夜の街だけが危険ではない、学校・介護施設でも感染拡大懸念

2020/7/10:女性セブン2020年7月23日号

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今なお、終わりが見えない、新型コロナウイルスの感染拡大。東京都内では連日、100人を超える感染者が出ているが、小池百合子都知事(67才)が感染拡大の場として槍玉に挙げているのが「夜の街」だ。

 しかし、実際に感染が怖いのは夜の街だけではない。危険な徴候はいたるところに見られる。

最大の警鐘は、「感染経路不明者」の増加だ。

都の新規感染者のうち、感染経路不明者は4割弱に達する。

 国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが危惧する。

「経路不明者がさらに経路不明者に感染させると、ねずみ算式に感染者が倍増し、やがて感染爆発にいたります」

 事実、都の対策本部会議メンバーである国立国際医療研究センターの大曲貴夫さんは、7月2日の会見で、「いまの状況が続くと4週間後には感染経路が追えない新規陽性者が1日160人に増える。10日続けば1600人の新入院患者が生じる」と警告した。

「無症状感染者」が多いことも気がかりだ。

「感染者のうち、無症状感染者からの感染が全体の45%を占めるという研究結果が、最近、科学誌『サイエンス』に掲載されました。特に若者は感染後も無症状のままで、本人が気づかないうちに周囲にウイルスをまき散らす可能性があります」(一石さん)

「陽性率」の問題もある。陽性率とは、その1週間に陽性が判明した人数の平均を、PCR検査した人数の平均で割った数値だ。緊急事態宣言下では4月11日の陽性率31.7%が最大で、7月3日の都内の陽性率は4.7%だった。

 それをもって西村康稔経済再生担当相は「都内の陽性率はまだ低い」と強調するが、そこには“まやかし”がある。昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんが言う。

東京全体では4.7%ですが、新宿区の検査スポットに限ると6月22~26日の平均は22.5%に達しているとのこと。6月上旬の倍以上です。検査を受けるのは夜の街の関係者だけではないため、陽性率の急上昇は市中感染の拡大を示唆します

 経路不明、無症状、陽性率の急増が意味するのは市中の感染者の増加にほかならない。

現状でも、夜の街と同じように無症状者や軽症者を次々に検査していけば、「特定のスポット」を中心に、多数の感染者が出現すると予想される。

 その「特定のスポット」こそ、小池都知事が夜の街を悪者にし続けることで隠しておきたいことなのだ。

会食帰りの父親より学校帰りの子供が怖い

 無症状でウイルスをまき散らす感染者はどこにいるのか。注意すべきは「学校」だ。

だが、児童・生徒が感染の中心ではないことが重要な点だ。

 すでに全国の学校現場では、感染者やクラスターが多数発生している。7月上旬だけで、東京都江東区の小学校の教師4人が感染し、兵庫県神戸市の中学校で教師1人が感染した。

「特筆すべきは、小中高校では児童・生徒の感染が比較的少ないことです。一方で、教員など学校関係者の大人の感染者が多い。ほかの業種に比べても、明らかに目立ちます。

 これが意味するのは、ウイルスは児童・生徒間で蔓延しているものの、子供の体内では一定以上はウイルスが増えないため、感染が確認されないし発症もしにくい。しかし大人にはうつすということなんです」(医療ジャーナリスト)

 教室内での子供たちの行動は、感染への注意力が低かったりする点で、夜の街のホストクラブよりも感染が懸念される状況だ。

それは季節性のインフルエンザが、教室内で短期間に爆発的に感染拡大することからも明らかである。

 しかし、よく知られている通り、子供たちは新型コロナに感染しにくく発症しにくい。

ただ、“ウイルスを保有する子供”を媒介として、その周辺の大人にじわじわと広がっていく──。

本当に怖いのは、感染した無症状の子供がウイルスを自宅に持ち帰り、両親や祖父母などに家庭内感染させることです。夜の街で会食をした父親よりも、実は学校で友達と濃厚接触してきた子供の方が危ないのかもしれない」(前出・医療ジャーナリスト)

「介護施設」にも大きな危険が潜む。

最近では、東京・荒川の介護施設「ひぐらしの里」での入居者と職員の感染者は19人となった。徳島県では20代の介護士が陽性となったが、その感染源はわかっておらず集団感染につながる恐れがある。血液内科医の中村幸嗣さんが指摘する。

「そもそも介護施設では、日常的に職員が入居者を抱き上げるなどの介護が必須で、1人でも感染者が出たら多くの人に連鎖しやすい。しかも高齢で基礎疾患がある人は、感染すると重症化するリスクが高く、非常に危険です。社会活動の再開とともに入居者の家族などのお見舞い制限を解除すれば、無症状の感染者の訪問で介護施設が死のクラスターになる可能性があります」

「外食」も安心できない。

前述の通り、ホストクラブで感染者が急増したのは無症状の集団が検査を受けたから。

会話を伴う飲食の場であることは変わらないので、ほかの外食産業でも無症状の人や軽症者が検査をすれば、同様に感染者が大量発生するはずだ。

 この先、さらにリスクが高まるのが海外からの流入だ。

 日本はタイ、オーストラリアなどとの渡航制限を段階的に緩和する予定だ。またEUが渡航禁止措置の対象から日本を解除したため、観光に行った日本人が帰国する際、ウイルスを持ち込む可能性が少なからずある。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんはこう話す。

「欧米で流行したウイルスは、毒性や伝染力が高いとの研究結果があります。今後、海外からの訪問者らを介して日本に欧米型が入ってきたら、より危険が増します。実際、中国・北京ではすでに欧米型が流入しています」

 小池都知事は直視しないが、再流行は始まっているのだ。