とても興味深い内容になっています。
政府は地方創生につなげるため、観光施設や地域住民が交流する拠点の整備に取り組む民間事業者への支援を強化。自治体の事業費の半額を国が交付金で補助する現行制度に加え、新たに残り負担分も地方債を発行して財源を手当てできるようにするという内容です。
この地方債発行できるがポイントです。
地方債は地方財政法上、民間事業者が事業主体のケースでは発行できません。今回の改正法により、自治体が地方債を発行できるよう特例を設けるとのことです。
身近な例で例えますと、家庭で新築戸建て・マンションを買うとします。大半の方が手持ち金がなく、ローンを組まなければ購入できないという状況だと思います。収入と照らし合わせて、きちんと返済できる金額ならば、ローンを組むという話になるでしょう(※最近では高額物件購入の為、ペアローンを組むようです)。しかし、ローンが組めなければ、購入すらできません。
地方自治体は、現状、ローンを組んで、新たな観光拠点等のまちづくりを行うことができないのです。
皆様はご存じでしたか?
そこで、今回の法改正では、ローンを組んでもいいということ(地方債発行可能)。
しかし、ここで注意をしなければならないのが、市債残高(借金)です。
以下グラフが直近の松戸市の市債残高の推移となります。
新築戸建て・マンションを買う時と同様で、収入に見合わないローンを組んでしまうと、松戸市が破綻をしてしまうという話です。
そこで、松戸市議会では再三にわたり、この市債残高について議論を重ねてきました。紹介させていただきますが、少し長い議事録をご容赦下さい。
【平成28年3月定例会:(まつど自民)鈴木大介議員】
本郷谷市長就任直後の平成22年度末の一般会計市債残高は約887億円です。特別会計、企業会計、債務負担行為合わせて約1,818億8,361万円でした。そして、先に可決した平成27年度の補正予算で今年度末の一般会計市債残高は約1,070億円、そして一般会計、特別会計、企業会計、債務負担行為合わせて1,950億6,061万円と、とうとう2,000億円に手が届きそうになってまいりました。
臨時財政対策債を可能な限り発行し、財政調整基金等に積み増しているわけですが、全体として今後大型の投資が控えている前に借金を増やし続けてしまった中で、松戸駅周辺開発計画や各地区のまちづくり計画を行おうという動きが加速し、やらなければならない市役所本庁舎建て替えや10年以内に公共施設再編整備の投資が本格的に始まるなど、莫大な財政負担が既に予想されています。
一方で、選択と集中という言葉が市政から消え、政策目的に沿わない事業や補助金の見直しや廃止など、いわゆる業務の棚卸しや大きな行財政改革が行われた形跡はありません。
一番の問題は、着手しようとする計画に係る予算が、概算すら出されることなく、優先順位も決めることなく、個別に計画が進もうとしており、今後の財政運営にかつてない危機感を覚えるものであります。多世代にわたり使うことができる施設が形として残り、それを多世代かつ市内の各地域の皆様で公平に負担するために起債を起こすこと、これは否定するものではありませんが、今年度予算に見る計画バブルは、今を生きる現役世代が今後50年以上先の世代の財源まで使い切らんばかりではないかと感じるほどで、無計画な借金を次の世代につけ回すことは許されず、当事者世代としてより厳格な視点で優先順位や財政上の担保を確認するものであります。
そういった我々の認識を踏まえ、以下伺います。
ア.現段階でやろうとしているまちづくりへの投資の総額は幾らと考えていますか。
(略)
次に、エ.既に一般会計市債残高が増え続け、過去最大であった平成8年度末の約1,436億円まで間もない状況となっています。約366億円です。理論的には、標準財政規模の3.5倍までは早期健全化規準を超えないので市債発行自体は可能ですが、市債残高の限界値をどの程度までと考えていますか。お答えください。
【答弁:財務部長】
質問事項1.施政方針について、質問要旨(2)今後の財政運営についてのア、エ、オにつきまして順次御答弁申し上げます。
まず、ア.現段階でやろうとしているまちづくりの投資の総額は幾らと試算しているかについてでございますが、今後予定されているまちづくりに要する費用につきましては、関係機関と協議を重ねているところでございますが、民間を最大限活用することも視野に入れ、財政負担を極力抑制してまいりたいと考えております。
続きまして、エ.市債残高の限界値を幾らまでと考えるかについてでございますが、まちづくりにおきまして主要な財源となる地方債の残高につきましては、御質問にもございましたが、一般会計におけます過去最大が平成8年度で約1,436億円となってございます。また、財政状況を決算ベースで比較いたしますと、8年度につきましては市税収入が約670億円、標準財政規模が約752億円、26年度につきましては市税収入がほぼ同程度の約679億円、標準財政規模が約836億円となっているところから、同規模程度というふうに考えております。
平成28年3月定例会では、過去最大であった約1,436億円が上限と財務部長が答弁しています。
そして、今回の3月議会(予算委員会)で新たな答弁が出てきましたのでご紹介させていただきます。
【令和6年3月定例会:(市民クラブ)廣瀨ゆうと議員】
市債残高と今後の見込みついてお答え下さい。
【答弁:財政課長】
臨時財政対策債を除いた「普通債」の残高を申し上げますと、令和3年度約557億円、令和4年度約583億円、令和5年度見込みは約637億円となっております。
今後、新拠点ゾーンのまちづくりの推進、学校体育館の空調設備の設置や校舎の長寿命化、焼却施設の建設などにより市債残高は増加すると見込んでいますが、重要なのは後年度における毎年の償還額となります。
償還は10年から30年間かけて平準化するとともに、毎年の償還額の負担の抑制を図るため、地方交付税に算入される市債メニューを積極的に活用しております。例をあげますと、学校体育館の空調設備設置については借入した額のうち国庫補助金の額に対応する額の元利償還金の一部が、地方交付税に算入されるものなどがございます。
市債残高につきましては、まちのリニューアルの時期にきていることから、積極的な投資を行えば増えていくものでございますが、それにより将来的な税収増加につながっていくものと考えております。
いずれに致しましても、償還額が過度な負担とならないよう、適正な財政運営に努めてまいります。
今回は、『市債メニューを積極的に活用』『将来的な税収増加につながる』と言う答弁から推察すると、過去最大の約1,436億円は意識しつつも、まちのリニューアル次第ではそれを超えることもありうるというニュアンスを残した形になったと思います。
少しお役所言葉で分かりにくかったかもしれませんが、いずれにしましても、償還額が過度な負担とならない程度で『地方債発行』を積極的に利活用し、魅力あるまちづくりを進めてほしいと思います。
積極財政派の私にとって、今回の財政課長は、「松戸市のまちづくりを前進させる大変良い答弁」と評価をしたいと思います。
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松戸市議会議員 大塚けんじ
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