中山道歩き旅10日目、今日は軽井沢宿から高崎宿まで、10宿44kmの旅であった。


碓氷峠越えは、この旅一番の難所であった。頂上に着くまでは、多少傾斜がきついだけでそれほど大変さはない。和田峠の登りに比べたらなんのその、である。


頂上では、長きに渡って歩いてきた長野県を離れ、群馬県に入った。木曽路を含む長野の旅は、気候もよく人や宿にも恵まれ、とてもよいものになった。


しかし、そこからが問題だった。下りは完全に山の中。山道を下っていくのが、今の足には非常に辛い。 ここが辛かった理由はいくつかある。


第1に、和田峠では道の中に中山道と書かれた道案内がたくさん立っていた。これを見る度「よし、道はあってるな」と安心しながら進むことができた。しかし碓氷峠の下り道にはそれがない。しかも道が細い。獣道のようなところを進んでいく。そのため「この道であっているのかな…」と不安を抱えながら進むしか無かった。


 第二に、碓氷峠は非常に湿度が高く、湿った土の道が続いていた。湿った土は下手に足をつくとズルッと土ごと滑る。 また石場(地面が石だらけ)では地面に足を着こうとするとツルッと滑ってしまう。 一度は足をくじきかけ、一度は尻餅をついた。それぐらい歩きにくい道だった。ここが初日だったら大したことはなかったかもしれない しかし、もう10日以上も歩いてきてからのこの道である。正直 右の足首には右の足首はかなり痛い。左の足の裏は皮がづるむけであるそんな状態でこの山を下るのは非常につらかった。


また、ブヨとヒルが大量発生していた。 ブヨはすぐに顔の近くに寄ってくる。ブンブンと音を立てて飛ぶ。 あまりのうっとおしさに、何度も「消えろ」とか「うざい」とか叫びながら歩いていた。そして、ヒルである。いつの間にか、足首周辺に大量のヒルがくっついている。中には靴紐の穴の中から入り込んもうといている奴らもいた。見た目の気持ち悪さはもちろん 血が止まらなくなるという問題もある。また見えていない背中などにも、もしかしたらついているのではないかという不安な気持ちにもなってくる。


普段なら山の腐葉土の方が良かったなと思うところ 今回この碓氷峠の下りでは コンクリートの道に出た時に今までにないくらい 安心感を覚えた。


そして、碓氷峠を越えて関東平野に至る、松井田塾手前あたりから、またしても空気が違う。長野の山の中はカラッとして涼しかったが、関東平野に入った途端、ものすごく湿度が高い。ジメジメと蒸し暑い。ベタベタと肌にまとわりついてくるような暑さだ。佐久平や軽井沢でも、それより前の木曽路と比べたらかなり熱く「空気が変わった」と感じたが、碓氷峠よりこちら側、関東の空気はまた全く違っていた。正直なぜこんなところに帰っていかなければならないのかという気分である、みんなで 木曽の山の中に夏はそちらで仕事や学校をやればいいのではないだろうか