2022年のトンガの海底火山の影響は「寒冷傾向ではなく強力な気温上昇作用」であることを知る。結局これからの地球の気温はどっちへ?
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2022年1月14日に噴火した海底火山フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイ
indeep.jp
海底火山噴火の予想外の影響
世界中で猛暑が伝えられることが多いですが、中でも、アメリカのラスベガスでは、7月7日に 50℃に迫る気温が記録されたことが報じられていました。
そのラスベガスのメディアで、「この高温化の原因のひとつ」を上げている興味深い記事を読みました。
観測史上最高気温を記録したラスベガスのレビュー・ジャーナル誌というメデイアが、
「この原因のひとつに 2022年のトンガ沖での海底火山の噴火がある」
としたことを記した内容のでした。
この 2022年の噴火は、フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイという海底火山の爆発で、こちらの記事で取り上げています。
フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイ火山の場所
Google Map
私自身は、今回ご紹介させていただく記事を読むまで「巨大火山の噴火は、気温を下げる」と思い込んでいました。
それは、噴火により大気中に噴出したガス、塵、灰などが太陽光を宇宙に反射させるためであり、以下のような記事も書いています。
(記事)トンガ沖火山の噴煙量が「1991年のピナトゥボ噴火の3倍」であることが東大地震研究所の分析で判明。ピナトゥボ噴火の後は地球の気温は 0.6℃低下したが……
地球の記録 2022年1月20日
1991年の 20世紀で最大の噴火を起こしたフィリピンのピナツボ火山の噴火の場合、噴火後、翌年にかけて地球の平均気温は 1℃近くも下がったのです。
1990年から1992年の地球の平均気温の推移
earthreview.net
これは地上の火山の噴火でした。
ところが、今回ご紹介するメディアの記事にリンクされていた NASA の報道やライブサイエンスなどの記事を読みまして、「海底火山の場合は違う」ことを知ったのです。海で爆発するわけですから、「大量の水分を大気中に放出する」わけです。
このフンガ・トンガ=フンガ・ハーパイの噴火では、特別に大量の水が成層圏に放出されました。
2022年8月2日の NASA のニュースリリース
NASA
この大量の水蒸気が何をするかというと、
「水蒸気は、熱を閉じ込める」
役割を果たすのだそうです。
2022年9月のライブサイエンスの記事のタイトルは、「トンガの噴火による5000万トンの水蒸気は地球を何年も温める可能性がある」というものでした。この影響で、一部の地域、あるいは広範囲で今後長期間、気温が上昇した傾向のままである可能性があることを書いています。
ライブサイエンスには、「通常の地上の噴火」の仕組みとして以下のように書かれています。
大規模な火山噴火は、通常、太陽放射を遮る大気圏の上層に二酸化硫黄を噴出させることで、地球の温度を下げる。国立科学財団の大気研究大学協会によると、岩石や灰の粒子も太陽光を遮ることで、一時的に地球の温度を下げる。livescience.com
ところが、トンガの海底火山の大噴火のような「海での大噴火」の場合、大量の水分が共に大気に放出されるわけで、それは、以下のような働きを持つのだそうです。
大気中の水蒸気は太陽放射を吸収し、熱として再放出する。トンガの水分が数千万トンも成層圏に漂っているため、地球の表面は温暖化するだろうが、その程度は不明だと研究は述べている。 livescience.com
フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイの 2022年の噴火はあまりにも激しかったので、その水分の量も大変なものとなり、
「この噴火による水が完全に消散するには 5年~ 10年かかる可能性がある」
と分析されていたほどでした。
噴火は噴火ですので、一方では、ガスや塵が太陽光を遮り、一方では、太陽の熱を吸収して再放出するという、気温に対してのそれぞれの作用があるようなんですね。
うーん……もう地球の気温は、どっちの方向に向かうのだか、まったくわからなくなってきたわけですが、ともかく、まずは、そのラスベガスのレビュー・ジャーナルの記事をご紹介します。
トンガの火山がラスベガスの記録的な猛暑にどう影響したか
How a Tonga volcano contributed to Las Vegas’ record heat
reviewjournal.com 2024/07/09
ラスベガスの記録的な暑さはひどい。地球温暖化のせいだろうか?それとも何か他の原因があるのか?
