俺の中で夏を連想させるサウンドというのが5つある。
エリック・サティのGymnopédies(ジムノペディ)、スーパーキャット、
ベンチャーズ、ビーチ・ボーイズ、
そしてこのモダン・ジャズ・カルテット。通称MJQ。
ミルト・ジャクソン(Vibes)、ジョン・ルイス(Piano)、
パーシー・ヒース(Bass)、コニー・ケイ(Drums)の4人からなる
モダン・ジャズ界の超・超・超・超・超大物グループで、
クラシック以外は音楽じゃないと思っていた幼き日の俺の頭でっかちな固定観念を
完膚無きまでにブっ壊してくれた、俺の中の永遠のスーパースターだ。
クラシックに見られない不協和音というのが大嫌いで、
こんなもの音楽じゃないとずっと毛嫌いしていたジャンル、Jazz。
そんな時フと何気なく耳にしたこの'Softly as in a Morning Sunrise'が
俺の音楽に対する価値観を根底からブチ曲げてしまった。
冒頭のパーシー・ヒースのヴォン!という重低音のベース音に
脳天が叩き割られるような強烈な衝撃を受け、
そこに被せてくるミルト・ジャクソンの都会的なヴィブラフォン、
ジョン・ルイスのクールなジャズ・ピアノ。
俺はMJQのサウンドに完全に屈服した。
何故俺は今までこんな洒落た音楽を否定してきたのだろう、
全身に鳥肌を立たせながらそう激しく後悔したのを今でもよく覚えている。
あの時、このMJQのSoftly~に出会ってなかったら、
その後ビートルズもレゲエもヒップホップも受け入れていなかったかもしれない。
それだけMJQとの出会いというのは俺の中では大きな出来事だった。
こちらはジャズのスタンダードナンバー、ポーギーとベスより'SummerTime'。
オザケンがポーギーとベスの流れる喫茶店で1人ワインを飲んで酔っ払ってしまった、
あのポーギーとベス。
蒸し暑い夏の夜を連想させる名曲。
MJQのオリジナルより、'Bags Groove'。
Jazzの愉快なところ。それは各自のソロパートが完全にアドリブで構成されており、
演奏した日、場所、時間によって同じ曲が全く別の旋律になるってところ。
そしてそれぞれが息を合わせるのに牽制を入れつつクライマックスにもってゆくという、
実にユニークでご機嫌でスリリングなスタイルなのだ。
これはコンダクターにより1つにまとめられるオーケストラ演奏には無い部分。
これがあるからジャズは面白い。
最後はMJQの代表曲にしてJazz史に残る永遠の名曲、'Django'で聴き比べを。
ジョン・ルイスとミルト・ジャクソン、
この2人の天才が繰り広げるノーガードの打ち合いが最高に熱い!
4人とも既にこの世を去ってしまい、もう生演奏を聴ける機会は永遠になくなってしまったが
そのクールで熱いヴァイブスとピアノのグルーヴは
ジャズファンの心の中で永遠にスウィングし続ける。
蒸し暑い夏の夜はこのMJQの'I Remember Clifford'をかけて静かに過ごす。
そんな調子こいた時期も俺にはありました。(今は氷水飲んでチャッチャと寝てっけどね)