●メルマガ読者の方のご質問
昨日の日報で、FRIDAY記事の
「巨大津波が関東平野を襲えばあっという間に地盤沈下し、東京だけでなく埼玉の奥地まで水没する危険性があるんです。」とありました。私の暮らしている練馬区。ハザードマップでは、浸水や津波の被害はないようですが、津波被害はありますか。

 

お答え
2021/9/3発表:産業技術総合研究所で研究成果記事によると、
「千葉県の太平洋岸で歴史記録にない津波の痕跡を発見
副題:約1000年前に発生した房総半島沖の巨大地震によって九十九里浜地域が浸水」

 

研究成果を簡潔に言うと、
房総半島沖には、太平洋プレート、大陸プレート、フィリピン海プレートが1カ所で接する「プレートの三重点」が存在する。約1000年前の津波堆積物の分布を再現するために津波浸水シミュレーションを行ったところ、これらのプレート境界のうち、フィリピン海プレートに対して太平洋プレートが沈み込む領域が破壊された場合には、
外房地域で地殻変動が起きて、地盤が沈降。その結果、津波で外房地域が大きく浸水したと考えられるということです。津波の痕跡結果と一致する

 

また、東日本大震災でも、地殻変動に伴い、地盤が沈降したことも、津波被害を大きくしたことがわかっています。

 

首都圏の南方沖で巨大地震が発生して、その影響で、東京都が地盤沈降して、津波で大きく浸水する。この可能性はあるかもしれません。

 

東京都の江東デルタ地帯。東京都東部に位置し,墨田区・江東区 の全域および江戸川区の一部が含まれる. この地域は, 東に荒川,西に隅田川,南に東京湾と水に囲まれており,海抜ゼロメートル地帯が広がっている ため,大規模水害の危険性が指摘されています。

 

この地域の町中や地下鉄などに津波が侵入する可能性はあると思います。

 

まずは、ご自分の居住地域が、地盤沈下するような可能性があるかないかを調べてみてはいかがでしょうか。

●1/21報告の補足:房総沖の巨大活断層
1/21報告した房総沖巨大活断層は、海上保安庁およびJAMSTECが取得した原データから新たに作成した90~150mグリッドのDEMをもとに立体視用画像を作成して解析した結果です。
その渡辺教授は、房総沖巨大活断層の研究発表後、雑誌のインタビューで

「陸上の活断層は地形によって認定されています。海底でも同様にできるのです。確かに、他の大地震のように昔の記録もなく、この活断層でどんな地震が発生し、実際にどのような被害になるかは、現時点では分かりません。
ただ、断層の長さから推測すると、一度にそれぞれの断層で地震が起きればM8以上になる可能性があります。断層は南北に走っているので、東西方向に大きな津波が発生すると考えられるのです」

そしてこう力説する。
「重要なのは、ここは大きな活断層はないと考えられてきた地震の『空白域』だったということです。福島沖のプレート境界だって、大地震は起こらないとずっといわれていたのに、東日本大震災が起きてしまった。
ほったらかしにしておいて、本当に大地震が来てからでは遅い。とはいえ、われわれ地形学者が今できるのはここまで。
海底調査が可能な研究者の方々にはボーリング調査をして、過去にいつ地震が発生したのか、今後、どのような被害を生む恐れがあるのかを調べてほしいのです」

海底活断層の解析の補足をすると、
2011-2015年に行われた
「詳細DEM画像による日本列島周辺海域の変動地形学的研究」
https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-23240121/232401212012jisseki/

研究概要
日本列島周辺海域の活断層の分布とその特徴を解明
(引用開始)
2,2011年巨大地震・津波と海底活断層の関連:
三陸中部沖から茨城県沖にかけての日本海溝の海溝陸側斜面下部には長さ約500kmの長大な逆断層が発達する.
この活断層の位置・形状と海底地形の特徴を考慮した震源断層モデルを設定し,
地殻変動と津波シミュレーションを行ったところ,2011年3月11日の地震時に観測された沈降量と津波高に極めて整合的な結果をえた.
(引用終了)