わせたら・・

デートとか」

 

また、楽しそうに笑った。

 

「当たり前だろ」

 

「じゃ、誕生日もクリスマスも

お正月もバレンタインデーも

・・一緒にいれるって事」

 

やばい、また泣けてきた。

 

今まで彼とイベントを

過ごせたのなんて数える程で

 

 

「ホワイトデーも。

・・今までの分、取り戻そう」

 

彼の大きな手が私の頬をなぞる。

 

「・・エイブリールフールも

1番先に嘘つける」

 

また笑った彼が、

ぎゅっと抱きしめてきた。

 

「ほんとに、みすずの傍が

一番楽しい。・・頼むから

俺から離れるなよ」

 

「・・離れる訳ないじゃん。

ずっと、一緒にいるよ。

年とっても、仲良しでいようね」

 

大好きだよ、ジン

 

 

「年・・あ~・・そうだった。

みすずさんは俺より年上でしたね。

誕生日、おめでとうございます」

 

 

 

 

・・・・・。

 

時計、壊しとくの忘れてた。

 

 

Fin.

 

JINちゃまとの歌↓ 

ポカリ飲んでから泣いてください

 

 

人生100年

今日から折り返し

悪い事は、全て自分のせいだと言う

あなたの残りの50年は

最後の最後に

「けっこういい人生だった」と

言える為の時間になりますように。

 

いや、ご自分の力で

そういう時間にしていってくだい。

もう、いい大人なんだから。

 

チマチョゴリ、脱ぎ捨てないで

ちゃんと片付けて。

 

誕生日、おめでとう