・・・・。

 

 

いい加減、終わんねーの、この会話。

 

 

喋りながら、食べながら、

笑いながら、驚きながら

 

結果、

 

「今度、オンラインで一緒にやんない?」

 

「あっ、ぜひぜひ」

 

 

は?

 

「あっ、まってよ、俺のカトク」

 

「はい」

 

 

は?

 

 

普通にIDを交換して

 

 

 

「あと、アカウントなんだけど」

 

「あっ、私のはですね、

“J”、“i”、“u”、“r”、“u”です。

ジウル」

 

 

 

・・・・。

 

 

 

シホがようやく止まった。

スマホの画面を見たまま。

 

 

 

 

 

「も、1回、アカウント・・いい?」

 

声、震えてねーか?

 

 

「はい、Jiuruです。ジウル」

 

 

今度は、目を開いたまま

彼女を見続けてる。

 

 

「シホヤ・・」

 

さすがに俺も怖いぞ。

 

 

 

「あ、あの」

 

急に口調が・・

 

「俺・・いや、マジか・・えっと

・・ジウさんっっ」

 

「はい・・」

 

 

「あの・・俺、前、一緒に組んだ事

あって・・その時、めっちゃ強くて。

この人、上手いなって思って

・・フレンド・・申請したんですけど」

 

なんだ、フレンドって・・

なんで、敬語?

 

 

 

「えっ?・・あのアカウントは」

 

「“夜のリンゴ”です」

 

・・・久しぶりに面白い。

 

 

 

 

「夜の・・あっ、あぁ、わかります。

えっ?本当ですか!?」

 

シホの目がキラキラしだした。

まるでアイドルにでも会ったような

 

・・・。

 

 

 

「はいっっ。うわぁ、マジか・・

ジウさんだったなんて・・すげー。

あっ、そだ

 

急に洋服で手を拭きだした。

 

 

「握手、してください」

 

 

 

はっ?

 

 

差し出しされたシホの両手に

彼女の小さな手が

膝の上で迷っていた。

 

・・・・。

 

1度、グッと握りこまれた手が、

おそるおそるシホの手に向かう。

 

・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・お前、それはないだろう」

 

 

 

 

 

 

気付けば、右手で

彼女の両手を握っていた。

 

「す、スホヤ・・?」

 

 

 

 

 

 

「・・手は・・ダメだ」

 

 

俺、・・何、言ってんだ。

 

 

 

 

「・・おまえ・・友達なくすぞ」

 

 

・・・。

 

握った手を彼女の膝の上に戻す。

 

 

 

 

 

「お前がいなくなるのかよ」

 

 

 

 

俺の言葉に・・

 

また嬉しそうに笑った。

 

「・・俺は、ソウルメイトだから、

いなくなんねーよ」

 

 

単純なやつ。

 

 

「ん~・・よし、じゃあ、帰るから」

 

急だな。

 

「ジウさん・・」

 

「はい」

 

「こいつ、・・言葉、きついし、

わかりづらいし、融通きかないし、

素直じゃないし。

氷のような目で見てくるけど・・」

 

・・・ケンカうってんのか

 

 

 

 

「でも、優しすぎるぐらい優しいから、

・・嘘も嫌いだし。こいつの言葉、

間違ってないから。信じていいから」

 

・・・・。

 

 

 

 

「はい」

 

彼女が優しく返事をした。

 

「・・でも、やりかえしたい事あったら、

連絡ちょうだい。俺、けっこう

弱み握ってっから」

 

うそつけ。

 

「はい」

 

楽しそうに笑って返事をする。

 

 

「じゃあなぁ~、スホヤ。

あっ、今日は、お前がおごって。

たまには、連絡しろよ。

いくら、ソウルメイトでも、

スマホには勝てねーからな」

 

意味わかんねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソウルメイトか・・いいなぁ」

 

なぜか嬉しそうに呟いた彼女が、

こっちを見てきた。

 

「・・そんなんじゃねーよ。

もう、食ったんだろ、帰るぞ」

 

「スホヤ」

 

「何?」

 

「デザート」

 

 

・・・・。

 

 

「・・なんにすんだよ」

 

幸せそうに笑う彼女。

 

 

 

“彼氏”・・か。