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2012.8

 

Jk.

 

 

「ジョングガ、大丈夫?」

 

「・・うん・・大丈夫」

 

「思ったより、

時間かかちゃったもんね」

 

今日は、想い出づくりにって

リアナが誘ってくれて、

一緒に海に来ていた。

 

せっかく、

先生にも許可をもらって来たのに・・

 

リアナの店のオーナーさんの運転で

朝出発したのにもかかわらず

長い長い渋滞に、

軽く車酔いしてしまった僕は

着いてからも、しばらく動けず

ゴハンも食べれなかった。

 

彼女が持ってきてくれた

ペットボトルを受け取って

冷たい水を流し込む。

 

少し、落ち着いた。

 

彼女とベンチに並んで座る。

 

「そう言えば・・昼間こうやって

並んで話すのって初めてだね」

 

・・そうだ。

 

いつも僕らが会うのは23時、

それも30分もない。

 

でも今日は、朝からずっと一緒だった。

 

だから、

なんかおかしな感じだったのか・・。

 

「リアナ、もう大丈夫。」

 

僕の言葉に彼女が笑う。

 

「よし、じゃあ行こうか」

 

「うん」

 

僕らを連れてきてくれた

オーナーさんとは、すでに別行動だった。

 

彼女と回る初めての道。

でも、何の不安もなかった。

 

通りには

たくさんのギャラリーや

オシャレな店が並ぶ。

 

お皿や、ピアスや

グリーティングカードにまで

いちいち、楽しそうに声をあげる彼女。

 

あるショップの前で足が止まった。

無造作に並べられた

たくさんの色を重ねたキャンバス。

 

「入ってみる?」

 

彼女の声に頷く。

 

扉を開けた先、

飛び込んできた鮮やかな色達に

2人とも思わず声が出た。

 

壁一面に並べられた

何百種類もの絵の具。

 

・・「あお」だけで何種類あるんだろう。

 

他にも、たくさんの画材が並ぶ。

 

 

「すごいねぇ」

 

店内を見渡しながら

彼女が嬉しそうに言った。

 

「これを使って、皆自分の手で

自分だけの作品を創り出してるんだね。

すごいよね。

なんか、勇気もらえるよね。」

 

彼女の瞳に力が入る。

将来の話をする時の目。

僕は大好きだった。

 

「うん。絵か・・

・・いつか僕も描いてみようかな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坂を上ったところで

 

ん~

 

海岸の方を見ながら彼女が

声を出した。

 

「どうしたの?」

 

彼女の視線を辿る。

 

「あれ、何だと思う?」

 

 

 

「あれ?」

 

 

砂浜の上

白い丸太みたいな物で組まれた骨組み・・

何かが動いている。

 

「・・ブランコ?」

 

 

「ブランコ!?」

 

予想外に大きな声。

 

「ジョングガ、行ってみよう!!」

 

そう言った時には

もう僕の手をとって、走り始めていた。

 

 

せっかく、ここまで来たのに・・

 

 

でも上ってきた道を駆け下りながら

楽しそうに笑う彼女を見て

いつしか僕も笑いながら坂道を下った。

 

上る時には吹かなかった風が吹く。

 

とても気持ちよかった。