【22:15】

 

 ◇ Blue

 

リハビリの成果もあってか、

メンバーを名前で呼ぶ事に対し

緊張は解けている様子だった。

 

何もしなくていいと言ったのに、

彼女は、色々と準備してして

くれていて、ホビヒョンは

キムチを絶賛していた。

 

 

 

お酒が入った事もあってか、

彼女が声を上げて笑う。

 

片えくぼが見える。

 

本当に嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

彼女がキッチンへ向かった。

2人で話したくて僕も

立ち上がろうとした時、

 

「あっ」

 

「え?」

 

隣で飲んでいたナムジュニヒョンが

床にワインをまき散らした。

             

あぁぁぁぁぁぁ

 

僕等の声に、たまたまトイレから

戻ってきていたジニヒョンが

ため息をついて、彼女がいる

キッチンへと向きを変えたのが見えた。

 

!!

 

 

ヒョンは何故か迷う事なく、

お皿を洗っていた彼女の後ろから

手を伸ばし、上の扉を開けた。

 

ただでさえ肩幅が広いヒョンに

彼女はすっかり隠れてしまった。

 

僕は体を起こす。

 

2人は笑いあっていた。

 

喉の奥がキュッと絞まる感覚。

走って行って、2人の間に立ちたかった。

 

もう、片足はその準備をしていた。

 

次の瞬間、

ペーパーを片脇に挟んだヒョンが

彼女のカーディガンの袖口を

たくし上げていた。

 

また、2人で笑う。

 

足より速いと判断した僕の脳は、

必要以上の声を出させた。

 

・・早く2人に離れてほしかった。

              

  

 

 

~・~・~・~

 

2つのケーキを囲む。

 

7人と7周年で『7』の数字を2本。

 

彼女の年齢『2』と『8』の数字を1本ずつ。

 

スパークキャンドルを1本。

 

吹き消す前の願い事をと言う

ナムジュニヒョンの言葉に、

各々手を組み目を閉じた。

             

いつまでも、メンバーと過ごせますように。

みんなが幸せでありますように。

・・彼女が僕を見てくれますように・・

              

そっと片目を開けて

右側にいる彼女を見る。

 

目を閉じて、一生懸命願い事をしている。

 

何を願っているの・・

頭の中が覗ければいいのにな・・

 

その時、ジョングクが笑いながら話しかけた。

             

「ヌナ、長いよ。」

 

あっと目を開けた彼女。

 

僕は瞬時に“弟”を演じる。

             

「イチゴが燃えちゃうよ。」

 

彼女はごめんねと謝り

口をすぼめ、ローソクに向かって

細い息を吐く。

 

僕もローソクの火を消す為に

彼女が不安がらないギリギリの距離まで

顔を近づける。

 

右手の小指が彼女の冷たい手に

わずかに触れた。

 

 

 

 

 

ロウソクの火が消えた瞬間、

 

 

僕は彼女の左手に右手を重ねていた。

 

明るくなった瞬間、手を離す。

             

 

「トイレ行ってくる。」

 

 

彼女の顔を見れずに立ち上がった。

             

   

 

 

 

 

 

“弟”なんて無理だよ・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下の壁に背中を預け、

そのまま座り込んだ。

 

リビングでは、みんなでCDを渡した

ようで、彼女が何度も

ありがとうと言っていた。