【19:21】

 

 

 

・・・・・。

 

目の前で大きく息をついたオッパに

なぜか軽く頷いてしまった。

 

昨日のソヒョンオンニの話、迷ったけど、

ホビさんとの事でもあるし・・

オッパに話す事にした。

 

誰にも言わないで・・

とは言われなかったし

なんなら、オッパからホビさんに

 

「・・どう思う?」

 

「んーーー・・思ってたより・・」

 

 

やっぱり

「・・なかなかの重さだよね。」

 

「・・・だな。」

 

 

 

 

向かい合って座るダイニングテーブル。

同じタイミングで

タメ息をついてしまった。

 

 

 

「・・ねぇ、オッパからホビさんに

話せない?オンニは、・・ただ、

もう、過去の事として

話しただけだったはずなんだ。」

 

「んーーーーーーーー」

 

腕組みをして目を閉じたまま

見上げた天井から視線を戻して。

 

「・・・・無理だな」

 

「なんで?オッパからだったら

ホビさんも」

 

「誰から聞いたって話になるだろ」

 

 

 

 

・・・それもそうだ。

 

「でも・・これで

別れちゃったりとか・・」

 

「・・こればっかりは、

2人が考える事だからな」

 

「えぇぇ、そこは、

“大丈夫、2人は別れない”でしょ」

 

「それで別れたら、

“オッパの嘘つき”になるだろ」

 

・・・・確かに。

 

「えぇぇぇ、でも、やだぁ・・

2人が別れるとか」

 

「俺も嫌だけど。それは・・

しょうがないよ。どっちにしても、

2人とも自分の道が決まっていて、

その未来にもかかってくる事だから。

しっかり考えるべきだと思う。

・・無責任な事は言えないよ。

あいつが話してきたら

聞くぐらいしかできないと思う。」

 

・・・正論。

 

「・・・そう、だよね。

・・それは・・わかってるんだけど」

 

 

わかってるけど・・

 

 

 

 

 

 

目の前に伸びてきた大きな手

 

辿った顔は優しく微笑んでいた。

 

「何?」

 

「手、」

 

「手が何?」

 

「かして」

 

「・・嫌だ」

 

「・・お願いします」

 

思わず笑ってしまった。

 

BTSのリーダーに

お願いされては・・・。

 

重ねた手は、すっぽり包まれた。

 

その手を見ながら

オッパが言葉を置いていく。

 

「前も言ったけど、俺はユジョンアの

いない未来は創らない」

 

・・・・。

 

「だから、この手が離れる時は、

俺が振られる時だから。」

 

「・・そんなの、」

 

わかんないよ。そんな未来・・。

 

「うまくいかない事が続くと

たまに、時間を戻したくなる。

でも、1番戻りたいのは、

ユジョンアに“リセット”って言った日。」

 

・・え?

 

 

 

 

「あの日に戻って、絶対に

その言葉を言うなって、

過去の俺を説得する。色々、屁理屈

言ってきたら、気絶させて、

草むらに隠して、俺が代わる。」

 

・・・・・何の話?

 

「“リセット”は間違いだった。

絶対に言っちゃいけない言葉で

手を離したのは大間違いだった。

・・だから、もう、絶対離さない。」

 

・・・・。

 

「“リセット”って言えないなら・・

おまじない、かけれなくなるじゃん」

 

「・・それは・・いい“リセット”だから、

言ってもいい事にする」

 

ラインどこ?

 

でも・・

 

「ありがと、そう、

・・思ってくれて嬉しい。」

 

 

大好きな手を握り返す。

 

不思議だ。

オッパの言葉は未来の事を

言ってるのに“嘘”が見えない。

 

・・オンマの時みたいに

“嘘”を感じない。

 

 

 

ふいによぎった、

ぼんやりとした画。

 

笑ってる2人。

 

 

これ、未来?

 

 

「よしっっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よし?

 

 

握られた手を引かれて

進めた足は・・

 

寝室に向かった。

 

 

 

 

 

 

カーテンが引かれた部屋は

それなりに暗くて

でも、お互いの表情を

隠すほどでもなくて

 

19:40

 

光るデジタル時計

 

ん~・・

 

「オッパ・・ちょっと早」

 

塞がれた唇は

 

 

・・ゴハンもビールも

読みかけの本も諦めさせた。

 

深くなるキスの合間

 

「オッパ・・おなか

・・すいてないの」

 

って、もう、ベッドの上だけど

 

「今日、ゴハン用意してたの?」

 

「・・・してない」

 

・・えくぼ

 

「じゃあ、終わったら・・

ラーメン食べよう」

 

終わったら・・

 

 

 

 

 

 

何時に?

 

「ユジョンア、」

 

「・・ん?」

 

私の唇以外に触れ始めた

オッパの唇が耳元に寄る。

 

「こんなにキレイな体、見た事ない」

 

・・・・。

 

 

 

 

 

 

「きれい・・じゃないよ」

 

思い出した画は痛みさえ連れてくる

ようだった。

 

なんで、そんな事、言うの?

なんで、今、

 

「キレイだよ。・・・おまえが、

そう思えるようになるまで、

俺が何度でも“上書き”してやる。

何度も、何度でも、繰り返して。

・・俺との事しか思い出せなくなるまで」

 

・・・・。

 

 

 

 

「・・何度も?」

 

「何度でも」

 

もう、耳元を降りたオッパの唇が

印を落とすように私の皮膚をすべる。

 

途切れだした息のせいか

甘くしびれ始めた身体。

 

どうしても閉じてしまう瞼の裏。

うかぶ画は、さっきより

はっきり見えた。

 

笑顔でオッパの隣に立つ私の身体は

・・きっとキレイになってる。

 

オッパが

 

 

 

私を戻してくれるから。

 

このまま、傍にいられたら。

傍にいてくれたら

 

私は戻れる。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