米軍はイスラエルを守るために空母2隻を中東へ派遣したが、イランは中露の支援 

 

 アメリカ海軍はセオドア・ルーズベルトに続いて2隻目の航空母艦エイブラハム・リンカーンを中東に配置した。イランによるイスラエルへの報復攻撃が不可避であるため、イスラエルを守り、イスラエルに報復する国や組織を攻撃する準備なのだろう。イランは現在、タイミングや攻撃方法を検討しているはずだ。

 

 マスード・ペゼシュキアンの大統領就任式に出席するためにイランを訪問していた暗殺されたハマスの幹部、イスマイル・ハニエを7月31日にイスラエルは暗殺した。同じ日にヒズボラの最高幹部のひとりであるフア・シュクルも殺している。イラン、ヒズボラ、ハマスは連携して報復すると推測する人が少なくない。

 

 一方、イスラエルはそうした報復を待っていると考えられている。ハニエやシュクルの暗殺は報復を誘発するために実行した可能性が高い。単独ではハマスに苦戦、ヒズボラと戦えば負けるイスラエルとしては、アメリカの中東における利権を危うくするような状況を作ることでアメリカ軍を引き込もうとしているとも考えられている。

 

 当然、イランはアメリカ軍が出てくることを想定しているはずで、ロシアや中国と対抗策を練っているだろう。イランはロシアから兵器や情報を提供されているだろう。高性能の防空システムだけでなく対艦ミサイルがロシアからイランへ渡っている可能性もあるのだが、そうした支援がどこまで広がるかが注目されている。イエメンのアンサール・アッラーがロシア製の兵器を手にすることも否定できない。そうなると、アメリカの艦隊が壊滅的な打撃を受ける状況もありえる。

 

 こうした状況を作ってきたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はベンシオン・ネタニヤフの息子。ベンシオンは「修正主義シオニスト世界連合」を1925年に創設したウラジミール・ヤボチンスキーの秘書を務めていた人物だ。

 

 ヤボチンスキーは帝政ロシア時代のオデッサ(現在はウクライナ領)で生まれ、ウクライナでは独立運動を率いていたシモン・ペトリューラと連携している。ペトリューラは1918年から21年にかけて大統領を名乗るが、その時期に彼は3万5000人から10万人のユダヤ人を虐殺したという。(Israel Shahak, “Jewish History, Jewish Religion,” Pluto Press, 1994)

 

 本ブログでは何度か指摘したが、シオニズムは17世紀のイギリスで生まれたと言われている。プロテスタントの一派であるピューリタンに属していたオリバー・クロムウェルがピューリタン革命を成功させ、アイルランドやスコットランドで住民を虐殺した当時だ。その後、ピューリタンはアメリカで先住民のアメリカ・インディアンを虐殺している。

 

 そのクロムウェルの私設秘書だったジョン・サドラーは1649年に作成されたパンフレット『王国の権利』の中で、イギリス人はイスラエルの失われた部族のひとつであり、ユダヤ人と同族であると主張、イギリス・イスラエル主義の始まりを告げている。ここからシオニズムが始まるとも考えられているのだ。

 

 イスラエル構想が具体化するのは1917年にイギリスの外務大臣を務めていたアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出した書簡からだろう。イスラエルを建国する目的のひとつはスエズ運河の安定的な支配だったとだろう。運河によって地中海と紅海を感染が行き来できることはイギリスの戦略上、重要だ。そのため、イギリスは先住のアラブ系住民(パレスチナ人)を弾圧する一方、ユダヤ人の入植を進めた。

 

 1933年にドイツではナチスが国会議事堂放火事件を利用して実権を握るが、この年の8月にシオニストはナチス政権との間でユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることで合意した。「ハーバラ合意」だ。シオニストにとってナチスのユダヤ人虐殺は好ましいことだった。

 

 こうした背景を持つベンヤミン・ネタニヤフは昨年10月にガザで戦闘が始まった直後、パレスチナ人虐殺を正当化するため、「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、「​アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい​」(申命記25章17節から19節)という部分を引用している。

 

 「アマレク人」を家畜ともども殺し、その後に「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたと旧約聖書では記述されている。

 

 アマレク人は歴史の上で存在が確認されていないが、この民族をイスラエルが敵視している勢力に重ねて見せた。パレスチナ人が生活していた歴史を破壊で消し去るということだろう。

 

 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだというのだ。

 

 ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民だ」としたうえで、イザヤの預言を理解しなければならないと主張する。「われわれ」とはイスラエル人、「彼ら」とはパレスチナ人、イスラム教徒、あるいはイスラエル以外の人びとを指している。この段階でネタニヤフはパレスチナ人を皆殺しにすると宣言しているわけだ。シオニストはナチス化していると言えるだろう。

 

 イスラエルにはこうしたネタニヤフを批判する声もあるが、熱狂的な支持者もいる。人口の相当数はそうしたユダヤ人至上主義者だとする見方もある。彼の内閣では終末論的な発言をするカルトが過半数を占め、武装集団を形成している。軍部も手を出せないようだ。こうしたカルトの信者たちは「最終戦争」、つまり地球の破壊を夢想している。キリスト教にもそうしたカルトが存在、両者は連携している。イスラエルのカルトを西側諸国が支援していても不思議ではない。7月24日にネタニヤフ首相はアメリカ議会で演説したが、その際、議員たちは58回に及ぶスタンディング・オベーションを行った。アメリカの議員も正気ではない。

 

 アメリカには平和推進者を装いながら戦争を推進、虐殺を支援する政治家もいる。民主党の大統領候補であるカマラ・ハリス副大統領は「ガザでの停戦確保に精力的に取り組んでいる」わけではなく、イスラエルへの武器禁輸に反対している。

 

 ハリスの副大統領候補に選ばれたティム・ウォルズは軍事力の削減に反対し、イスラエルに対する軍事援助を支持しているほか、イスラエル・ロビーのAIPACとも良好な関係にある。ウクライナでの戦闘でも彼は好戦的。ウクライナへの軍事援助を支持し、同国の駐米大使から「信頼できる友人」と呼ばれている。

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