過去20年で最大のG5の地磁気嵐の影響について米国政府が勧告を発令。そして、今後の電気、通信に関するCNNの見解
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今のところ影響は未知(ほぼ誰も経験したことがないので)
前回のこちらの記事で書きましたような非常に大きな黒点から、信じられない回数の Mフレア、 Xフレアが発生しています。
5月5日から11日までの太陽フレア発生状況
NICT
太陽フレア自体の威力は、個別ではそう大きなものではないのですが、あまりにも連続してフレアが発生しているために、
「後から発生したフレアによる CME (コロナ質量放出)が、先に発生したものに追いつき衝突する」
という現象が起きているようで、これにより、地磁気嵐のパワーが非常に高まっているようです。
そして、現在、地球の地磁気嵐は、5段階の最高レベルである「 G5 」に達しています。
5月11日の地磁気の撹乱指数(9が最高で G5 と判定される)
BDW, NOAA
地磁気の影響のレベルは以下のようにわけられています。
地磁気嵐のレベルの分類
・G5 (極端に大きな) → 送電網などの損傷、人工衛星の障害、通信障害
・G4 (猛烈に大きな) → 送電網の誤動作の可能性、通信障害の可能性
・G3 (大きな) → 送電網の誤動作の可能性、通信障害の可能性
・G2 (やや大きな) → 高緯度地域でのみ送電網や電波障害の可能性
・G1 (小さな) → 小さな影響
G5 となると、一応は通信や送電網に何らかの影響があるレベルとなるのですが、実際にどうなるのかはわかりません。
そもそも、個別の太陽フレアのレベル自体はそれほど大きなものではないですので、現状では、そんなに大きな影響は出ないのではないかなとは思うのですが、実際に地磁気の撹乱が激しくなっていると共に、現在も太陽フレアの連続の発生がまったく収まっていないですので、ここで、
「非常に強い太陽フレアが発生した場合」
は、それなりの影響もあるのかもしれません。
非常に強い太陽フレアというのは、X10 を超えるようなフレア(X20を超えるフレアなら、もう絶対的)です。
黒点を発生させ続けている黒点群 3664 は、まだ 3日程度は、地球に向いたままだと思いますので、なかなか緊張する数日となるのかもしれません。
アメリカの CNN が現在の地磁気嵐の影響について、専門家の意見を交えて解説していましたので、ご紹介します。
とはいえ、どんな専門家にしても、ほとんど経験したことのない地磁気嵐の現状ですので、予測できるものではないとは思われます。
なぜ今夜の大規模な太陽嵐が通信とGPSシステムを混乱させる可能性があるのか
Why tonight’s massive solar storm could disrupt communications and GPS systems
CNN 2024/05/10
気を引き締める局面かもしれない。今週の異常な回数の太陽活動により、社会が依存している最も重要なテクノロジーの一部が混乱する可能性がある。
5月9日、アメリカ政府は約 20年ぶりとなる深刻な磁気嵐の監視を発表し、「少なくとも 5回の地球方向のコロナ質量放出」と、地球自体の 16倍の面積を覆う黒点について国民に勧告した。
アメリカ海洋大気局(NOAA)によると、この活動による放射線は 5月10日に地球の磁場に衝突し始め、週末まで続くだろうという。10日の夜、NOAA はこの嵐を G5 または「極端な」に格上げした。これは 2003年10月以来初めての出来事だ。
NOAA の、この極端な宇宙天気に対する警告は、太陽嵐が地球上の生物にさまざまな影響を引き起こす可能性があり、電力網や衛星通信、高周波無線通信に影響を与える可能性があることを示唆している。
コミュニケーションへの影響
NOAA が言及している太陽活動には、太陽からのエネルギーの放出が含まれており、それが宇宙を通って最終的に地球に到達する。
その放射線が地球を取り囲む磁気球に当たると、上層大気の層である 電離層に変動が生じる。
これらの変化は、軌道上の衛星や他の宇宙船に直接影響を及ぼし、方向を変えたり、電子機器を破壊したりする可能性がある。
さらに、電離層の変化により、大気中を通過して衛星に到達しようとする無線通信が遮断されたり、劣化したりする可能性がある。
GPS 衛星は電離層を通過する信号に依存しているため、地磁気擾乱が航空機、外航船、農業、石油・ガス産業で使用される重要な技術に影響を与える可能性があると科学者たちは予想している。
そして、船舶や航空機、緊急事態管理機関、軍、さらにはアマチュア無線家が使用する短波無線通信にも影響を与える可能性があり、これらはすべて高周波無線電波に依存しており、太陽嵐によって散乱する可能性があると NOAA は述べている。
