☆
「・・ンア、ユジョンア」
「・・えっ、あっ、何?」
「・・ノート、見せて。」
いつのまにか、カウンターを挟んで
オッパが立っていた。
・・・。
私は、開いたノートをオッパに向ける。
その時、
「ただいまぁ」
店の裏口から声がした。
あっ、
「あら。ナムジュナ来てたの。
・・ん~?」
買い出しから帰ってきた叔母さんが
カウンターの上のノートをのぞき込む。
「何?ドアノブ?うそ、あっ、ホントだ。」
オッパが手に持っていたドアノブを見て
・・・爆笑していた。
なんで?
なんで2人が怒らないのか
全く理解できなかった。
叔母さんは笑いながら、
ちょっと片付けてくると裏に回った。
椅子に座ったオッパは、タメ息をつきながら
自分の両手を見続けている。
・・・。
「ユジョンア」
「・・何?」
「俺の手・・やっぱり、
なんかの電磁波が出てるのかも」
・・電磁波ってなんだ
「そんな話、聞いた事ないよ。」
「・・俺も。」
じゃあ、なんで言うのよ。
また、ため息をつく。
なんか・・私がいじめてるような
気持ちになってきた。
・・・。
「芸能人になって、お金が入ったら、
全部弁償してよ。」
ハルモニも叔母さんも許してるんだし・・
私が、そこまで怒らなくていいのかも
「・・・なれなかったら?」
?
なんだろ、いつものオッパと違う気がした。
「そんな事、私に言われたって」
「・・だよな。」
「なりたいなら、なればいいじゃん。」
「・・そんな簡単なもんじゃないんだよ。」
そんな事、知らん。
「じゃあ、やめればいいじゃん。」
「・・諦めるのは嫌だ」
・・・これ、話、終わるの?
「じゃあ、頑張るしかないじゃん。」
「・・頑張ってるけど」
また、ため息
・・・もうぅぅぅぅっつ
「しつこいっっ、
オッパ、男でしょ。ぐちぐち言わないで。
なりたいモノも、やらないといけない事も
わかってんだから、頑張るしかないじゃん。
どっちにしたって、オッパは壊した物、
全部弁償するんだから、お金いるんだから。」
カウンター越し
説教してるのは14才の中学生。
されているのは17才の高校生。
口をあけて、こっちを見ていた
オッパがフっと笑った。
・・・えくぼ。
「・・そうだな。うん、
お前の言うとおりだ。
頑張るだけだもんな。
・・ありがとな、ユジョンア」
!!
ポンと頭の上に手が置かれた。
大きな手の感覚に、
心臓がドクンってなって
思わず、目を逸らしてしまった。
「べ、別に・・」
「あぁ~、そうだ、
ユジョンア、ペン貸して」
「・・なんで?」
「いいから。」
・・・。
「わかった。」
持っていたペンを渡す。
私のお気に入りのペンだった。
受け取ったオッパが
ノートの一番下に書き込む。
“必ず、有名になって俺が壊した物、
全部、責任を持って弁償します。
なんなら、お店が古くなった時の
改修工事費も出します
キム・ナムジュン”
「よしっっ」
「何?これ・・」
「契約書。俺は、嘘をつく事が嫌いだから、
ここに書いた事は必ず守るから。」
「・・お店壊す気?」
「・・・。」
「嘘だよ。わかった。
じゃあ、早く有名になってよ。」
「おぅ。・・じゃあ、帰るよ。」
「うん。あっ、オッパ、ペン返して」
「あぁ、そうだった。はい」
受け取って、気付いた。
日付がない。
日付を書き足そうと、
ノートの上、ペンを走らせる。
・・・・ん?
「ん?」
オッパの声。
・・・・。
ノートの上、グルグルとペンを動かす。
円を描いた跡だけが見える。
「嘘でしょ・・・。」
「あ~・・ユジョンア・・」
私のお気に入りのペンだったのに・・。
さっきまで書けたのに・・。
睨みつけた視線の先
こっちを見ないオッパに
叫ぶように言った。
「これと同じペン100本買って返して。
っていうか、オッパには、
もう、何も貸さないからっっ」
私の言葉に、頷きながら
「・・ノートに」
「言われなくても、書いとくわよっっ」
「・・ごめんなさい。」
カウンターを挟んで
中学生に怒られた高校生が
肩を落として帰っていった。
もう1度、ペンを動かす。
やっぱり、書けない・・。
私のお気に入りのペン。
「あらあら」
ハルモニの言葉に思わず叫んでしまった。
「オッパなんか、
大っっっっ嫌い」