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食事が終わり、

マンションまでは自分の車で送った。

 

少し、名残り惜しくて

少しだけ遠回りした。

 

地下駐車場まで入る。

 

停めた車の中は

音楽だけが流れた。

 

「あの~ ユンギ?」

 

彼女の声に振り向くと

少し考えたような表情。

 

何かを決心したかのように

1度頷いて口を開いた。

 

AIからの韓国語

 

『一花さんとVさんは・・

付き合ってますか?』

 

動揺したのは、

できるだけ隠したつもりだった。

 

「あぁ~・・」

 

隠そうと思うと、言葉が出なくなった。

 

すると、彼女の笑い声が聞こえた。

もう1度振り向く。

笑いながら話す彼女の言葉。

 

『私は誰にも話したりしません。

信じてください。

彼女はとても優しい人だし。

幸せになってほしいと思ったから。』

 

その言葉に嘘はない。

不思議と断言できた。

 

俺は、彼女へ向けて

右手を伸ばし小指を立てる。

少し首を傾げた彼女が

あぁと笑いながら、

自分の小指をかけてきた。

 

次に俺は親指を立てた。

彼女はしばらく考えていたが

ゆっくり親指をあわせてきた。

 

不思議そうな顔をしている。

 

「やくそく」

 

俺の言葉に 

今度は納得したように

大きくうなずいて笑った。

 

『明日も一緒に

来てもらっていいですか』

 

指を離した後、

自然と口にしていた。

 

「あっ・・えぇと、じゃあ、はい」

 

少し驚いて、口ごもる様子の彼女に

ちょっと不安になったが、

 

『待っています。』

 

AIの声にホッとした。

 

後部座席のドアを開ける。

降りてきた彼女は少し距離を

とって下を向いたまま話した。

 

『今日はごちそう様でした。

ありがとうございました。

・・おやすみなさい』

 

視線を合わせないまま会釈して

エレベーターの前まで歩く。

 

運転席に戻って

前を向くと、こっちを振り返って

彼女が立っていた。

少し、照れたように笑いながら

もう1度、会釈して、

ゆっくり右手を顔の高さまであげ

手を振った。

 

ハンドルにかけていた

右手を動かし、振り返す。

 

 

 

 

彼女の姿が見えなくなった。

 

エンジンをかけ、車を発進させる。

 

明日も会える・・

 

ふと、

バックミラーに写った自分の顔が

笑っていた事に気づいて

急に恥ずかしくなった。

 

1度、咳払いをして、

流れる音楽の音量を上げた。