奈良市中心部を貫く幹線道路の登大路(国道369号)。歩道は日中、近鉄奈良駅前と奈良公園を行き交う観光客が絶えることがない。その道路脇に立っているのがこの看板。警察が放置自転車の移動を呼び掛けるため設置したらしい。だが、ベタベタ貼られた無数のステッカーで見るも無惨な姿になっていた。

 ここは興福寺北側の歩道脇。通行人の多くは鹿との交流に夢中で、看板に一瞥さえする人もいない。ステッカー類に覆われた看板でどうにか読めるのは赤字の「自転」と「駐輪場へ」、それに左下の「奈良市 奈良警察署」ぐらい。奈良市は道路管理者ということだろう。
 真ん中とその右上に貼られた「Nett hier」というステッカーが目を引く。ドイツ語で「ここは素敵」を意味し、下に「だけど○○に行ったことはある?」とドイツやスイスの地名が書き添えられている。他にも「DUNK1」「WEROAD」など、意味不明のステッカーがまさに所狭しとびっしり。
 裏側に回ると、そこもベタベタ。一瞬、裸体の男性の写真に目が釘付けに。あれっ!下のヘア、はみ出しているよ(写真はボカシを入れているけど)。「新宿二丁目などのエリアで見られるゲイバーの広告ステッカーやポスターとスタイルが共通しています」。AIが教えてくれた。そうなんだ!
 左下の2本の斧が交差したデザインのステッカー「TIAGO THE HUNTER」はギリシャのヒップポップアーティストのロゴらしい。その右側「UPRISING FESTIVAL」はスロバキアの主にレゲエをテーマにした音楽祭だとか。ステッカーもワールドワイド!(見とれて感心している場合か)
 この立て看の近くの鉄柵に、横長の大きな看板が取り付けられていた。赤い「警告」の文字が目立ち、奈良警察署·奈良市·奈良県の連名で「この付近の単車、自転車等をただちに移動して下さい」と記す。この看板はステッカーも貼られず一見無傷。だが、まじまじ見返すと――。
 右上の「単車·自転車」の「転」の上に「BLUE ONER」というステッカーが貼られていた。このステッカー、京都市内でもよく見られるという。そばの立て看もこんなステッカー1枚が呼び水となり、類が類を呼んで見る影もない姿になったのだろう。警察の道路標識や看板にステッカーを貼る行為は、刑法の器物損壊罪に問われる可能性もあるそうだ。