【15:30】

 

 ◇ Red

 

 4回目のドレス。

 

スタッフの女性が、

ドレス用のコルセットをグッと締めた。

 

これがあったから

食べるなと言ったのね・・・。

 

彼女が持ってきた

“いちおしのドレス”に足を通す。

 

この“着せ替えごっこ”の終わりが見えず、

ため息をつきながら鏡を見る。

 

華やなリバーレースを

トップスとチュールスカートに

使用していた。

 

後方へ伸びるスカートトレーン。

 

でも、これ、・・・。

 

胸元のカッティングで、

背中と腕の傷は隠れていなかった。

 

すると彼女が、

繊細な刺繍が浮き上がるように

仕立てられている

七分袖のボレロを持ってきた。

 

上から重ね、ウエストに

淡いピンクのリボンを止める。

 

リボンの後ろには

レースで作られた花が

流れるようにつけられていた。

 

私の表情が

少し変わったのを見逃さず、

彼女は続ける。

            

「ドレスを美しく着こなす為には、

それを着る花嫁様の幸せな気持ちが

一番必要なんです。」

 

幸せな気持ち・・

カーテンの外で待っている“夫”が、

もし、テヒョンなら・・

 

何と言ってくれるかな。

              

・・喜んでくれるかな

 

軽く髪を後方でまとめ、

左サイドにレースの

ヘッドアクセをつけた。

 

 

ゆっくり、カーテンが開いていく。

 

私を見た“旦那様”の目が

見開かれていく。

 

テヒョンの姿が一瞬重なって、

自然と笑みがこぼれてしまった。

 

“旦那様”は、声も出さず何度も頷いて、

慌ててスマホで連写をしだした。

 

思わず、吹きだす。

 

“旦那様”は片手を口に当て、

少し涙ぐんでいるようにも見えた。

 

私はスタッフの女性と

目を合わせて頷いた。

 

 

 

~・~・~・~

              

店を出たのは、

もう夕方16時を回っていた。

 

結局、1番楽しんでいたのは、彼だった。

 

疲労がピークになっていた私は、

しばしの休憩を提案する。

 

ホテルで少しでも横になりたかった。

 

「本当に体力ないわね」

 

と言われたが、理由もわからないまま

4回もドレスを着たのだ、

ちょっとは褒めてほしかった。

 

結局、20時に待ち合わせをする事で

1度別れた。

 

案の上、私はベッドが目に入った瞬間

飛び込むように体を倒し、

すぐに眠ってしまった。

             

テヒョン、無事に家に着いたかな・・