12月23日(水)【21:00】

 

 

結局、3人で集まる事にした。

本当はソヒョンオンニも

誘いたかったけど

クリスマスで忙しい中

今日は“予約”も入っていた。

 

 

それにしても・・

 

時間が過ぎる度に

言葉はどんどん野放しで

歩き回りはじめた。

 

本当の事を

知ろうともしないで

ちょっと、

目についた流行りの

情報にのっかって

知ったかぶりで笑いながら

傷つける。

なにかの遊びみたいに。

 

今までの中傷に加えて、

Sakuraに重なったVの影。

 

Vの「彼女」として

「攻撃対象」になった。

 

「的」になる。

モノじゃないのに。

向けられる言葉が、

研がれれば

研がれるほど

深く刺さって、

血が流れるのに。

痛くて、苦しくて

立っていられないのに。

 

でも、

 

それでも、

 

傍にいたい。

 

それを願うのは

そんなに悪い事なのかな

 

こんなに

否定される事なのかな

 

見なきゃいいのに

溢れかえる刃の中に

誰かが味方してくれないか

探してしまっていた。

 

だから、余計に

みんなで集まりたかった。

 

 

 

 

 

 

 

「え!?リアンオンニ

高校中退で留学したの?」

 

「うん、どうしても料理の道に

行きたくて必死で英語勉強して、

親、説得して」

 

すご・・

 

そんな風に夢を追えるなんて

 

「ユジョンちゃんは?なりたいもの

とかなかったの?」

 

「あ~・・まあ・・ない事は

なかったけど、頭悪かったし」

 

「何?なんになりたかったの?」

 

「ん~・・先生」

 

「先生かぁ、ユジョンちゃんなら、

いい先生になれただろうな」

 

「そう・・かな」

 

「誰1人、置いてけぼりには

しなさそうだし。みんなを

笑顔にできる力があるし」

 

・・・・。

 

「置いてけぼりは・・淋しいしね」

 

「え?」

 

「ん?ううん、スズオンニは?

仕事、何してるの?」

 

この間は聞いてなかった。

 

あ~っと声を出したスズオンニ。

 

「少しだけ」と言って

飲み始めた焼酎のせいで

顔の赤みが増してきていた。

 

 

「今・・(何も)その・・

(昔)ん~」

 

ん~・・

 

目を閉じて息を止める、

 

これは、この間一緒にいた時に

わかった仕草。

一生懸命、韓国語を探してる。

 

息を吐いて、拗ねたように

翻訳機を持つ。

 

ユンギさんの隣に立つ為に

しっかり覚えたいって言ってた。

 

有名人と付き合うだけでも

たくさんの壁に囲まれて

“普通”の事は出来なくなる。

 

スズオンニは、それに

言葉の壁まであるのに

 

でも、それを越えたい程の

想いがある。

 

強いんだなぁ。

 

 

 

『音楽の先生と

介護の仕事をしていました』

 

へぇ~

 

「じゃあ、また、

同じ仕事するの?」

 

私の質問に

キュっと、口を結んで

首を振って零れた言葉は

 

「私、目が見えないの」

 

ちゃんと韓国語だった。

 

 

 

え?

 

 

私と1日、

リアンオンニとも1日

それぞれ過ごしたけど

全然、そんな風には見えなかった。

リアンオンニも驚いてる。

 

「あっ、今は、大丈夫よ、

見えてる。ただ、・・」

 

タメ息をついて翻訳機を通した。

 

『進行性の目の病気があって、

将来見えなくなる可能性が

あります、今は、右側が

少し視野が狭いです)』

 

視野・・

 

未来・・

 

「・・怖くない?」

 

思わず聞いてしまった。

 

私の言葉に

「怖い」とすぐに返答した

スズオンニは笑って続けた。

 

「でも・・大丈夫。

あ~・・私の・・傍には

家族、友達、ユンギがいる。

and、イチカさん、and」

 

「イ・ユジョン氏」

 

「パク・リアン氏」

 

笑顔で名前を呼びながら

私達を交互に見て

 