7月7日、ラスベガスは記録的な華氏 120度(約 49℃)を記録した。気温は今週中ずっと高いままと予想されている。週末には、日中の最高気温がようやく 110度(43℃)を下回ると予想されている。それでもまだとんでもなく暑い。地元の病院では、舗装道路での火傷の治療を受けている人たちがいる。悲しいことに、クラーク郡では熱中症ですでに数人が亡くなっている。
この熱波について、国内の主流メディアは地球温暖化のせいだと非難している。
「気候変動は世界中で猛暑を引き起こしており、今後数十年にわたり危険な天候をもたらし続けるだろうと研究は示している」とロイターは報じた。
「気候危機が地球温暖化を加速させている」と熱波に関するCNNの記事は伝えた。AP通信は「地球温暖化がもたらす混乱」について警告した。
しかし、別の原因についても考えてみてほしい。
たとえば、2022年1月、南西太平洋の島国トンガで巨大な海底火山が噴火した。この噴火により、大量の水が地球の成層圏に噴出した。2022年8月、NASAは「その大気層にすでに存在する水の 10%に相当する」と報告した。
大規模な火山噴火は「通常、ガス、塵、灰を噴出させて太陽光を宇宙に反射させ、地球の表面を冷やす」と NASA は記している。対照的に、「水蒸気は熱を閉じ込める」。
それが科学者たちの予測につながった。2022年9月、ライブサイエンスは「トンガの噴火による 5000万トンの水蒸気が地球を何年も温める可能性がある」と書いた。
AP通信は2022年に、この噴火が「地球を温暖化させる可能性がある」と報じた。
メディア NPR は当時、「火山からの硫酸エアロゾルが成層圏から落ちるには通常 2~ 3年かかる。しかし、1月15日の噴火による水が完全に消散するには 5~ 10年かかる可能性がある」と報じた。
計算してみると、2024年には気温がさらに上昇することがわかる。
先月末、ニューサイエンティスト誌がそれを確認した。
「 2022年のトンガの噴火による記録的な量の水がまだ大気中に残っている」と同誌は報じた。その水は「地球温暖化の一因となっている可能性がある」。
過去の気候予測の多くが当たらなかったことを考えると、科学者は 1つでも当たったと自慢するだろうと思われるかもしれない。しかし、そうではない。
地球の気温上昇における火山の役割は無視されるか、軽視されている。気候警告論者は、火山に注目が集まると地球温暖化の警告論が複雑になるのではないかと恐れているようだ。
そして、それは事実だ。気候と人類の気候への反応は、複数の変数から成り立っていることを思い出させてくれる。そのことを認めれば、化石燃料を排除しようとする動きは崩れ去る。
気候関連の死亡者数を見てほしい。過去 1 世紀で 95パーセント以上減少している。
主な理由は、化石燃料のエネルギーが世界の生活水準の向上に貢献したことだ。人々が裕福になれば、エアコンや高品質の建築物などを購入できるようになる。
後者はハリケーンなどの自然災害による被害や死亡者数を抑える。人間の活動が地球温暖化の一因になっていると信じていても、安価で信頼性の高い燃料は、地球がわずかに寒冷化していた場合よりも大幅に多くの命を救った。
人類は気象をコントロールすることはできないが、化石燃料を動力源とするイノベーションにより、あらゆる気温にはるかに耐えられる存在になった。
ここまでです。
太陽活動も今後大きくなるわけですが、太陽活動が強い状態の中では、地球に到達する宇宙線の量が「減る」のです。そして、宇宙線の量が少ないと、「雲が発生しにくくなる」のです。
もっと簡単に書きますと、「太陽活動が高い状態では、雲が少ない日が多くなる」ということで、気温も高い傾向になりやすいです。以下の記事にあります。
(記事)スベンマルク博士の異常な愛情が今ここに結実 :「雲の生成は宇宙線によるもの」という説が25年にわたる観測の末に「結論」づけられる。そして、太陽活動が長期の地球の気温のコントロールに関与していることも
In Deep 2016年8月29日
1983年から 2006年の雲の量と宇宙線の量の関係
davidpratt.info
トンガの海底火山の噴火により放出された水蒸気が霧散するのに、少なくとも 5年以上かかるという分析と、今後 2、3年間ほどは太陽活動がかなり高いままであるということなどから、今後、気温の上昇傾向がさらに続く可能性のほうが高くなってきた感じです。
数年前まで私が確信していた地球寒冷化はどこにいった…という思いもありますが、この場合、今回の記事で示されたような科学の分析が勝ちそうです。
混沌とした地球の状態ですが、他にも現在の地球の状態にはいろいろと問題があり、今後さらにご紹介したいと思います。
2022年のトンガの海底火山の影響は「寒冷傾向ではなく強力な気温上昇作用」であることを知る。結局これからの地球の気温はどっちへ? - In Deep