中山道歩き旅8日目、今日は洗馬宿から下諏訪宿まで、3宿19kmの旅であった。


明日、和田峠を越える。そのため今日は休憩日である。普段なら30kmは進むところであるが、今日はたったの19km、ゆっくりと進んでも5時間もかからない程度でゴールに辿り着いた。


しかも下諏訪宿は諏訪湖の畔、中山道唯一の温泉地である。早く宿に着きゆっくり温泉に浸かって、今日までの疲れを取りたい。


ところで今日ゆっくり進んだのには、他にも理由がある。見学したい場所があったのだ。


それが長野県塩尻市にある平出遺跡。ここは全国でも珍しく、縄文から平安まですべての時代の遺跡や遺品が出土している遺跡である。








三内丸山遺跡は縄文時代の遺跡、吉野ヶ里遺跡は弥生時代の遺跡。このように、大抵の遺跡は使われていた時代が決まっている。つまりその集落に人が住んでいた時期が決まっているのだ。


これに対して平出遺跡は、時代を経てもなお同じ場所に住み続けた人たちの遺跡である。今でも周辺の集落に人が住んでいることを考えれば、縄文時代化ら5000年以上の歴史を持つ地域だと言える。


そんな平出遺跡には竪穴住居や高床倉庫の復元はもちろん、博物館も設置されており(少し遠いのが難点だったが…)、出土した品々を見ることができた。


特に面白かったのは、本物の土器を持ち上げられること。縄文土器、弥生土器、古墳時代の須恵器が並んでいる。持ち上げてみたところ、おもっていたよりも遥かに軽いことがわかった。


また塔頭も展示してある。これは聖武天皇が東大寺の大仏を立てた頃、全国で作られた土器製の塔の模型である。なんと2m以上もの高さがある。大仏と同時に国分寺が全国に作られたが、国分寺が作られないような村では、こうして仏教への信仰を深めていったのだろう。


そして、年貢を京都まで運ぶ農民の苦労についての絵と説明が印象的であった。平出遺跡から京まで、21日もかけて年貢を運び、10日かけて帰ってきたそうだ。私が京を出発してから今日で8日。歩きやすい靴、整った道、快適な宿があってもこれだけかかっているのだから、年貢の米を持って今日まで歩いていくのがどれだけ大変だったことか。実際に歩いてみたからこそ、想像できることである。


平出遺跡を出て塩尻宿を越えると、次の難所は塩尻峠である。道はコンクリートで整っているものの、結構な急勾配。昨日の雨で湿度が高めだったこともあり、汗が滝のように流れる。しかしそんな急勾配を越えると頂上にはひっそりと展望台がそびえ、その展望台の上からは諏訪湖と諏訪の町が一望できる。まさに絶景であった。



東京タワーやスカイツリーに登ればきれいな景色は見えるのかもしれないが、自分の足で苦労して歩いたからこそ、この景色に感動できるのだと思う。


塩尻峠を下れば、下諏訪宿はすぐそこだ。しかしこの下りがキツい。上り以上の急勾配で、どんどん下っていく。膝が笑い始める。1時間近くかけて上った峠を、たったの20分で下りきってしまった。


そして下諏訪宿である。ここは、以前甲州街道を自転車で走ったときのゴール地点であった。宿場に入り、秋宮まで来ると、まさに見覚えのある景色。あの時は土砂降りの雨にあたってしまい参拝できなかったが、今日は秋宮に参拝。旅の無事と世界の平安を願ってきた。


さて、最初にも書いたが明日は和田峠超え。今日はここまでにして暑い温泉に浸かり、明日の峠越えに備えたいと思う。


〜今日の記録〜