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2007年 夏
それは、ある日突然だった。
韓国に単身赴任中の夫からの電話。
「え!?うち?」
『うん、夏休みの間の3週間だけ』
だけって・・
『俺も、途中で帰って来れるし、
な?』
「なっ、て言われても。3人でも
手一杯なのに、動画送ったでしょ」
『見た・・まゆちゃんは、
本当に偉いと思う』
だったら、なんで増やすのよ
!?
「・・・って、その話、もう
受けたんじゃないでしょうね」
『・・・・・』
・・・・・。
『・・・・・』
「もぅぅぅぅぅぅぅぅ、
どーして、そーゆー、」
『いや、なんか、話の流れが、
さーっと・・いや、ホントに
止められなくて・・ちょっと、
奥さん、韓国語話せるんだよって
言っただけだったんだけど・・なぁ』
なにが・・
「なにが“なぁ”よ、もう、
ホントに信じらんない」
『・・ですよね、はい、お怒りは
ごもっともで。弁解の余地は
ありません。・・でも、取引先が
微妙にからんでて・・あっ、それに、
ほら、陸達にもいい経験になると
思うし、海外交流とか、そんな
機会早々ないし』
「嫌です」
『そこをなんとか。な、頼むよ~。
俺を助けると思って』
「私は、誰が助けて
くれるのよっっ」
『もちろん、俺が助ける。
その子が行って、5日したら、
帰れるから。もう、その後は、
俺が全部引き受けるから』
「・・・・・」
『あっ、まゆちゃんが欲しいって
言ってたバッグ、あれ買おう』
・・・・・。
『それから・・あっ、出かけて
いいぞ。ほら、友達と遊びに
行きたいって言ってたろ』
!?
休みとれないから、ダメって
『まゆちゃん、頑張ってくれるんだし、
その日は、俺が休みを取って子供達
みとくから。もう、丸1日、
遊んできていいぞ。
俺のカードも使っていい』
カード・・
「・・・・・・ほんとに?」
『も、もちろん、無理
言ってるのは、こっちなんだから。
・・まゆちゃんが受けて
くれるならの話だけど・・』
・・・・・。
『交渉・・成立?』
「・・わかった」
『いや~ホントに・・俺は、
まゆちゃんと結婚できて
宇宙一の幸せ者だ。こんなに
いい奥さんもらえるって、
俺、よっぽど前世で徳
積んだんだろうな』
「はいはい、わかったから
・・その子名前は?」
『あっ、ちょっと待てよ・・
え~っと、パク・ジミン君
12歳。少し、話したけど
礼儀正しくて優しそうな子
だったぞ。日本に行く事
言ったら、すごく喜んでな』
「・・・その子にまで話してたの」
『あ~・・まあ・・でも、
ほら、・・な』
まったく
「・・わかった。好きな食べ物とか
色々聞いてて。こっちも準備するから。
いつから来る事になりそうなの?」
『・・来週』
ら
『明日、昼までには、
詳細なレポートを送るから。
愛してるぞ。じゃあなぁ』
・・・・・。
こーなったら
あの靴と・・財布も買ってやる