世界一からスタートする、佐々木朗希の新たな一年

3月30日(木) 8:49

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イチローが決勝タイムリーを打った、2009年WBCの記憶

世界一を決めた瞬間、グラウンドに飛び出した。仲間たちに抱きつき、喜んだ。佐々木朗希は侍ジャパンの一員として第5回WBC日本代表に選ばれ、世界一のメンバーの一人となった。その瞬間について佐々木朗希は「幸せでした」と振り返った。

WBC。佐々木朗希が記憶に残っているその大会の思い出は2009年の第2回大会となる。まだ本格的には野球を始めていない小学校1年生の時。野球チームに入っていた3学年上の兄と一緒にボールを投げたりはしていたが遊ぶ程度だったころのことだ。

学校が終わり、自宅に戻るとテレビがついていた。日本と韓国の決勝戦。手に汗握る展開で試合は終盤。「ただいま」と居間に顔を出すと家族はテレビに見入っていた。だから一緒になって見た。試合は日本1点リードの9回に同点に追いつかれ、延長に突入した。

10回表2死2、3塁。伝説のシーンが生まれる。それまで不調だったイチローが中前に勝ち越しタイムリー。その裏、ダルビッシュが締め、最後のアウトを奪うとガッツポーズを見せた。テレビを見ていた家族もみんなで喜んだ。小学校低学年ながら、その光景は鮮明に覚えている。だからメディアからWBCの覚えているシーンを聞かれると、必ず2009年の決勝と答えた。

「WBCといえばイチローさんが決勝点となるタイムリーを打った2009年の試合を見た記憶。そのイメージ。野球に対する憧れやイチローさんをはじめ選手の皆さんがカッコよく見えた」と佐々木朗希は小学校の時、偶然に目にした光景を今でも目に焼きつけていた。

人生初のマウンドは、小学校のグラウンドで1回中継ぎ登板

人生とは本当に不思議なものである。月日は流れ、あの時の小学一年生は21歳になった。そしてあの時の以来の世界一となり、グラウンドで仲間たちと抱擁を繰り返していた。侍ジャパン鉄壁の先発ローテの一角として、チェコ戦と準決勝のメキシコ戦の2試合で先発をした。







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んともいえない高揚感を味わった。

「ピッチャーをやらせてもらえなかったらプロにはいっていない。今はないですからね。もちろん、あの時はプロに入るとか想像もしていないですし、夢としても思っていないし、口にしたこともない」

佐々木朗希は今でも、プロ野球の中心に自分がいることを俯瞰して信じられないと思うような時がある。普通に進学をして普通に就職をして普通の生活を営む。子供の時から、そういうイメージしかもっていなかった。昨年、ある会見でメディアから「子供の時にどのような賞を受賞したのか?」と問われた時も「記憶にないです」と答えた。それは本当のことだった。振り返っても、そのような華やかな賞とは無縁だった。

「兄や弟はよくもらっていたような記憶はあるけど、自分はまるでない。スポーツ選手とかで、よく家にトロフィーとか賞状がたくさん飾られているような光景とかを目にするけど、自分はまったくないと思う」と笑った。しかし、今や完全試合の勲章を手にしていれば、世界一のメダルも獲得した。アメリカ・マイアミのグラウンドで最高の瞬間を味わい、全身で幸せを感じることもできた。

WBCでの経験は、プラスになることばかりだった

3月23日に帰国すると、ロッテ浦和球場で調整を行い、3月28日に一軍本隊に合流。さっそくブルペン入りして約20球、投げ込んだ。練習前の選手たちが集合をする中、「マリーンズでシャンパンファイトができるように頑張りたいです」とあいさつをすると大きな拍手に包まれた。世界一の余韻に浸る時間は終わった。佐々木朗希はすでに次に向かい進んでいた。

練習後のメディア対応では「自分を侍ジャパンのメンバーに選んでくれた人たちに感謝です。21歳で本当にいい経験ができたし、楽しかった。凄い緊張感がある中で試合をして、その中で楽しむこともできた。短期決戦独特の集中した雰囲気。1つのプレー、1個のアウトの大事さ。独特の盛り上がり。いろいろな人に話を聞くこともできた。野球選手として過ごしていく中で、この経験はプラスになることばかりでした」と笑顔で語った。

その表情は、少し大人になったように見えた。吉井理人監督は「いい意味で傲慢になったんじゃないですか。自信がついた」と独特の表現で投手コーチ時代から知る若者を語った。佐々木朗希の4年目のシーズンがまもなく始まる。令和の怪物はその異名通りに毎年、人を驚かせる投球を見せる。

2023年シーズンは、世界一の称号と世界一のメンバーからさまざまなことを吸収し、怪物はさらなる進化を遂げる特別な一年となりそうだ。しかし、それはこれまでの彼が歩んできた人生と同じようになにが起こるかは分からない。周囲の想像以上のドラマが待っているはずだ。世界一から、新たな一年は幕を開ける。

【17の閃光~佐々木朗希物語~第13回】
文/梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報室)



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