また目を閉じて息を止めて

 

案の上

タメ息をついた。

 

『それに、未来が怖いのは

みんな同じです』

 

翻訳機からの声は

不思議と優しい温度を持った。

 

・・うん

 

そうだね。独りじゃない。

 

オンニが強いのは

怖いって認めてるから。

だから、今を大切にできる。

 

未来を怖がるのは

私だけじゃない。

 

顔が見えない誰かの声を

探さなくても、

私の周りには、

たくさんの過去をつれて

それでも、自分の足で歩いて、

今、笑って過ごす

心強いオンニ達がいる。

 

“彼女版BTS”

 

だったら、

 

負けないくらい支え合わないと。

 

「不思議だよね、守ってくれる人が

いる事に気づいて、守りたい人が

できたら、すごく、強くなれる」

 

リアンオンニの言葉に

2人で頷く。

 

「やっぱり、2人は会わせたい。

自分だってそうなんだけど、

やっぱり、普通の恋愛じゃないから。

それでも、踏み切れたのは、

それだけの気持ちが

あったって事だから。

それなのに、周りの声で

別れるとか。好きなのに・・

別れるとかそういうのは

選んでほしくない・・よね」

 

 

「うん、私もそう思う」

 

自信満々の韓国語で返事をした

スズオンニに思わず笑ってしまった。

 

 

「・・リアンオンニ?」

 

「ん?あぁ、・・そうね。

私も、そう・・思う。

好きなのに、別れるのって

・・辛いよね」

 

・・・・・・。

 

 

なんだろ、やっぱり、なんか

 

「そ、そういえば、

ユジョンちゃんのお父さん、

イ・サンウさんだったのね。

この間、聞いた時、

なんとなく聞き覚えがあって。

思い出したの」

 

急に話始めたリアンオンニ。

 

違和感があったけど・・

 

「何を?」

 

「あの大学病院の隠ぺい事件を

書いたのよね」

 

隠ぺい事件・・

 

「ん~・・私、あんまり

知らないんだ。アッパが書いたの

スホがお前が読んだって

わかんないって言うし・・

 

実際、ちょっと

よくわかんない事が

多かったけど・・。

 

でも、その記事の事は

初めて聞いたな。

 

「あぁ、まあ、そうだよね。

私が15歳の時だったし。

でも、当時すごく

センセーショナルで。

確か、医療過誤の事だったんだけど

それを生み出したのは、病院の

責任だっていって・・そう、

その時、手術を担当してた医師が

自殺したのもあって」

 

「え!?自殺?」

 

「ん、記事とどっちが

先だったかな、たぶん、

先に自殺の件があって

記事が出たと思うんだけど・・」

 

自殺・・

 

自殺・・か

 

 

 

 

 

 

 

“・・ジョンア”

 

 

 

 

 

 

・・・・・。

 

 

 

 

なに・・今の

 

誰かの声が

 

「ユジョンちゃん?」

 

!?

 

スズオンニの声に

慌てて言葉を繋いだ。

 

「ね、オンニ、ジョングク君の

どんなとこが好き?」

 

「え?」

 

なんだろ、

なんか、ザワザワする。

別の話がしたかった。

 

 

「だって、こういうのって、

なかなか聞けないじゃん。

ね?どこが好き?

2人でいる時って、

どっちが甘えるの?」

 

オンニは、

お酒は飲んでないのに

 

・・・顔、真っ赤

 

 

よし、

「OK、これ、3人、全員話そう。

他の2人からの質問には

絶対答える。ん~・・あっ、

夜の話はナシで」

 

私の提案に、年上2人は、

思いっきりムセ始めた。

 

でも、

 

ジョングク君の話をする

リアンオンニは

とても幸せそうに笑って・・。

 

私の心臓も少しずつ

元の早さに戻った。

 

 

なんだったんだろ、

さっきの・・。

 

 

 

 

 

 

 

それから、

「彼女会」の話は盛り上がって

明日は、絶対に決行すると

言い切ったスズオンニの手が

焼酎の瓶を探し始めたのを

合図にお開きになった。