【大正時代に観賞用草花として渡来、今や「日本の侵略的外来種」に】
キク科ムカシヨモギ属の帰化植物。4~6月頃、白やうすいピンク色の直径2cmほどの小花を何輪も付ける。線状の細い花びらがきれいに円形に並び、真ん中が黄色い頭状花。原産地は北アメリカで大正時代の中頃、観賞植物として持ち込まれた。だが、今や「日本の侵略的外来種ワースト100」(日本生態学会選定)の1つに挙げられるなど〝雑草〟の代表格として扱われている。

名前は日本在来種で秋咲きのシオン(紫苑)の花に似て、春に咲くことから。繁殖力が旺盛で、やせた土壌にも適応し、引き抜いても根が残るとまた芽を出す。太平洋戦争後、東京の焼け跡にはびこり、さらに1970年代に除草剤パラコートの使用開始に伴って関東を中心に爆発的に増殖し全国各地に広がったという。同じ北米原産の帰化植物で似た花としてよく挙げられるのがヒメジョオン(姫女苑)。渡来はハルジオンより50年ほど早い明治維新前後で、当時「柳葉姫菊」や「御維新草」などと呼ばれた。その後、各地の鉄道沿線に繁殖したことから「鉄道草」とも。
そのヒメジョオンの花期はハルジオンより遅く6月頃から10月頃まで。ハルジオンは花が蕾(つぼみ)の頃、下向きにうつむいており、開花が進むにつれて立ち上がる。一方のヒメジョオンは最初から直立したまま。ほかにも、ハルジオンは葉の基部が茎を抱く(ヒメジョオン=抱かない)、花の頃にも茎の基部に根出葉が残っている(同=残っていない)、茎の内部は中空(同=白い綿状の髄が詰まっている)といった違いがある。
雑草扱いされて普段見向きもされない草花だが、よく見ると花の1輪1輪は可憐でしとやかな感じ。一斉に咲き誇るハルジオンの群落にはつい目が引き付けられる。若芽はヒメジョオン同様、和え物やおひたし、油炒めなどに。蕾をてんぷらにしてもおいしいそうだ。3月下旬、乃木坂46のシングル曲『ハルジオンが咲く頃』が発売された。「ハルジオンが道に咲いたら 君のことを僕らは思い出すだろう いつもそばで微笑んでた 日向のような存在 心癒してくれた 白い花の可憐さ」(秋元康作詞)。