誰もが思うこと。それは一日も早く児童虐待をなくすことだと思います。私は全力でこの問題について取り組みたいと思います。

松戸市議会6月定例会で、
『東葛北部地域における児童相談所機能の充実を求める意見書』について議案提出がありました。具体的に、松戸市内に児童相談所をつくってはどうかという内容です。このことについてしっかりと検証していきたいと思います。

私は市職員時代にケースワーカーをしていました。ケースワーカーが激務であることは、皆様もご存じのことと思います。ケースワーカーは、場合によっては24時間、生活保護者に寄り添うこともあり、生活保護者の金銭的・精神的自立に向けて助言をするなど、大変難しい業務であること、間違いありません。

さて、私がケースワーカーの頃、大変怖い思いをしました(恐らくこうした経験をするケースワーカーは私だけではないと思います)。家庭訪問ではいろいろなことがおこります。ここでは細かく触れられませんが、家庭訪問を一人で行くと、危険を伴うことがあります。だから、二人。多ければ多い方がいいという場合があります(これは一部の例)。しかし、もし身の危険があった場合は、例え何人職員がいても逃げるしかありません。そして、警察に相談をします。私たち職員で私人逮捕もできますが、突然の出来事となるため、難しいのが現状です。

ここで突然ですが、ジャーナリスト門田隆将氏『新聞という病』の一文を紹介させていただきます。児童虐待について鋭い指摘をしていますのでお読み下さい。

児童虐待防止法には、児相による立ち入り調査も認められており、その際、警察の援助を求めることもできるようになっている。だが、児相はそれを活用しない。なぜか。それは職員の能力と意欲の問題であり、一方で『プライバシー侵害』やら『親の親権』をふりかざす人権の壁への恐れがあるからだ。子供を虐待死させるような親は、人権を盾に抵抗し、あらゆる言辞を弄して子供への面会を拒む。この壁を突破して子供の命を守るには、逆に、児相に『案件を抱え込ませてはならない』のである。警察を含む行政組織が全情報を共有し、例えば街の灯台たる交番のお巡りさんが、絶えず訪問して子供の顔を確認するようなシステムを構築しなければならない。

この文章を読んで、『その通り!!』と納得する職員は数多くいると思います。家庭訪問先では瞬時な判断を迫られるのです。特に人権を高圧的に主張されてしまうと、職員の判断に誤りとなる確率が上がる可能性があります(もちろん職員の判断に誤りがあってはなりません)。

次に、全く別問題の『あおり運転』について考えたいと思います。最近ではドライブレコーダーがあり、一部始終をみることができるようになりました。加害者が興奮して、運転席に迫ってきます。もし、自分が被害者であれば、あんな怖いことはありません。当然ドアの外に出ることはできず、警察を呼ぶという方法をとると思います。

文藝春秋10月号では、脳科学者中野信子さんが、人はなぜ『あおり運転』に走るのかという記事で、
『ドーパミンが放出されている状態の人に対しては、闘うではなく、その目の前から逃げることしか自分の身は守れません。怒りは厄介な代物ですが、人類の生存にとって必要不可欠な感情である以上、私たちはそれを理解し、キレる自分(他人)と、うまく付き合っていくよりほかはないのです』と書かれていました。

以上から私が言いたいのは、本当に身の危険を感じたとき、また危険を予想できるとき、いくら沢山の職員がいても、対応策は限られ、現場の緊迫感から逃げること、それが重要な選択肢の一つであると考えます。加えて、現場の状況をこと細かく警察に報告をし、警察にお世話になるということが重要だと思います。

そこで、今回議案提出があった、施設を増やすということについて考えたいと思います。いずれにしても、児童虐待を無くすということが最重要課題であることは間違いありません。政府は児童虐待もあおり運転も撲滅させるために法規制強化へと舵を切りました。本気で課題解決にむかうのであれば、事件が起きないように法規制強化、つまり抑止力を高めることが重要だと思います。そこで、ジャーナリストの門田氏が指摘するように、課題解決に向けては、むしろ警察と連携をして、児相をスリム化することが現場で活かされる最大限の抑止力ではないでしょうか。残念ながら、施設を増やすことが課題解決、事件の抑止力へとつながるイメージが私には持てません。実際、柏児童相談所を運営している千葉県でも、県議会で児童虐待については、児相に警察官を増やすという方向で対策を練っているようです。

さて、松戸市議会はこの議案、賛成多数で可決をしました。私の会派『まつど自民(当時)』は反対しました。

何分標題の賛否だけをみると、なぜ議案に反対したのかと指摘されかねないので、ここで私の意見を伝えさえていただきました。

とはいえ、ここは大変議論が分かれるところだと思います。是非とも皆様のお考えをお聞かせいただければ幸いです。