新型コロナウイルス  治療に鼻うがい!?

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20200624-OYTET50010/


ヨミドクター:6/29

新型コロナウイルスは治療の特効薬もなく、ワクチン開発もまだまだ時間がかかりそうです(2020年6月現在)。

「当面、マスクで感染を防ぐしかないのか」と、心細く思っている人も多いことでしょう。

 先日、イギリスから従来のコロナを含むウイルス性感冒の研究が報告されました。

そこで効果が調べられたのが、鼻うがいと口のうがいです。

鼻うがいは、以前にもこのコラムで紹介 しましたが、

なんと新型コロナウイルス感染症の“治療”に使用できるのでは、という提言です。

 

海水に近い塩分濃度で症状改善

ただし、この研究で使われたのは高張食塩水です。普通、鼻うがいには人肌程度にあたためた塩分濃度0.9%の生理食塩水を使用します。これは血液の塩分濃度と同じなので、鼻へのツンという刺激がないのですが、高張食塩水は塩分濃度が2.5~3.0%と3倍の濃さになっています。海水塩分濃度が3.4%なので、その濃さが想像できるでしょうか。

 

 研究では、風邪症状が発現してから、この高張食塩水による鼻うがいを1日に最大12回行ったところ、鼻うがいをしなかった群と比較して、なんと風邪症状の期間が1.9日短縮され、家庭内での感染が35%減少、投薬量も36%低下し、ウイルスの排出量も減ったというのです。

従来のコロナウイルス感染症にしぼると2.6日の期間短縮、せきや ()(せい) 、鼻閉といった症状も早く改善しました。

 新型コロナウイルスでは、無症状でも鼻や喉からウイルスが検出されますが、この高張食塩水による鼻うがいの結果を考えると、ウイルスの排出を抑え、感染抑制に役立つ可能性が示唆されます。

 

高張食塩水による鼻うがいのやり方

 人肌に温めた水道水200mlに食塩6gを溶かすと、3%の高張食塩水が出来上がります。これを片方の鼻をつまんで、もう一方の鼻からすすり上げ、鼻や口から吐き出します。刺激が強い場合は、食塩を5g(2.5%濃度)に減らしてください。

 (参考サイト)http://www.elvisstudy.com/nasal-irrigation-and-gargling.html

 

 では、どうして鼻うがいが効果を表すのでしょうか。大きく二つの理由が挙げられます。

 まず線毛機能が維持されることです。鼻粘膜上皮や気管支上皮にある線毛は電子顕微鏡でないとはっきりと見えないほどの細かい毛ですが、これが密集し、1秒間に10~15回くらい波打って異物を排除しています。線毛は、温度や湿度の低下でその動きが弱まり、喫煙や過度の乾燥では消失してしまいます。線毛機能に異常が出てしまう線毛機能不全症候群では、頻回の副 ()(くう) 炎や気管支炎になりやすいことからもその大切さが分かるでしょう。線毛機能を維持するには、生理食塩水での鼻うがいで良いです。

 二つ目の理由は、次亜塩素酸です。次亜塩素酸水の空間噴霧が新型コロナウイルスの消毒に使えるのかどうか議論がなされていますが、もともと私たちの体内の貪食細胞は次亜塩素酸を使って異物を消化しています。次亜塩素酸は、コロナウイルスを含むさまざまなタイプのウイルスに対して阻害作用を持っています。

 次亜塩素酸は、異物を攻撃する貪食細胞にのみあると思われていたのですが、実は上皮細胞でも生成され、抗ウイルス作用を生み出していることが分かったのです。塩化物イオンがあると、上皮細胞であっても次亜塩素酸を生み出して体を防御しているので、この塩化物イオンの供給源になる高張食塩水の鼻うがいが有効なのでしょう。

 

米国では鼻うがいを勧める家庭医が多い

 WHO(世界保健機関)は鼻うがいの感染予防効果は確認されていないという見解を出していますが、本記事は感染予防ではなく、症状が起った際の対処法です。実際にアメリカでは、多くの家庭医が上気道感染症の治療に際して抗生剤などの投薬をする前に、鼻うがいを勧めているという報告があります。妊婦さんや薬のアレルギーがある人、新型コロナウイルスにかかると重篤になる可能性のある疾患を持つ人などは、気になる症状が出た際には医師への相談、受診と合わせて鼻うがいをすることも考慮に入れてはどうでしょうか。

 冒頭のイギリスの研究でも、新型コロナウイルス治療の一つに鼻うがいが選択枝として挙げられるのではないだろうかとの提言をしています。新型コロナウイルスへの決定的な治療薬がない現状で、私たちに家庭でもできる取り組みがあるという報告はすこし安心をもたらしてくれます。

 私の所属する認定NPO法人日本病巣疾患研究会では、 鼻うがいチャレンジと称して鼻うがいを推奨するプロジェクト を行っています。

 

薬も使わず、家庭にあるもので新型コロナウイルス対策ができるとしたら心強いですね。まずは生理食塩水の鼻うがいからチャレンジしてみてください。気持ちよいですよ。

 

(注)高張食塩水での鼻うがい、うがいは塩分の取り過ぎになる可能性があるため、風邪症状(咽頭痛、鼻閉、咳など)があるときに限って行うようにして下さい。

 

平常時は、生理食塩水の鼻うがいを1日1~3回程度でよいです。また症状がある場合の鼻うがいは、洗浄液が周囲に飛び散らないように留意し、容器の消毒をするなど感染対策も合わせて行って下さい。(今井一彰 みらいクリニック院長・内科医)