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やばい、緊張してきた。

 

落ち着かず、

ずっと部屋をウロウロしてしまう。

 

15分前にヌナから連絡が入った。

 

もうすぐ、マンションに着くと。

 

マンションと言っても

ヌナの隣の部屋、

テヒョンの家にいた。

 

何もない家は、

俺を落ち着かせる術を

持っていなかった。

 

とりあえず、1回座ろう。

 

フッと息を吐いてソファに座った時だった。

 

玄関で鍵が開く電子音。

 

「ただいまぁ。」

 

ヌナの声に、直立してしまう。

 

ガタガタという音に交じって

彼女の声が聞こえた。

 

胸が鳴る。

 

そして、彼女が見えた。

黒のロゴTシャツに白いスカート。

ストレートの髪を後ろで結んでいる。

両耳にシルバーのロングピアスが揺れる。

 

他は変わっていないように見えた。

 

目は・・。

 

少し、周りをさぐるように手を動かす彼女を

ヌナが手を添えて、俺の前まで連れてきた。

 

やっぱり、見えなくなっているのか

 

喉の奥がきゅっとしまる感覚がした。

 

彼女が目の前に来た。

そして何か言っている。

ヌナが通訳してくれた。

 

「顔、さわっていいかって。」

 

俺は、彼女の手を取って

自分の顔に持って行った。

 

彼女の細い指が、

あの夜の鍵盤の上で

動いた時のように、動く。

 

瞼、頬、そして唇をなぞる。

 

ゆっくり目をあけると、

彼女が微笑んでいた。

 

そして、次の瞬間、

 

「(っっ痛っっっっ)」

 

彼女の指が

俺の両頬を思いっきりつねった。

 

何がおきたかわからなかった。

 

見えないと思っていた彼女の視線は、

俺の目を離さない。

 

・・えっ、

 

 

 

 

 

見えてるの?

 

ヌナも固まっていた。

彼女がまた、何か言っている。

声は・・・あきらかに

 

 

怒っていた。

 

ヌナが、頷きながら通訳する。

 

「(何様なの?

だいたいお釣り返したいなら、

自分が来なさいよ。

BTSって、そんなに偉いの?)」