【21:00】

 

  ◇ Red

 

キッチンにいたジョングクは

冷蔵庫を指さしていた。

彼らは、ケーキを2つも用意していて、

それが冷蔵庫に入らないというのだ。

 

ジンが生クリームを食べられないのに、

テヒョンはどうしてもイチゴの

ケーキがいいと言い張った結果だそう。

 

とりあえず、

準備していた料理をカウンターに出す。

それから、漬けていたキムチを出すと、

いつのまにか、全員集まっていた。

             

「これ、ヌナが全部作ったの?」

「食べていい?」

「うまそぅ。」

「お皿は?」

「とりあえず、乾杯の準備が先です。」

「早く、早く」

 

口々にしゃべりだす。

何度か見た彼らの番組。

 

あれ、素だったんだなぁ。

 

自分の家の中に他人がいる。

でも、不思議と嫌ではなかった。

 

昔の自分を思い出せたからだろうか。

             

「大丈夫?」

 

急にテヒョンの顔が

私の目に飛び込んできた。

             

「わっ。」

 

思わず声が出る。

 

黙ったまま私を見る彼の目。

 

心配している目だった。

 

純粋で綺麗な目。

             

「だ、大丈夫だよ。」

 

その瞳に吸い込まれそうな感覚を

覚えて、慌てて目をそらす。

             

「もうぉ、食べようぉ。」

 

すでに何かを頬ばっている

ジンの声が響く。

 

それから、彼らのグループと

私の誕生日会が始まった。

 

お酒がすすむにつれ、

私は自然と声を上げて笑っていた。

その度に、何故か慈愛に満ちた目で

見られたけど。

 

時計は22時を指していた。

なかなかのスピードで

料理もお酒も消えていく中、

空いたグラスやお皿が気になってきた。

 

彼らが動く気配は全くない。

 

結局、お皿を持って

キッチンへ向かった。

 

少し洗っておこうかな。

 

水を流し、泡立てる。

 

ヌナっっ

何もしなくていいって

言ったのに。

 

!!

 

・・本当に、この人の声って

 

皿を洗い出していたので

耳を塞ぐ事はできなかった。

 

いつのまにかジンが居た。

 

ナムジュンがワインを

床にまき散らしたから

拭くものを取りに来たと。

 

カウンターのペーパーホルダーは

なくなっていた。

 

あ~・・

さっき補充しておけばよかった

 

上の開き戸に補充分があるんだけど・・

 

洗う手を止めようとした時、

後ろから私の頭の上に手が伸びた。

 

ジンが開き戸を開けてペーパーを取る。

             

「この間、ここから取ってたでしょ。」

 

あぁ、そう言えば、

お弁当を食べた時、ここから出したっけ。

             

「よく覚えてたね。」

 

と見上げる。

             

「俺は、気遣いができる

長男だからね。」

 

わかるような、

わからないような・・。

             

「ヒョンは大変だ。」

 

他人事のように言う彼に

思わず笑ってしまった。

 

そういえば・・とジンが続けた。

 

「あのCDは、やっぱり

お姉さんにあげるの?」

 

誕生日プレゼントで

テヒョンにお願いしたCD。

 

入院した姉に渡そうと思っていた。

 

姉の事は、

『お兄ちゃん』組には詳しく話していた。

 

私の命を繋いでくれた大事な人だと。

 

そしてどれだけ、

姉がグループの事を愛しているか。

彼らは、感動していた。

ホビは目に涙を浮かべていた。

 

「俺ねぇ、ヌナが、そう言ってくるって

予想してたんだよね、やっぱり俺って

すごいよねぇ。誰も褒めてくれないけど。」

 

自画自賛と自虐を口にするジン。

 

その時、

私のカーディガンの袖が

落ちてきていた事に気づいた。

 

・・脱いでから洗えばよかった。

 

その時、スッと彼の手が伸びて

袖口を少し上にひっぱりあげた。

              

「脱いでから洗えばよかったのに・・

いや、洗わなくてよかったのに・・。」

 

なぜかヒャヒャッと笑う彼に、

つられて笑う。

              

「これだけ洗ったら、終わるから。」

 

その時、

             

「ヒョン、早く持ってきて。」

 

テヒョンの大きな声。

             

「おー」

 

と答えながら、ジンは

リビングへ向かった。