円安の影響がアフリカにまで、ウガンダにまで及ぶなんて…


先日、小さなハートプロジェクトの図書館を見に、JICAウガンダの所長が来てくださいました。


プロジェクトを進めるにあたって円安とインフレの影響を受けて大変だったという話をしたところ、事務所のプロジェクトも同じように影響を受けているとのこと。

「同じ」にしては金額の規模が違いすぎて僕には想像もつきませんでしたが、「こんな大きな影響も出てしまうのか…」と衝撃を受けたので、まとめてみたいと思います。


  農業支援プロジェクト

JICAウガンダでは、ウガンダの農業省と共に農業を発展させるための様々な農業プロジェクトを行っています。


この事業は、ウガンダ政府からの要望に基づき、日本政府からの支援を受けて進められているもの。ウガンダ政府が農家から土地を買い上げるところからプロジェクトが始まりました。


土地を買い上げる際、農家には「いつでも水が得られるようになって収穫量が上がります。そうすれば収入も上がります」と説明をして、承諾を得て土地を売ってもらったそうです。



実際プロジェクトが予定通り進めば、この通りになるはずだったのです…


  円安の影響で…

しかしここにきての急激な円安


日本政府からの支援は、日本円で行われます。なので日本円で決められた金額をUSドルに替え、それをウガンダシリングに替えて、ようやくウガンダでの支援を行うことができます。


つまり、円安はプロジェクトにとって大打撃。日本からの拠出額は同じでも、円安のせいでウガンダシリングに替えてみると金額ががくっと下がってしまうのです



農家から土地は買い上げてしまった。しかも「収穫が増えて収入が上がる」という説明をつけて。


でも円安のせいでプロジェクト予算は少なくなってしまった。今の金額では、予定の半分しか設備が作れない

半分しか作れないということは、半分の農家には設備が行き渡らないということ。つまり、土地を買い上げられただけになってしまうということです。


農家の人たちはどう感じるでしょうか?きっと「嘘をつかれて、土地を奪われた」と思うでしょう。


  どうしたらいい?

円安のせいであって、誰が悪いわけでもない。


日本政府もJICAウガンダも、ウガンダの農家のためにと思ってプロジェクトを始めたはずです。土地を奪いたかったわけではない


でも、半分の農家は損しかない。むしろ不満を生んだだけになってしまう。

どうしたらいいのでしょう?


日本政府にさらなる拠出をしてもらう? でも日本国内だって大変な財政状況です。政府はただでさえ借金まみれなのに、他の国のためにさらにお金を出してくれるのでしょうか?国民の税金なのに、出してもいいのでしょうか?

円高になるように為替介入をする? ドル高で喜んでいる国からバッシングを受けるかもしれません。また円安が有利に働く輸出中心の国内企業からも不満が出てくるでしょう。それに為替介入にだってお金がかかります。

農家さんたちに我慢してもらう? “土地を奪われた”と不満を持っている人たちが「円安だから仕方ないよね」と簡単に納得してくれるでしょうか?

 

もう国際協力なんて全部やめて、鎖国して日本列島に引きこもった方がいい? でも日本の食料自給率はカロリーベースで40%程度。他国と助け合って食料を輸入しないと食べていけません。


  作れる分は、どこに作る?

そしてさらに難しいのが、どの半分に設備をつくるかということ。縦半分に作るか、横半分に作るか、県をまたいでいるので片方の件だけに作るか…

どう分けたって、設備がつくられなかった側からは不満が出ます。反感が生まれます。JICAへの反感も、日本への反感も生まれるでしょう。


日本への反感が日本人への攻撃につながってしまうかもしれない。そしたらその地域にいる日本人には、みんな避難してもらわないといけなくなるかもしれない。国際関係も悪化してしまうかもしれない。

そして何より、設備を得られなかった人たちから、設備を得られた人たちへの反感も生まれてしまう。

良かれと思って始めたプロジェクトが、地域に対立を生んでしまう最悪、住民同士の争いが起こってしまうかもしれない


こんなこと、誰も望んでいなかったはずです。


  グローバル社会だからこそ…

円安という日本経済の問題。「帰国したらしばらく海外旅行はいけないかな」という程度にしか考えていませんでした。でも、遠くアフリカにまで、こんな大きな影響がある。


日本でしか使われていない「円」の価値の上下が、アフリカで争いを生んでしまうかもしれない。


日本の社会科の授業で「社会は人と人とのつながりの集まり」と教えていますが、つながりはどこまでも広がっているんだと、改めて強く実感しました。


どの“半分”に設備をつくるべきか? もっと他の解決策はあるのか? そもそも何がいけなかったのか? 他国の支援なんてするべきじゃなかったのか? 

“正解”なんてありません。でもどうするのが現時点での“最適解”なのかは考えないといけません。


みんな(できる限り多くの人)が納得できるようにするためには、なるべく不満や反感を生まないようにするためには、どうするのがいいのか?

みなさんはどう思いますか?

※“所長”というと、何となく偉い人という程度のイメージしかもっていませんでしたが、こんなことまで決断しなければいけないなんて、とてつもなくストレスフルな仕事だと思いました。


僕らボランティアには想像もつかないほどのストレスと闘われているのでしょう…


学校で子どもたちの笑顔を見て「穏やかでほっとする。“これだよなぁ”って感じ。」とおっしゃっていたのが、とても印象的でした😭
 



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