携帯やスマートフォンへの影響
消費者向け無線ネットワークは高周波帯域とは異なる無線周波数に依存しているため、この太陽嵐が携帯電話サービスに直接影響を与える可能性は低いと思われる。
携帯電話の GPS 機能は通常、純粋な GPS と携帯電話の基地局ベースの位置追跡を組み合わせて使用するため、GPS 信号が中断された場合でも、電話ユーザーは大まかな位置情報を維持できる可能性がある。
無線ネットワークをサポートする基盤となる電気インフラが影響を受けない限り、宇宙の極端な気象現象であっても、「公共の内無線および商用携帯電話サービスへの直接的な影響は最小限に抑えられ、家庭用電子機器への一次影響は発生しないと考えられる 」と研究者たちは、 NOAA と連邦緊急事態管理庁が 2010年に実施した異常宇宙気象に関する調査結果の要約で述べている。
サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁は、宇宙天気に関する 2021年のプレゼンテーションで同様の報告書の概要を説明し、無線送信は特定の状況を除いて一般に宇宙天気の影響を受けないことを明らかにした。プレゼンテーションでは、土地に基づく銅線ケーブルと電話線のいくつかのリスクについて言及した。
2月の少し異なるシナリオで、NOAA は 2つの大きな太陽フレアを指摘した。しかし、同時期に「携帯電話ネットワークの停止が広く報告されていた」にも関わらず、太陽フレアがそれらの停電に関与した可能性は「非常に低い」と当局は述べた。
NOAA 当局者は 5月10日、送電網に広範な混乱が生じない限り、今週末の携帯電話への影響はほとんどないか、まったくないはずだと繰り返した。ただし、電力網に問題が発生した場合は、携帯通信にも、それによる二次的な影響が出る可能性がある。
(※ コメント)携帯通信に関しては、基地局やアンテナなどの機能が阻害されると、結局、携帯通信網にも影響を与えると思われます。
電力網が潜在的に危険にさらされている
NOAA によると、今回の厳しい宇宙天気は送電網を危険にさらす可能性があり、今週の警告では「電圧制御に広範囲にわたる問題が発生する可能性」があり、「一部の保護システムが誤って重要資産を送電網から遮断する可能性がある」としている。
1989年、宇宙気象現象によってカナダのケベック州で地磁気の変動により、変圧器やその他の重要な機器が損傷し、9時間以上にわたる大規模な停電が発生した。
SWPC によると、10月には予想を上回る極度の磁気嵐により、スウェーデンで停電が発生し、南アフリカでは変圧器が損傷した。
1859年のキャリントン事象として知られる史上最大の磁気嵐は、電信局に火花を散らし火災を引き起こした。
電力網の停電は、携帯電話を含む通信やその他のテクノロジーに連鎖的な影響を与える可能性がある。 ウェブサイトとその情報をホストするデータセンターと同様に、携帯電話の基地局が電力を失う可能性があり得る。
それでも、多くの無線通信事業者プロバイダーは、自然災害やその他の重大な事故が発生した場合に備えて、バックアップ発電機とモバイル携帯電話タワーをすでに維持している。
(※ コメント) そのバックアップ発電機などが、地震などの通常の自然災害に対応しているだけのものなら、極端な地磁気嵐には対応できません。完全な電磁を遮断する施設に備えられていることが必須です。
冗長性と回復力はすべての重要なインフラストラクチャプロバイダーの合言葉であるため、たとえ送電網に障害が発生したとしても、消費者はオンラインを維持できるかどうかよりも、携帯電話を充電し続ける方法を心配する必要があるかもしれない。
その点を強調するかのように、宇宙気象現象にどのように備えるかについての米国政府の国民へのアドバイスは、長期にわたる停電に対応するために講じる措置とほぼ同じだ。
たとえば、政府は小型電子機器用に予備のバッテリーや手動充電器を用意しておくことを推奨している。
当局者たちは、太陽嵐による気象現象の際には、電力サージから保護し、電力使用量を制限するために、電気製品の電源を切る必要があるかもしれないと述べている。また、ガソリンスタンド (ポンプを作動させるために電気が必要) に行く必要がないように、車のガソリンタンクを少なくとも半分満タンにしておくのもよいだろう。
(※ コメント) ガソリンスタンドが機能しなくなるような電力障害を受けている時には、すでに、自動車そのものの電子システムもやられています。ガソリンを満タンにしていても、車自体が動きません。こういう場合に最も役に立つ移動手段は、冗談ではなく馬車とかリヤカーです。
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